ペイパー・ドール

<スペンサー・シリーズ>

表紙

ロバート・B・パーカー 著/菊池光 訳
カバー 辰巳四郎
ハヤカワ・ミステリ文庫
ISBN4-15-075675-9 \620(税別)

 ボストンの高級住宅地。深夜、一人の女性が頭を大型のハンマーで強打されて殺された。通り魔による衝動的殺人にみえたこの事件だが、彼女の夫は進展しない警察の捜査に業を煮やし、真犯人の追及をスペンサーに依頼する。さっそく捜査を開始するスペンサーだったが、殺された女性、オリヴィアも、その夫トリヴァも、上流社会の間では非のうちどころのない人格者という評判しか返ってこない。お蔵入りしかけた捜査の糸口をつかむため、オリヴィアの生まれ故郷を訪れる。そこでスペンサーが掴んだ真実へのかすかな手がかりとは………

 久々に無駄口叩かないスペンサー。解説でも語られている通り、今回は全編を通してスペンサーによる犯人探しがメイン。スーザンとの洒落のめした会話は最小限、ホークとの凸凹軽口アクションもなし。ひたすら聞き込みまわり、真実に近づいていくスペンサー、ってのはなかなか珍しい、ってそれが事件になるミステリ文庫ってのも珍しい(笑)。

 スペンサーって基本的に自分のマッチョぶりを背景に、自分が認めた相手となら対等に付き合っていける人物な訳で、それって自分のマッチョを認めてくれる弱い相手と、同等な相手にはちゃんと付き合うけれども、そうじゃないヤツは自分より劣る、と決めつけちゃってぼこぼこにいわす、ってパターンの人な訳で、そこら辺がスーザンやホークとの会話の端々に出てくるのが、ともすればこのシリーズを読んでる時にしばしば感じる"うっとーしいなコイツ"てな気分のもとなんだろうと思うんですが、今回のお話はそこら辺、適度に抑制が効いててよろしおます。

 "シリーズ中もっとも緻密なプロットで贈る"なんてえ惹句かまされちゃうと、「おいおいこれで"もっとも緻密なプロット"かよ」(笑)などとツッコミの一つもいれたくなりますが、最近の口数ばかりで身体を動かさなかったり頭使わず身体だけ使いまくるスペンサーにうんざりしてた諸兄には一服の清涼剤かも。すごくいいってもんでもないけど、悪かぁないっす、今回は久々に。

00/10/17

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