「レインボー・シックス」

表紙

トム・クランシー 著/村上博基 訳
カバー装画 大矢正和
新潮文庫
ISBN4-10-2427212-6 \667(税別)
ISBN4-10-2427213-4 \629(税別)
ISBN4-10-2427214-2 \667(税別)
ISBN4-10-2427215-0 \629(税別)

 伝説のCIA工作員、ミスター・クラークも第一線に立つのは少々無理の出てくる年代。だが、その長い経験のなかで、彼の中には一つの超国家規模の国際テロリズム対応機関の抗争ができあがりつつあった。英国SAS、ドイツのGSGー9など、世界各国の精鋭特殊部隊から選抜された猛者で構成される、史上最強の対テロリスト対抗部隊、"レインボー"。さっそく発生したスイスの人質事件などでその実力を遺憾なく発揮する"レインボー"だったが、彼らの活動とは別な所で、もう一つの大きな企てが静かに進行中だったのだ。

 いわゆる"ライアン・ファミリー"の特殊工作員、ミスター・クラークとその相棒、"ディング"ことペドロ・シャベスらによって作られた、世界(というか西側先進国)の名だたる特殊部隊のエリートで構成された、対テロリスト特殊部隊、てえ図式は、言ってみたらものスゴく乱暴な国際救助隊なワケですわ(笑)。

 世界のどこでテロが発生しても、たちまち現地にかけつけて、疾風のように敵の真っ只中に突入し、パンパンパンと実弾をお見舞いして、再び疾風のように去って行く特殊部隊、ちうのは確かにある意味カッコいいんだけどもちょっと待て。そのアブナイ組織はいったい誰がどういう権限で管理しているんだ?

 ジャック・ライアンがその地位を高いものにしていく過程で、徐々にキナ臭いものを増大させてきたような気はしていたんですが、ライアン抜きとはいえクランシー最新作のこの作品からは、そのアブナイキナ臭さが思いっきり匂い立って参ります。このお話の中に限って言えば、"レインボー"に関るほとんどの人々は、一応世界の平和(ホントは西側先進諸国の平和)を願ってる、ある意味いい人なんだけれども、こういうのってほんのちょっとしたきっかけで、巨大な悪に変わっちゃうこともあるわけで、そういう組織に世界の未来をたくすべきなんだ、という主張をいくらエンタティンメントの中とは言えこうまで能天気に叫んじゃっていいもんなんでありましょうか(^^;)。

 どうもクランシーが描く理想の社会ってのは、強力な大統領をいただくアメリカを中心に、これまた強大な戦闘力をもった軍事力を保持し、その他の世界はそんな中心勢力に協力して行くようなことなんだ、ってな感じなんでしょうかね。気持ちはわかるけど、その考え方ってさあ、ふつう一般的にゆって、「帝国主義」って言うんじゃないのかね。

 お話自体は、ヒマ潰しってえ意味じゃあ文句なしに一級品で、楽しく読めるんですけど、その裏にあるクランシーのパックス・アメリカーナ至上主義みたいなものが鼻につくのも確かなんだよなぁ。単に読むだけなら、そこそこ楽しいんだけれどもねぇ(^^;)

99/12/30

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