敵手

競馬シリーズ(35)

表紙

ディック・フランシス 著/菊池光 訳
カバー 辰巳四郎
ハヤカワ・ミステリ文庫
ISBN4-15-070735-9 \820(税別)

 依頼人は小さな少女だった。重度の白血病に苦しみ、父が買ってくれた若い馬を心の友としていた彼女、レイチェル。そのレイチェルの心の差さえともいうべき若駒が、何者かによって右前脚を切断されてしまったというのだ。時をおかず、英国のあちこちで同じように残忍な手口で若い馬が傷つけられるという事件が頻発する。誰が、何の目的で………

 "競馬シリーズ"ファンなら先刻承知、元チャンピオン・ジョッキイにして今は隻腕の調査員、シッド・ハレー三たび登場。こうなるともはや"競馬シリーズ"内・"シッド・ハレーシリーズ"の様相を呈したりしてるワケですが(^^;)、重病に苦しむ少女と心を通わせつつ、かつて心を通じ合っていたと信じていた、ライバルであり旧友との思わぬ対立を軸に描かれる、ハズレナシの冒険小説シリーズの文庫版最新刊。今回も読み始まったら止まりませんですよ(^o^)

 というわけで今回も楽しく読ませていただきました。たとえそれまで友好的に付き合っていたとしても、その相手が獲物と見るやいきなり容赦なく牙をむくジャーナリズムの醜さ、人格者の父親とそりがあわず非行に走る少年とシッドの触れ合い、死に向き合った少女とシッドの心の交流と、読みどころは充分、というかちょっと盛りだくさんすぎやせんかこれ、てあたりにじつは少々不満あり。

 冒頭から中盤にかけての面白さは、いつも通りの"競馬シリーズ"。全然文句ないんだけれども、いくつかの理由から(おんなじ数の反論もあるんだろうけれども)終盤のいくつかのまとめの弱さが個人的には残念。面白いんだけどねえ(^^;)

00/8/10

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