20世紀SF(4)

接続された女

b010517.png/5.1Kb

中村 融/山岸 真 編
カバー装画 秋山 曜子
カバーデザイン 祖父江 慎
フォーマット 栗津 潔
河出文庫
ISBN4-309-46205-7 \950(税別)

 「成熟した」とも「停滞した」とも言える、1970年代の米英SF傑作選。いよいよ、現在もなお巨匠、くせ者、名手などなどの名前をほしいままにする、大物たちの名前が続々と登場。ティプトリ、ヴァーリィ、ベイリー、ラファティ………。

 この時期のSF、というかここに収録されている作家たちの作品というのは、日本にはその多くが1980年代になって訳出されたこともあって、ちょうど学生時代の自分の記憶にかなり重なるんだな。とくに懐かしい名前はジョン・ヴァーリィとバリントン・J・ベイリー。ベイリーの「カエアンの聖衣」や「禅銃(ゼン・ガン)」にはブッ飛んだもんだ。

 そんな'70年代なんだけど、必ずしもSF界は元気一杯だったというわけでもなく、むしろ時代が全体的に停滞気味な気分になりかかってた時期、ってのを敏感に映しとっていた時期といえるんだろうな。ベトナムはダメだった、なんだか景気も悪くなってきた、そんな時代が図らずも反映された時代。いろんな物事への実験的なアプローチとか、新たな政治的、社会的な主張などが込められた、意欲的な作品がならんでいるにもかかわらず、全体を通して得られる印象って言うのはなんというか、元気がないというか、どこかこう迷走気味な感じなんだな。

 この時期のSF小説、オレは学生時代にいくつか読んでいて、そのときにも「なんでSFはこんなに面倒で小難しい理屈を振り回すようになってしまったんだろう」という気分を持ったものだけど、そのとき感じたものを今、改めて思い返してしまうなあ。それゆえ、全体としてのテンションの低さは否めないけれども、一種の懐かしさみたいなモノは感じられてしまってちょっと奇妙な感慨にふけってしまったです。

 そんな'70年代SF傑作選、お薦めはティプトリの「接続された女」………はあまりにあたりまえすぎるから、オレとしてはベイリーの「洞察鏡奇譚」を推しておきましょうか。よくよく考えるとこれ、スゴいのよ。ベイリーらしさ爆裂(^o^)。

01/5/17

前の本  (Prev)   [今月分のメニューへ (Back)   次の本  (Next)   どくしょ日記メニューへ (Jump)   トップに戻る (Top)