フリーダムズ・チャレンジ −挑戦−

表紙

アン・マキャフリィ 著/公手成幸 訳
カバー 永田千秋
ハヤカワSF文庫
ISBN4-15-011321-1 \900(税別)

 「私は放擲された。私は留まる。」てえわけでマキャフリィの、SFハーレクイン15少年漂流記(ぉぃ)の完結編。地球の科学技術レベルを遥かに凌駕するエオス人とその配下種族であるキャテン人によって蹂躙された地球から無人惑星ボタニーに放擲され、自活を余儀なくされたクリスをはじめとする地球人たちと、止むに止まれぬ事情からキャテン人の上位種族でありながら同じくボタニーに放擲される羽目になってしまった戦士ザイナル。彼らはさまざまな反目を乗り越え、協力し、やがて惑星ボタニーを見事に安定した植民惑星に変え、さらにボタニーを抜け、同じく他の惑星に放擲された同胞たちを探し求めることまでも可能にする。エオス人を凌ぐ技術を持つらしい謎の種族、"ファーマーズ"の存在を気にしつつ、力をたくわえたボタニーの地球人たちは、キャテン人と、彼らを支配するエオス人から地球を奪回するための行動の準備を整えつつあった………。

 えー、シリーズを通して読んでる人、マキャフリィ作品の大体のパターンを掴んでおられる方に対しては「ええ、そのとおりです。」と言えば充分な作品であります。いやはや(^^;)。

 マキャフリイの語り口のうまさでごまかされちゃいますけど、このシリーズ、とりわけ完結編であるこの作品って、物語としてはダメダメな一冊ですよね。勧善懲悪は結構なんだけど、そこには善玉が勝利を収めるうえで超えられないかに見える障害が立ちはだかってなきゃいけないし、機転と決意でその障害を乗り越えたかにみえても、その先にはさらにもう一山、最後のサスペンスが待ってなきゃ、そりゃお話とは言えんでしょう。このお話で描きたいのはそういう勧善懲悪のアドベンチャーなんじゃなく、それに名を借りた、実は異星人同士のラブロマンスなんだ、っていう向きもあるかもしれないけれども、そのラブロマンスの方も手薄。これさぁ、アマチュアが、自分がクリエイトした主人公を猫可愛がりして書いた話を、自分が読んで楽しむ、ってシチュエーションでのみ存在価値がある本なんじゃないだろか。さすがにマキャフリィ、字面を追いかけている間は退屈しないけど、無理して読むほどのもんでもなし。なんだかなあこれは(^^;)。

00/8/25

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