3001年終局への旅

アーサー・C・クラーク 著/伊藤典夫 訳
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011347-5 \660(税別)

 時は31世紀。人類はかつてない平和と繁栄の時代を迎えていた。そんなとき、彗星の核を包み込み、金星のテラフォーミング作業のための水資源を運搬する宇宙船、ゴライアス号は海王星軌道付近を漂流する小物体を感知する。接近したゴライアス号の乗員たちは我が目を疑った。それはかつてのディスカバリー号の航海中、HALの"反乱"によって船外に放出された船長代理、フランク・プールその人だったのだ。1000年の時を経て人類社会に復帰したプールの目に映る31世紀の世界とは。そしてプールが望む任務の完遂へ向けての結末は………

 当初の予定ではたしか"20001年"になるはずだった、"オデッセイ"シリーズの最終作品。モノリスとか、それを作った者たちとか、ボーマンとプールの再会だとか、まあいろいろネタはあるんだけど、基本になるのはクラークの未来予想。クラークらしい科学考証をふんだんに取り入れた未来予測が楽しめるかどうかで、この本の評価は分かれそうだな。クラークの描く1000年後の世界が「こうなるのかな、どうかな」と素直に楽しみながら読める人にはとてもいい本だと思うし、「いつになったら話が始まるんだよー」と一度でも思ってしまったら、ちっとも楽しめないだろうな。

 クラークのSFとは、つまるところ未来予測の楽しさと、彼の予測した物を読むことで、"自分の意識が拡がる"(このフレーズは最近のお気に入りなのだ。出典は(た)さんのコメントから)事を楽しめるかどうかにかかっているのだと思うわけで、これに"「2001年宇宙の旅」の全ての謎が明らかにされる"ようなことを期待しちゃあ、ダメなんよ(笑)。

 そのあたりをふまえて読めば、うん、楽しめるかな。ちょっと説明不足かなあと思うところもあるけどね。

01/3/21

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