大統領の娘

表紙

ジャック・ヒギンズ 著/黒原敏之 訳
カバーフォト 株式会社アイ・ビー・エス
角川文庫
ISBN4-04-279502-1 \800(税別)

 精力的に国務を遂行するアメリカ大統領、ジェイク。彼には小さな秘密があった。かつてベトナム戦争に従軍した時、その地で夫のある女性と恋に落ちていたのだ。時がたち、ジェイクはその時彼女との間に一人の娘が生まれていたことを知る。だがそれはジェイク、そして相手の母子双方の合意によって慎重に秘密にされていた。だがこの秘密はふとしたことから狂信的なイスラエル愛国者の秘密組織に知られてしまう。彼らはジェイクの娘、マリーを誘拐し、彼女の命と引き換えに、アメリカの強大な軍事力でイスラエルに敵対するイスラム国家への攻撃を要求する。事件を知った英国の首相直属の対テロ組織の長、ファーガソンはただちに最強のエージェント、ショーン・ディロンに状況の打開を命令する………

 元IRAのテロリストにして演技と射撃の達人、ショーン・ディロン物の最新刊。名作「鷲は舞い降りた」に登場した伝説的テロリスト、リーアム・デブリンをゲストに今回も………つまらねー(^^;)。

 どこがつまらんかといえば、前作「闇の天使」と大体おんなじ。主人公の動機、って部分については、ディロン自身が基本的にニヒリストであるってことで少々割り引いて見てあげてもいいんだけど、やっぱりキャラクターに魅力がない、お話にも何の意外性もない。もうちょっとヒネリなさい

 以下ネタバレになるけどゴメンね。今回のお話のキモ、ベトナムで生まれたアメリカ大統領の忘れ形見、ってシチュエーションでわたしゃかなり期待したんですよ。普通さぁ、ベトナムにいったらベトナム人女性と恋に落ちそうなもんですよねえ。なのにわざわざベトナムまで出かけたジェイクが恋に落ちる相手は、フランス人の貴族で軍人の妻。ええい、結局あんたらは世の中でいちばんできがいいのは白人だ、って意識から抜けられねえんだな(^^;)。わたしゃジェイクさんがフランス人女性と恋に落ちた瞬間(お話がはじまって16ページで)、「あかんわ」と思ってしまったです(笑)。

 早とちりしちまったオレも悪いけどさ、ヒギンズともあろう者がこんな門田某の一連のトンデモヒーローシリーズみたいな話をいつまで書くつもりなんだろう。悲しい。「鷲は舞い降りた」や「神の最後の土地」のあの感動はもう味わえないんかのう………。

00/9/28

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