ガメラ3 邪(イリス)神覚醒

劇場版パンフ スタッフ
監督金子修介
脚本伊藤和典/金子修介
特技監督樋口真嗣
製作総指揮徳間康快
出演者
中山忍
前田愛/藤谷文子/山崎千里
手塚とおる
小山優/安藤希

 1996年、突如日本を襲ったギャオスの災厄は、同じく突然あらわれた超古代文明の怪物、ガメラによって退けられた。だが、2大怪獣の死闘は一般市民の中に、数え切れないほどの悲劇を産み出す元ともなったのだった………てのがまあツカミってことになるのか。

 つまり、"ウルトラマン"シリーズなんかでもたまに見かける、怪獣と戦ったばかりに肉親の死に目に会い、それが元でトラウマをかかえる事になった登場人物の癒しの物語、てえパターン自体はまあ目新しくはないけれども、モノが"平成ガメラ"だから、一筋縄で行かないお話の展開を期待していったわけなんでありますが、たしかに"一筋縄でいかなさ"ってえ意味ではそうなってはいるけれど、んじゃこの問題にきっちりした答えがでたかというと、そうでもなかったかなあ。

 特撮パートのものすごさは天下一品。「怪獣を見上げる」事自体がすでにどうしようもなく恐ろしいことなんだ、というのを実感させてくれたのは、長い怪獣映画の歴史の中でもこの映画が最初なんではないだろうか。単純に、「精密に作られた箱庭を壊して歩く」のを延々と見せる、日本を代表するもう一方の怪獣からは絶対につたわってこない迫力と怖さがここにはある。これだけでもモトは取った(笑)。

 破綻しかかった、といえなくもないシナリオも、まあ許容範囲か。登場人物は、概していいお芝居をしていたんではないか。心配だった前田愛ちゃんの綾奈、ときおりどきっとするぐらい艶めかしかったし、なんか憑き物が落ちた感じの浅黄も、お帰りなさいの(それだけで済んじゃうところが怖い)ナガミネもおっけー。

 とり・みきさんの「石神伝説」を髣髴とさせる(実際伊藤さんのコメントでもかなり"かぶった"らしいことが書かれてますが、両者は)内閣の人達は、逆にアヤしさと思わせぶりなところばかりが目立ってスカ引いた気分。ここらは少々詰め込みすぎかも知れない。お話的にそのへんを加味すると、「無茶」といってもいいレベルなんだけれども、そこはそれ「怪獣映画」なんですから、まずは怪獣をいかに見せるかに力を注いでくれたと解釈してもいい。ただ、うやむやにしてもらうと困る部分ってのもあるわけで、この映画でいえばそれは、「誰が誰を許すのか」ってお話の部分なんじゃないかと思うんである。ここだけは、どんな形であれ、はっきりした答えが欲しかった。綾奈はガメラを許せるのか、ガメラは人間を許してるのか、ツーあたりにはなにか一言欲しかったんだ、オレ的に。ごくごく小数の子供と娘を救うことが、ガメラの人間に対する意思表示なんだとしたら、それはあまりに自己満足な共感でしかないでしょ?

 結局ガメラが地球の、ごくおおざっぱな意志を具現化したものであるならば、大のために小を殺すことを厭うようなことは絶対にしないわけで、目の前にギャオスがいれば、間に何人の人間が逃げ遅れていようとためらわずにプラズマ火球を打ち出すだろうし、その事をあとあと気に病んだりはしないだろう。登場人物たちも、最終的には"ガメラってそういうもの"という結論に達しなきゃウソだと思ってたんだけど、で、その結論の達しかたになにか一味あれば、って期待があったわけなんだけれども、残念ながらその点に関するかぎり、さらに緊急の災厄が近づき、勝ち味が薄いにもかかわらずその戦いに赴こうとするガメラ、って、感動的な絵ですり替えることで、事の顛末をうやむやにしてしまったような気はする。うーん残念。

 伊藤和典さんはこの映画、「恋愛映画です」というてはったらしいけど、そういう意味ではこの映画って、妖艶な後妻によって、サッフォーな世界に足を踏み入れかけた女の子を奪い返そうとするボーイフレンドと、横でそれをおろおろしながら見てる古風なオヤジ、ていうお話なのかも知れない(爆)。そう思って見てみるとそう見えるのが怖いっすけど(^^;)。

 とはいえこの映画、日本の怪獣映画の一つの到達点であろうことは間違いないと思うんであります。怪獣の立ち姿、人間と怪獣のかかわり方、怪獣と世界の関り方、どれを取っても今までに一度も見たこともないモノであったことは確かで、そのことを素直に納得しつつも、先に書いたように、お話のオトシマエの付け方にイマイチ釈然としないものもまた、同時に感じてしまうという大変不思議な映画なんであった。そういう意味で、大変感慨深いものを感じる一本ではありました。ええ、最終的に気に入ったんですよこの映画(^o^)

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