カール・ホフマン 著/北澤和彦 訳
カバー写真 U.S.Government Photo
デザイン 石崎健太郎
文春文庫
ISBN4-16-765121-1 \695(税別)
大戦の終結とともに余剰になってしまった大量の軍用機たち、それらのほとんどはあっという間にスクラップにされ、あるいは民間に払い下げられて消防機などとして過酷な任務をこなし、そして朽ち果てていく運命にあった。だが昨今、これらの
戦争に勝った側の余裕もあるのだろうけれども、米国や英国では今でも、この手のフライアブルな大戦機というのは航空ショーなんかでも人気者で、本書でも登場する
飛行機好きなら当然知っている、ダリル・グリーネマイヤーなんて名前がいきなり登場するもんだからちょっと期待してしまった。彼の愛機、"RED BARON"は有名だよね。エアレースの世界では無敵を誇ったダリルなんだけど、その実像ってすんげーわがままないやなヤツだった、ってのは知らなくて、その辺はちょっとした発見だったんだけど、肝心の大戦機の復元の様子とか、失われた機体を探していくあたりの描写が少々淡泊に過ぎるように感じて、本としてはもう一つ楽しめないものになってしまっていたのがちょっと残念かな。
邦題は「探せ」なんていってるけど、本書の中心は、すでに何年も前からあることがわかっている飛行機を、いかに復元するかってところがメインになってるわけで、ここでどうしたって宝探し的興奮は希薄にならざるを得ないのがちょっと痛かったかな。本自体の構成とか、(原作がそうなのか、訳者のスタイルでそうなったのかはわからないけれど)文体の妙な抑揚のなさとかも損してるかも。まあ、実話ってのは小説ほどには面白くはならないよ、って証明なのかもしれない。それなりに見せ場もあるし、ちょっとほろりとしそうになるところもあるのだけど、総じて平板な印象。こっちが飛行機大好きだから、点数が辛いのかもしれないけど。
02/03/19