ドラキュラ紀元

キム・ニューマン 著/梶本靖子 訳
造型 松野光洋
カバー写真/デザイン 矢島高光
創元推理文庫
ISBN4-488-57601-X \980(税別)

 時は19世紀。ヴァン・ヘルシングは破れ、ドラキュラは英国での地位を着々と固め、ついにビクトリア女王の配偶者(プリンス・コンソート)として、英国の支配権を握り、英国は通常人とヴァンパイアが共存する、闇の王国へと変貌した。だが、吸血鬼の王国となったはずの英国で、ヴァンパイアの娼婦だけを惨殺する殺人鬼が巷を震撼させる。なぞの殺人者は自らを"切り裂きジャック"と名乗っていた。事態を重く見た英国の闇内閣の中心人物、マイクロフト・ホームズは、諜報員、ボウルガードに"切り裂きジャック"の追跡を命じる………。

 続編、「ドラキュラ戦記」を先に読んじゃって、長らく探していた前作、ようやくネット書店で見つけて手に入れたわけですが、いやこれは全く面白い。続編の方には「ホラー界のスーパーロボット大戦」ってキャッチを考えたんですけど、前作の方もその魅力はたっぷり、というかこちらは「スーパードラキュラ大戦」て感じかなあ(^^;)。とにかく古今東西のドラキュラ、さらに19世紀の英国にいてもおかしくない人物なら、実在の人物だろうが架空の人物だろうが、片っ端から登場するというものすごさ。マイクロフト(シャーロックの兄ですよ、念のため)以外にも、グラッドストンやディズレイリといった実在の大物政治家に、モリアーティ教授やジキル博士、Dr.モロー、怪人フー・マンチューといった架空の人物、さらにはジョン・メリック(エレファント・マンですな)までも登場。"登場人物の95%が何らかの由来のある人物"てのが強烈。

 いやー、ベラ・ルゴシの「魔人ドラキュラ」見といて良かったなあ、って感じで。基本的な「ドラキュラ」のお話を押さえておけば、後は巻末の付録の人名辞典を頼りにニューマンさんの凝りに凝りまくった、吸血鬼の跋扈する19世紀の英国の恐怖と耽美に浸れること請け合い。ホラーって苦手なんだけど、このシリーズだけはたまらんおもしろさがあるわ。読まなきゃ損だよ(^o^)

01/3/7

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