「米中衝突」

表紙

リチャード・ハーマン・ジュニア 著/大久保寛 訳
カバー 佐竹政夫
新潮文庫
ISBN4-10-238904-0 \705(税別)
ISBN4-10-238905-9 \667(税別)

 現職大統領の急死で、突如大統領、しかもアメリカ初の女性大統領の座に就いたマドリン・オキース・ターナー。彼女の前に、前大統領が残した負の遺産が立ちはだかる。それは中国による台湾併合を事実上黙認することを取り交わした議定書だった。前大統領の死で、協約は破棄されたかにみえたが、このチャンスを中国は見逃さず、即座に台湾を併合、さらに日本との間で国境争議が続く久米島までもその手中に収める。現場にもっとも近く、しかもアメリカ最大の海外基地である嘉手納には緊張が走る。一方、国内では大統領の指導力を疑問視する軍部強硬派、タカ派議員たちによるマドリンの権力失墜の陰謀も同時に進行していた。

 自らのスタッフの中にも危険を孕みながら四面楚歌の状況に立ち向かうマデリンが信頼するのは、自分の母を含む私的な諮問機関と堅物の空軍中将、ロバート・ベンダーだけだった………。

 空軍の一部隊をメインにした軍事サスペンス、「第45航空団」シリーズで知られるリチャード・ハーマン・ジュニアの新作は、これまでとはちょっと趣を変えたポリティカル・サスペンス。しかも主人公はアメリカ初の女性大統領。たとえば国際間に緊張が走るとき、アメリカの大統領がジャック・ライアン的、つまりは今まで通りのヒーローだったらどうするか、ってのはある意味予想がつくんですけれども、さてこんなとき、母でもある女性が大統領であったらどうなるか、ってのは確かに興味深い題材ではあります。

 ハーマン・ジュニアの筆は、やや類型的な女性観ではあるけれども、それまでの政治の慣行よりも、女であり母でもある自分の信念に忠実であろうとする主人公の動きと、それに振り回される男たちの様子を描いてなかなか目新しいですね(^^;)。

 「第45航空団」シリーズも、ありがちな空軍を舞台にした戦争アクションながらなかなかよくまとまっていて読み応えがあったのですが、こちらもかなり楽しく読めました。ちょっと突っ込みが甘いこと(特に終盤は不満あり。結局アメリカはものごとを解決するのに核の使用をためらわないし、そのことは正義なのだ、とする姿勢がここにも見られるのはちょっとなあ)、主人公がまさかマデリンだとは思えなかった(爆笑)ことがちと残念か(だってこれ読んだら10人中9人は主人公はベンダーだって思うぜ)。

 などといいつつこの作品はシリーズ物になる(主人公はマデリン大統領です、念のため)んだそうで、次回作もそこそこ楽しみっすね(^^;)。

99/11/19

前の本  (Prev)   今月分のメニューへ (Back)   次の本  (Next)   どくしょ日記メニューへ (Jump)   トップに戻る (Top)