アルカイック・ステイツ

表紙

大原まり子 著
カバーイラスト ひろき真冬
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワJA文庫
ISBN4-15-030652-4 \520(税別)

 28世紀、太陽系は三つの勢力の微妙なパワーバランスの上になりたつ、極めて不安定な世界だった。三つの勢力とは太陽系をその勢力範囲に収めるジェネラル・アグノーシア、宇宙航行種族間の調停機関の下部組織である権威評議会、そして前世紀に突如として出現した古代銀河帝国の幻影、アルカイック・ステイツ。共闘と対立を繰り返しながらも危ういバランスの上で拮抗していた三つの組織は、かつてアグノーシアの組織に属し、ステイツの武器を持った一人のテロリストの出現によって大混乱に陥ることになったのだった。

 A・E・ヴォークトに捧げられた本書は、その不可思議な勢力、アルカイック・ステイツが実にこの、"イシャーの武器店"を髣髴とさせるあたりがいかにも、って感じなんですが、短い中にもいろいろとあなどれないしかけがたくさんあってなかなかのクセ球。悪くない。悪くないんだけど手放しで喜ぶこともちょっとできないのがちと辛い。大原まり子という人の力を認めるのにやぶさかではないんだけれども、その才走った部分が妙に引っかかりを感じる………とかいうのは前にも言ったような気がするなあ。とりあえずそういうことなんですわ。面白いと思えるのに、好きになれない。何なんでしょうねこれは(^^;)

 カバー裏の惹句にいわく、稀代の幻視者大原まり子が描く、政治と愛と悪趣味と妄想。おおそうか、オレは政治も愛も悪趣味も妄想も好きなんだけど、それ以上に、それらを詰め込んだ"物語"がより一層好きなんだよなぁ。んで大原まり子作品から、物語が感じられないのが、オレがこの人の本をイマイチ好きになれない理由なのかもしれないなあ、などと思ったりしてみたりする。

00/11/22

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