呪縛は解かれたか

表紙

産経新聞金融犯罪取材班 著
カバー 旭印刷
角川文庫
ISBN4-04-354801-X \619(税別)

 バブル経済の幕引きであるかのように、次々とおこった証券スキャンダル、金融機関の相次ぐ破綻。それらの影にはかわりばえのしない大蔵省による護送船団方式、旧態依然の金融機関の、日本の裏社会との癒着、さらにはそれに群がる政治家をはじめとした利権構造という戦後日本に巣食う"呪縛"の構造があった。バブルがはじけ、日本版金融ビッグバンといった言葉が声高に叫ばれるようになった20世紀の終盤、はたして長く日本の利権構造を支配してきた呪縛の構造は断ち切られたのか?

 産経新聞に連載されたリポートの総集編。政治家、官僚、金融機関、さらには闇社会の大立て者たちが利権をむさぼる構造は想像通りというか想像以上にどろどろと怪しげ。無策の官僚、利権に群がる暴力団、右翼団体。あの元気者の政治家、故ハマコーさんも昔は右翼の活動家だったとは思わなんだ。その他、なにかとニュースで出てきた単語、「飛ばし」ってのもようやくどういうコトなのか判ったぜ

 基本的なところで、わたしゃ経済音痴であるからそう思うのかもしれないんだけど、一連のバブルの騒ぎってのは、本来生まれるはずのないところからふしぎなことにどんどんお金が生れて増えてくる、って構造からできたものであって、人間がちょっと冷静になれば引っかかったりするわけがないもの事のような気がするんですが、なんでまあこうもころりと旨い話に人間は転んでしまうモノやら(^^;)。

 今までうまくいってたものをなんで変える必要があるのか、これからもうまくいくに決まってるじゃん、みたいな思い込みが、今の日本の閉塞状況を作り出しちゃったってコトなんでしょうかね。

 ネタが真面目なだけに読むのに少々骨が折れるんですが、悪くない。ただ、読み物として考えるならば、新聞連載時の構成をそのまま本にしちまうんでなく、もう一度解体して再構成したほうがよろしかったのではないか。本書でいうなら、最終章の1パート、かつて銀行は間違いなく人を見て融資を行っていた、ということを示すマイカルグループの創始者、西端行雄さんのエピソードから筆をおこし、金融の無策、金融制作に群がる政治家と闇社会の構図、みたいな流れにしたほうが読み物として興味深いものになったのではないか、と思ったりしますな。本なんだから、ページを繰るのに新聞とは違う工夫をして欲しいと思ったりいたします。

00/11/13

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