異能の画家 小松崎茂

その人と画業のすべて

表紙

根本圭助 著
カバー絵 小松崎 茂
装幀 松田行正+斎藤知恵子
光文社NF文庫
ISBN4-7698-2276-6 \752(税別)

 イマイのサンダーバードの箱絵。涙が出るほどわくわくしちゃうあの箱絵、タミヤが本格的にプラモデルに進出する時の斬りこみ隊長となったパンサー戦車、"少年マガジン"誌上でのさまざまな戦記物や空想科学ものの挿絵………。ぼくにとっての小松崎茂さんの絵の印象。昭和30年代生まれなら、みんなそうなんじゃないかな。一度も小松崎さんの絵を見ないで育ったヒトなんていないと思います。その方の年齢層によって受け取り方はいろいろでしょうが、戦中戦後を通じて、多くの少年たちにわくわくするようなSFマインドというか、センス・オブ・ワンダーを与え続けてくださる小松崎茂画伯の半生を、画伯の弟子でもある根本さんが、とても近い距離から見てきたヒトだけに分かるディティルを交えて綴る本。

 僕にとっては小松崎さんというと、モケイの箱絵と少年マガジンの企画モノ(つまりは大伴昌司さんとも密接に繋がるってワケで、オレ的にセンス・オブ・ワンダー倍率ドン!なんですが)って印象が強いのですけれど、(それでもたとえば箱絵ってことで言うならば、小松崎さんのお仕事以上に、彼の弟子である高荷義行さんや大西将美さんの絵のほうに、より親近感を抱くんすが)マガジンなどの戦記物の口絵では思い切りわくわくした、って感じは覚えています。サンダーバード関連についてはあなた、もう………(^^;)。魅力にあふれるイラストレーションをものされる小松崎さんという人物もまた、大変魅力のある方です。

 小松崎さんの"異能"ぶりも確かに魅力なんですが、本書の最大の魅力は、小松崎茂という人物が健筆を揮った、挿絵、絵物語が全盛を極めた時代の様子が鮮やかに浮かび上がってくるという点で極めて史料価値の高い本。ここに小松崎茂、という人物の魅力が加わって、たいへんに魅力的な本に仕上っていると思います。挿絵も多数で、これがまたみな素晴らしい。

 ご存じの方も多いと思いますが、近年小松原さんはご自宅と、そこに保管されていた膨大で貴重な資料のほとんどを消失されています。80才になってゼロからのスタートを強いられてらっしゃる小松崎さんにとって、きびしい毎日ではあると思うのですが、これからもぜひ、素晴らしい絵を見せてください、ってなエールの意味も込めて。ってそういうことを言うなら親本買えよって言われそうですけど(^^;)

00/7/13

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