ドリームチーム弁護団

シェルドン・シーゲル 著/古屋美登里 訳
カバーデザイン 上田宏志(zebra)
カバー写真 ©PPS
講談社文庫
ISBN4-06-273065-0 \1257(税別)

 アメリカ屈指の法律事務所、S&Gの共同経営者(パートナー)の地位を剥奪され、独立を控える私、マイク。だがS&Gで過ごす最後の日に、大変な事件が発生する。S&G屈指のやり手弁護士、ロバートが、自らのオフィスで、パートナーの元で働く弁護士(アソシエイト)の女性、ダイアナ共々射殺死体で発見されたのだ。しかもその事件の犯人として逮捕されたのは、マイクの友人のアソシエイト、ジョエル。だがジョエルは無実を主張している。マイクは弁護士である別れた妻、私立探偵の弟などとチームを組み、ジョエルの弁護に乗り出す。検察側はかつては同じS&Gに籍を置いていた、鼻持ちならない新人検事、スキッパー。圧倒的に不利な状況で、マイクたちのチームははたしてジョエルの無実を勝ち取れるのか………。

 800ページをこえるという分厚い本。もうこれだけで「さあ読んで見ろぉ」って挑戦されてるような感じを受けてしまって、思わず「おお、読んだらぁ!」てな気分で買っちゃった。いやもうこの分厚い本、ページを繰るのが楽しくってしょうがない。法廷モノってアメリカ人は大好きなジャンルらしいんですが、そういうニーズの大きさを反映するかのように、推理モノにしては飄々とした読み味が魅力的な一冊で拾い物。

 妙に深刻ぶるようなこともなく、軽いタッチでお話が進んでいくんで、最初に殺されちゃった被害者の立場がないよなぁ、とか、お話の山場(の一つ)である判決に至る流れにもう一ひねりあるともっと楽しかったんだけどな、とか思わないでもないですが、それ以上にクソ分厚い本(誉めてるんですよ、念のため。)を読んでいく楽しさが満喫でき、しかもアメリカの法廷ってどんな物なのかも何となく判ってくる、楽しくてお得な本。

 公判のための準備過程は、科学と言うよりも芸術に近い。時間をかけて自分の表現を研ぎ澄ますのだ。刑法学者やコメンテイターは、裁判について述べるときに追及の方法ばかりを強調するが、裁判は劇場そのものだ。法廷の中においては、陪審員に情報を与えるばかりが仕事ではない。陪審を楽しませ、さらには、可能であれば、効果的なやり方で彼らを幻惑させなくてはならない。

 それでええの?って思わなくもないんだけど、そういう司法制度であるが故に、法廷物は面白いんでしょうなあ

01/3/10

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