633爆撃隊(1)

表紙

フレデリック E・スミス 著/岡部いさく 訳
カバーイラスト 佐竹政夫
カバーデザイン 天野誠
光文社NF文庫
ISBN4-7698-2282-0 \838(税別)

 英国きっての爆撃部隊、633スコードロン。隊長グレンヴィル以下、腕利きのパイロットをずらりと揃えたこの部隊が、新しい基地、サットン・クラヴィックにやってきたのは1943年の1月だった。ノルウェイのレジスタンスたちが持ち帰った最高機密情報に対処するため、特殊作戦の訓練が彼らを待っていた。そしてその作戦のため、彼らの許には英国が誇る高速爆撃機、デ・ハヴィランド・モスキートが配備される。戦闘機に匹敵する最高速度を持つモスキートで、ノルウェイのフィヨルドの奥に作られたドイツの秘密工場を爆撃しようというのだ。苛烈な対空砲火、襲いかかるフォッケウルフの群れ。彼らははたして生き延びることができるのか………

 映画にもなった「633爆撃隊」、わたしゃ史実に基づいたノンフィクションなんだと思ってたんですがそうじゃなく、これはれっきとしたフィクションなんでありました。とはいえその物語の背景には、モスキート爆撃隊が実際に行ったミッションを下敷きにあるようで、このへんは訳者の岡部いさくさんの解説でご確認ください。潜水艦が沈んだり北朝鮮のミサイル基地が撮影されるたびにテレビに引っ張り出される岡部さんですが、ご本人が蛇の目ファン(英国機ファンのことっす)であることは有名で、まずは当を得た翻訳者設定でありますな。戦記物ってテクニカルタームが結構あって、そこらに詳しくない人が翻訳を担当すると、"シュミッサー機銃"だの"マルクIV戦車"だの"スーパーセーブル戦闘機"などという謎なアイテムが出現してそのたびに頭かかえてしまうんですが(笑。ちなみにさっきのは一般には"シュマイザー機銃"、"IV号戦車"、"スーパーセイバー"っすね)、さすがに岡部さん、そのへんは安心して読めます。

 お話自体はごくごくストレートな戦争アクション小説で、極限状況の兵士たちの心理状態の描写、彼らと心を通じ合わせるノルウェイのレジスタンス、彼の妹とグレンヴィルとの淡い恋、といろいろ見所は用意されているんですが、ま、総じて可もなく不可もない、てなレベルであります。んがしかし、なんせあなた主役がモスキート。こりゃもう蛇の目ファンなら読むしかないでしょ、てとこで。

00/9/9

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