幻の大戦機を探せ

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カール・ホフマン 著/北澤和彦 訳
カバー写真 U.S.Government Photo
デザイン 石崎健太郎
文春文庫
ISBN4-16-765121-1 \695(税別)

ロマンをメシの種にする男たち

 大戦の終結とともに余剰になってしまった大量の軍用機たち、それらのほとんどはあっという間にスクラップにされ、あるいは民間に払い下げられて消防機などとして過酷な任務をこなし、そして朽ち果てていく運命にあった。だが昨今、これらの大戦機(ウォー・バード)たちの人気が再燃。金に糸目をつけない大富豪たちによる大戦機のレストアブームに乗り、世界各地に残る大戦機の回収、修復が一種のうまみのあるビジネスとなっていた。そんな世界の第一人者、ゲーリー・ラーキンスは屈指のレーシングパイロットでもあるダリル・グリーネマイヤーと組んで、一つの巨大なプロジェクトに着手した。1947年、航法ミスと機体の不調からグリーンランドに不時着した一機のB-29をその場で復元し、飛び立たせようというのだ。極寒の地に半世紀にわたってさらされていた巨人機は、果たして息を吹き返し、再び大空に舞い上がることができるのか………

 戦争に勝った側の余裕もあるのだろうけれども、米国や英国では今でも、この手のフライアブルな大戦機というのは航空ショーなんかでも人気者で、本書でも登場する南部空軍(コンフェデレート・エア・フォース)や、英国には"バトル・オブ・ブリテン・メモリアルウイング"なんつー部隊が空軍内に存在してたりする。そんなお国柄ゆえなのか、'70年代あたりからこっち、大戦機を(できれば飛べる状態で)復元し、コレクションすることがお金に余裕(半端な余裕じゃないけど)のある人々にとってはちょっとしたブームなのだとか。とうぜん、そういう人々のために程度良く墜落した大戦機を探し出し、それを回収して復元する人々ってのもいるわけで、これはそんな、一種の山師的連中の大仕事につきあったフリージャーナリストの記録。

 飛行機好きなら当然知っている、ダリル・グリーネマイヤーなんて名前がいきなり登場するもんだからちょっと期待してしまった。彼の愛機、"RED BARON"は有名だよね。エアレースの世界では無敵を誇ったダリルなんだけど、その実像ってすんげーわがままないやなヤツだった、ってのは知らなくて、その辺はちょっとした発見だったんだけど、肝心の大戦機の復元の様子とか、失われた機体を探していくあたりの描写が少々淡泊に過ぎるように感じて、本としてはもう一つ楽しめないものになってしまっていたのがちょっと残念かな。

 邦題は「探せ」なんていってるけど、本書の中心は、すでに何年も前からあることがわかっている飛行機を、いかに復元するかってところがメインになってるわけで、ここでどうしたって宝探し的興奮は希薄にならざるを得ないのがちょっと痛かったかな。本自体の構成とか、(原作がそうなのか、訳者のスタイルでそうなったのかはわからないけれど)文体の妙な抑揚のなさとかも損してるかも。まあ、実話ってのは小説ほどには面白くはならないよ、って証明なのかもしれない。それなりに見せ場もあるし、ちょっとほろりとしそうになるところもあるのだけど、総じて平板な印象。こっちが飛行機大好きだから、点数が辛いのかもしれないけど。

02/03/19

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