正義の見方

宮崎哲弥 著
カバー/装幀 緒方修一
新潮OH!文庫
ISBN4-10-290083-7 \600(税別)

 夫婦別姓問題、オウム真理教にまつわる仏教の有り様を問いかける論議、さらに'80年代を総括し、日本人の戦争責任問題、天皇制にまつわる問題などなど、世間で騒がれたもろもろの事どもに鋭くメスを入れる、宮崎哲弥氏の最初の著作。

 いわゆる「ウヨク」(あえてカタカナ)系の若手論客として脚光を浴びた宮崎さん、後にやや左よりに方向を修正したと言われる人ですが、この人はやっぱり保守系の思想家でしょう。やけに情緒に訴える議論のしかたが目立つ保守系思想家の中にあって、この人はかなりしっかりと、物事を論理的に捉えて納得できる理論の組み立てをしているように感じられる。おもしろい。でも100%賛成はできない。

 なぜか。それは、やっぱり肝心なところで情緒の部分に逃げちゃっているんではないかと思われるフシがあるから。特に天皇制や戦争責任、という部分でその傾向はかなり顕著なんではないかと思う。できるだけ理を説いてはいるのだけれども、理だけで論を進めようとすると話がややこしくなりそうなところでは、この人その事を敏感にかぎつけて、やんわりと情の部分を持ち出してきて、話を巧妙にぼかしているように思えるのだな。結果、肝心要なところで煙に巻かれたような感じがしてしまった。ふむ、これではオレにはこの本からは正義は見えてこない。

01/3/23

前の本  (Prev)   今月分のメニューへ (Back)   次の本  (Next)   どくしょ日記メニューへ (Jump)   トップに戻る (Top)