「アルジャーノンに花束を」

表紙

 ダニエル・キイス 著/小尾芙佐 訳
 カバーイラスト おおやちき
 カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
 ハヤカワ ダニエル・キイス文庫
 ISBN4-15-110101-2 \760(税別)

 SFの歴史に燦然とその名を輝かせる名作、ようやくの文庫化です。学生時代に大学の生協の本屋でバイトしてたときに読んで以来(ぉぃ)、久々の再会。意外と覚えていなくって(新訳なのかな?なんとなく印象が違った感じで)、再び新鮮な気持ちで読むことができました。

 知能に障害を持ち、32才の肉体に幼児並みの知能しか備わっていない青年、チャーリィ。とある大学の心理学、脳外科のスタッフが彼に持ちかけた実験、それは脳外科手術によって彼の知能を常人並み、もしくはそれ以上の能力を秘めたものに変えてしまおうというものだった。先行して実験動物して手術を受けた白ネズミ、アルジャーノンとともにさまざまなテストを繰り返すチャーリィ。そして手術の日がやってきた………。

 あまりにも有名な作品なんでくどくど説明するまでもなく、この作品は知能に障害をもつ主人公の日記形式でお話が進みます。最初は表現や綴りの正確さもおぼつかないチャーリィの日記が、手術の成功とその後のトレーニングにつれ、着々とその文章にも知性のひらめきみたいなものがうまれ、それが発達していく様子が圧巻。チャーリィはその知能の発達につれ精神も急激に変化していくわけですが、それにともなって知能に障害があった頃には確かにあった、疑いを知らない、善良で無垢な精神が失われていきます。そして物語の末路にはさらに劇的な結末が………なんてみなさんご存じですよね(^^;)。

 わかっているのにやっぱり最後にほろりとしてしまう作品。名作の名に恥じませんなぁ。小尾芙佐さんの訳もよい感じ。日記で書きましたけど"ダニエル・キイス文庫"なる新シリーズで登場ってことでめでたい限りなんですが、"文字が大きく読みやすく"なったのかもしれないけど、これって結局分量増加→お値段お高め、って結果にもなるわけで、んー、それっていい事なのかしらん(苦笑)。気にいらんのはその一点だけなんだけどなぁ。カバーは久々のちきちゃんだしさァ(^^;)

99/10/8

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