「古書店めぐりは夫婦で」

表紙

ローレンス・ゴールドストーン&ナンシー・ゴールドストーン 著/浅倉久志 訳
カバー 渋川育由
ハヤカワNF文庫
ISBN4-15-050234-X \680(税別)

 毎年頭を悩ませる夫婦間の誕生日プレゼント。ある年妻は、夫に本を贈ろうと考える。タイトルは「戦争と平和」。さっそく書店めぐりを始めた妻だったが、なかなかプレゼントにふさわしいものが見つからない。そんなとき知人から「古書店をまわってみては?」とアドバイスを受ける。「プレゼントに古本?」釈然としないものを感じつつ、今度は古書店めぐりをはじめた妻は、そこでしっかりした装丁の上に美しい挿絵、関連地図まで入った立派な一冊を見つけてしまった。これがたったの10ドル。この経験が夫婦にとって、古書店めぐりという楽しくも苦労の多い趣味へといざなう扉になっちゃったんだった。

 古書を巡るお話といえば、ダニングの「死の蔵書」なんていう傑作がありますが、こちらはぐっと柔らかでユーモアあふれる語り口の、楽しい一冊。それまで古書なんかに全然興味のなかった夫婦が、ひょんなことから古書収集の楽しさに触れ、どんどん深みにはまっていく様子が軽妙な筆致で語られてて、くすくす笑いながら読んでいけますね。

 僕なんか基本的に文庫本大好きで、本に文章以上の価値を認めることはない人間なんで、なかなかこういう趣味の奥深さについては敏感に反応できないんですけれども、たとえばギターとか、バイクとか、ヴィンテージものの良さにぞっこん参っちゃってる人達って確かにいらっしゃいますよね。きっと凝れはこれで奥の深い世界なんだろうなあ、と思っちゃいますね。そういう、すでに"深い"世界にどっぷり浸っちゃっている人のお話ってのは、今までにも何度か目にしたり耳にしたりしますけれども、本書が興味深いのは、ずぶのシロウトが失敗したり、恥をかいたりしながらも、持前の積極性(イケイケ、とも言いますが)を武器に、少しづつこの世界の仕組みみたいなものを習得していく様子が語られてるところにあるわけで、ここがなかなか、楽しいんだなあ(^o^)。

 いや、これはなかなか、肩の凝らないいい本。訳者は名手、浅倉久志さんだしね。

99/9/27

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