「名もなき墓標」

表紙

ジョン・ダニング 著/三川基好 訳
カバーデザイン スタジオ・ギブ
カバー写真 ©P.MCDONOUGH/amana images
ハヤカワ・ミステリ文庫
ISBN4-15-170404-3 \680(税別)

 突如サーカスのテントを襲った火災が鎮火したとき、その焼け跡には身元不明の一人の少女の死体が残されていた。ピュリツァー賞に輝いたこともある一匹狼的な新聞記者、ウォーカーが彼女の死の背景を探るうち、そこには政界をゆるがしかねない一つの事実の輪郭が浮かび上がってきて………。

 「死の蔵書」のジョン・ダニングがその大傑作をものする前に発表していた作品。彼は「死の蔵書」で一躍人気作家になる前に、かなり長いブランクがあったそうですが、この作品はそのブランクに入る前に描かれた作品です。それかあらぬか、「死の蔵書」と読み比べてみるとこれが同じ作家の書いた物かと思うぐらい文体が違っている。なんていうか、若い(^^;)。

 「死の蔵書」の魅力の一つは、そのじっくりと読ませる文体にあったと思うんですが、こちらの作品ではそういう「渋さ」みたいなものは少々希薄。どちらかと言うと二見文庫の出来の悪い警察小説でも読んでるような感じがありますね(苦笑)。キャラクターの心の動きとかに、イマイチ説得力が薄い感じがして、登場人物たちの心のうつりかわりに納得しづらいものが少々あったりします。「死の蔵書」に至るブランクの間にダニングさんにどんなブレークスルーがあったのか、ちょっと知りたい気もします。

 とはいえそこはダニング。ただの二流品では終わりません。この作品では映画「目撃者」で有名になった、アーミッシュの人々が登場し、物語のなかで重要な役割をはたしています。このアーミッシュたちが、なかなか、いい感じです。何でもアーミッシュをあつかったのはこちらが先だったんだそうで。むう、やっぱりでける人はアンテナの感度が違うのね(^^;)

99/12/27

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