ハッカー/13の事件

表紙

J・ダン&G・ドゾワ 編/ウィリアム・ギブスン他 著/浅倉久志他 訳
カバーデザイン 岩郷重力+Wonder Workz
写真 ©Tomonori Taniguchi / amana images
扶桑社ミステリー文庫
ISBN4-594-03003-3 \781(税別)

 ダン&ドゾワのアンソロジー………。あっ、なんか聞き覚えのある名前だなあと思ってたら、「不思議な猫たち」のコンビじゃん。猫小説アンソロジー×2、犬小説アンソロジー×1の次はいきなりハッカーネタアンソロジー。なんか節操のかけらもないような気がしないでもないけどまあいいや。メンツは超豪華。ギブスン、スターリング、ベアのサイバーパンク御三家を筆頭に、イーガン、シルヴァーバーグ、スワンウィックといったビッグネームがずらりと並んだ姿は壮観であります、が。

 これを読みとおすのは正直しんどいね。「ハッカー小説」と銘打ってはいるけれども、これは紛れもなくサイバーパンク・アンソロジーなわけで、サイバーパンクがもつ、さまざまなガジェットとタームが次々と繰り出されてくるものだから、読んでると途中でお腹が一杯になってしまうんだね。サイバーパンクが、ムーヴメントとしては華やかに登場したにもかかわらず、その黄金時代があっけないぐらい短い物だったのも、あんがいこの、"脂っこい料理のオンパレード"状態がその理由だったんじゃないかと思えてくる。もちろんギブスンノ名作中の名作、「クローム襲撃」やベアの「タンジェント」のように、「まあ、脂っこいのにいやな後味が少しも残っていないわ!」(美味しんぼ風に読んでね)な作品もあるんだけど、なんていうか、ちょっと技量が落ちるとたちまちその脂っこさ、くどさが前面に出てきて、読むのが非常にしんどいものになってしまうような感じがあるんだな。

 サイバーパンク・ムーヴメントがなぜに短命に終わった(もちろんサイバーパンクは無意味だったとも、サイバーパンクは完全に消滅してしまったモノだなどともいう気はないので念のため)のかが何となく判る、って意味ではそれなりに意味があるとは思うんだけど、ううむ、アンソロジーとしては、編者の手腕に疑問符を付けざるを得ないかなあ、と思いますな。既読の作品が多かったのも、アンソロジーとしてはちょっとお得感に欠けるものがあったかもしれない。

00/12/14

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