ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃

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監督金子修介
脚本長谷川圭一/横谷昌宏/金子修介
音楽大谷幸
特殊技術神谷誠
製作富山省吾
出演
新山千春
宇崎竜童
小林正寛
天本英世
佐野史郎/仁科貴/南果歩
大和田伸也/村井国夫/渡辺裕之/蔦山信吾
津川雅彦
公式サイト
http://www.godzilla.co.jp/

 50年前、当時の軍人たちの必死の防衛戦闘でかろうじて退けることに成功したと伝えられる大怪獣ゴジラ。その誇りは50年後の今もなお、防衛軍の伝統として生き続ける。ゴジラとの戦いに勝利した日本は、その後50年にわたって繁栄を謳歌し、いつしかかつての気概を失い、その人心は荒廃の一途をたどろうとしていた。あらゆる戦いの犠牲者たちの怨念が形を成した存在であるゴジラが、再び日本に襲いかかるための条件が、刻々と整いつつあったのだ。

 監督金子修介、音楽大谷幸、ビジュアルイフェクトに松本"合成大魔王"肇、繰演根岸泉と、そうそうたる「ガメラ」組、脚本には平成「ウルトラ」の長谷川圭一と、これまでになく新しい血が注ぎ込まれた新作「ゴジラ」。これまでのどの(少なくとも平成の)ゴジラと比べても、甘えたところを徹底的に廃した作品になっている。ここはとてもいい。「甘えた」というのはたとえば、「んじゃこんどのゴジラは悪役ってことでよろしく」で済まされてしまった部分を、(少々言葉足らずではあるけれども)ちゃんと逃げずに説明しようとしていると思えるところ。少々理屈っぽいし、説明を補強する事実がなんにもないあたりもつらいけど、でも、ないよりは遙かによい。

 映像の豪華さには文句ないし、金子監督らしく、ヒロインがとても魅力的に撮れてて、ここもいい。全体的に高い点数を取れてる映画だと思う。見て損はない。でもなあ。これではオレとしては「こういう怪獣映画を待ってたんだよぉぉ」と大喜びできないのも確かだなあ。

 まず、オレが理想とする怪獣映画とは、怪獣の登場、その暴れっぷりが存分に描かれてること、怪獣と関わる人間のドラマがおろそかになっていないこと(できれば怪獣と直接関わるのでなく、別件での行動が、いつしか怪獣と関係したストーリーと交差していくような展開が望ましい)、そして、クライマックスでは怪獣側のストーリーと人間側のストーリーが一気に大団円を迎える、てな進行であって、このパターンの傑作が「キンゴジ」であったり「モスゴジ」であったり「ゴジムス」であったりする訳なんだけど、残念ながらこの作品、やはり人間側のお話が弱い。全体になんというか、物わかりが良すぎるのだな。

 少年時代にゴジラの災厄を目撃し、それがきっかけで軍人になった父と、二流のテレビ制作会社のスタッフとして少々怪しげな番組制作に携わる娘、って設定がせっかくできてるんだから、もっといろんなドラマが作れたんじゃないかな。ばりばりにがんばるおとっつあんがとある理由でアイデンティティを喪失する(するんだよ)、そこまでどっちかというと負け犬っぽい生活を送ってた娘(それゆえ父とはそりが合わない)の方は、これまたとある理由で自分の居場所を強烈に意識できるようになる、そこでそれまでどちらかといえば疎遠なものだった父と娘に、分かり合えるきっかけができる、そんな、めちゃくちゃおいしい話を作る下準備ができていたと思うだけにちょっと残念だなあ。怪獣映画って、確かに主役は怪獣なんだけど、その怪獣を引き立てるのは人間側のドラマの出来具合だと思ってる(で、それをいい加減にしてたから平成ゴジラはどれもこれもつまらない)んだが、今回の脚本も、そこらにもう一歩踏み込むことはできてないような気がする。この映画もまた、「スジ」を少々軽く見てると思う。

 軽く見てるといえばこの作品、映画そのものを軽く見てるように感じられる部分もあって、それもちょっと気になる。あっという間に殉職する村田雄浩、最低に格好悪い佐野史郎、上田耕一、恥ずかしいゲスト出演を強要されてしまっている川北紘一、手塚昌明。一方でなかなか格好良く(あるいはいかにも、って感じで)撮ってもらえている蛍雪次郎、渡辺裕之、前田シスターズ、かとうかずこ、津川雅彦。判ります?これ、金子監督はここまでの平成ゴジラを片っ端から葬って、やっぱり平成ガメラの方が良かったじゃん、ってのをしっかり映像表現としてぶち込んでるんですよ。唐沢俊一さんが「監督は確信犯である」と書いた理由が何となく判ったような気がした。つまりこの映画、「今度の『ゴジラ』すごいでしょー?でもね、私らはこんなこと、『ガメラ』でとっくにやってるのよ」ってのをいいたかったのかもしれない、と思っちゃった。

 で、それ故に、日記にも書いたけどこの映画、壮大な内輪受け映画になっちゃってるところもあるんだな。どっかで見たようなキャラクターが、どっかで見たような芝居をする、一度どこかで見たような格好いいシーンが、少々ゴージャスにお色直しされて見せられる、そんな映像を延々見せられた気分になってしまった。ついでに音楽も、「ガメラ」シリーズではすてきな曲をたくさん聴かせてくれた大谷さんなんだけど、今回に限っては「まるでガメラのような」音楽が連続するので少々興ざめ。「ゴジラ×メガギラス」の音楽を担当した大島ミチルさんの仕事がかなりいい線行ってただけにここも惜しい。

 総じて楽しめる映画なのは確かなんですけどね、でもやはり、オレはこれなら手塚昌明にもう一度挑戦してもらいたかったな。久々に楽しめるゴジラ映画だったのだけれど、この楽しさは多分に徒花的な色合いを持ったそれだと思う。結局王道を行く怪獣映画を、またも見ることができなかった、その恨みは残りますな。

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