ウィーンの血

表紙

エイドリアン・マシューズ 著/嶋田洋一 訳
カバーイラスト 渡邊アキラ
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワNV文庫
ISBN4-15-040954-4 \900(税別)

 東京大震災を引金に全世界を覆った恐慌の影響も完全に抜け切らない2026年の冬。ウィーンの路地で一人の男が交通事故で死亡する。生前彼と偶然あって話をする機会のあった新聞記者、シャーキーのもとに、男の妻から交通事故の真相を探ってくれるよう依頼が舞い込んだ。シャーキーが調べていくうちに、その男、レオには裏の顔があったことが明らかになってくる。ネットワークを介するブローカーを営むレオは、その裏で卓越したクラッキングテクニックを用いて裏の金融操作で多大な資金を稼ぐ人物だったのだ。さらに情報を蒐集するシャーキーの前に、次々と不可解な組織、人物が浮かび上がってくる………

 21世紀のヨーロッパ、世情不安とバイオ、遺伝子操作、ネットワークがらみの犯罪などのガジェットからはSFとも見えるし、夫を失った妻の依頼を受けて操作を開始するシロウト探偵、その陰に潜む過去の陰謀、てな部分からはミステリとも取れるふしぎな作品。で、ハヤカワ文庫の分類はNV(ノヴェルズ)、どちらの分類にも収まりきらない、というある意味積極的な理由ではなく、むしろこれはどっちの分野から見ても底の浅い作品でしかないってことのような気がする(NVがどっちつかずだという気はないので念のため)。あまりにくどくどしく退屈な展開、なのにやたら唐突な急展開、思わせぶりな会話は上すべり、どんでんがえしは確かにあるけど、それが結末に鮮やかな読後感をもたらしてくれない、ってなわけで、総じてダメダメな一冊。"英国推理作家協会賞受賞"?ほんとかー?(^^;)

00/8/18

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