20世紀特派員 3

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産経新聞「20世紀特派員」取材班 著
カバーデザイン sakana studio
カバー写真 AP/WWP
扶桑社文庫
ISBN4-594-03112-9 \648

 第2巻がでたのが去年の7月ですから、ちょっと間が開きましたね。今回のおおざっぱなテーマは、「抑圧からの解放」とでもいったらいいか。女性の地位の向上に向けての産児制限を推し進めたマーガレット・サンガーと、彼女を巡る物語、「あらしの性」、欧米列強による過酷な植民地支配からの解放を目指すアジア諸国と日本の関わりを探る「植民地の日々」、因習と国民への義務に縛られたロイヤルファミリーからの離脱を望んだ国王とそれを取り巻いてうごめく国際情勢を描く「恋する王室」の3本立て。総じて悪くないルポルタージュ。

 しばしばいわれる金日成=ソ連のでっち上げ説はつとに有名ですが、本書ではベトナム解放の英雄、ホー・チ・ミンもまたどこかで"すり替え"が行われたのではないか、という説があるってのは初耳だったのでそこは新鮮。ただ、なにせそこは産経新聞、微妙にキナ臭いにおいをまぶすことも忘れてなくて、そこらでちょいと減点になっちゃうんだよな。

 たとえばアジアにおける各国の独立運動の陰に、日露戦争における日本の活躍があった事はこれは確か。その日露戦争の勝利が、日本の(とりわけ軍部の)増長を生んだ、ということもしっかり書いている、日本の活躍がアジア各国に、独立へ向けてのすばらしい刺激を与えたことを書くのはいい。それでも、あえて章を結ぶための節にあえて日本の役割を評価するアジア人学者のコメントと、アジアの植民地政策における悪者は日本だけであるかのように語るフランス外相の言葉を並べて見せたりするから、いらぬ勘ぐりをされるんだと思うぞ。日本の活躍がアジアに勇気を与えたことは確かだ。でもな、日本の活躍は日本に救いようのない驕りもまた植え付けているのだ。アジアで独立のために戦った人々が、日本の活躍に勇気をもらったからといって、そのあと日本が同じアジアでやったことを、「その国の人はちゃんと評価してるじゃん」てな理屈でごまかしていい理屈はないだろう。

 続く英王室のお話も、有名な「王冠をかけた恋」のエドワード8世の物語から、王室の神秘性が失われ、王室が尊敬よりも興味本位の対象になってしまうことを、そこはかとなく危惧して見せてる(だから日本はもっと皇室を尊敬しなくちゃいけない、って言ってる)ように見えたりするんだよな。

 どうも出版元ががちがち右翼のフジサンケイグループだけに、オレが勝手に色眼鏡をかけて見てしまう傾向があるのかも知れないんだけど、うむ、薄目の色眼鏡はかけて読んだ方がいいかもしれん。てことで、以下、4、5巻と続けて読んでみるです。

01/4/11

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