巡洋戦艦<ナイキ>出撃!

紅の勇者オナー・ハリントン(3)

表紙

デイヴィッド・ウェーバー 著/矢口悟 訳
カバーイラスト 渡邊アキラ
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワSF文庫
ISBN4-15-011314-9 \660(税別)
ISBN4-15-011315-7 \660(税別)

 凄絶なグレイソン攻防戦での負傷もようやく癒えたオナーのもとに届いた辞令、最新鋭の巡洋戦艦"ナイキ"艦長への転属命令だった。初代の伝説的な武功から。ナイキの名を引き継ぐ艦を指揮することはマンティコア宇宙軍の軍人であればだれもが熱望してやまないポスト。数多くの先輩を差し置いてそのポストに着任が決まり、勇躍出発するオナー。一方マンティコアと対立するヘイヴン人民共和国では内政の不手際で噴出しつつある国民の不満をかわすため、大々的なマンティコア侵攻計画が着々と進行しつつあった………。

 ホーンブロワーやボライソーなど、英国海洋冒険小説のスタイルをこれでもかとばかり踏襲して綴られるスペースオペラ第3弾。ここにきてそれらの海洋冒険ロマンとはちょっとちがった方向性が見えてきたのかな、とも感じられ興味深いところ。こちらのシリーズの新機軸は、主人公の周りに限定したドラマと同時に、国政規模での戦争であったり、革命であったりというマクロなドラマも進行している、って感じでしょうか。このあたり、訳者あとがきでも述べられているんですが、ちょっと新機軸、と言えるかも。ただまあ、それが逆に災いしちゃって、オナーをはじめとする現場の戦士たちの戦いぶりという、本来この手のシリーズの最大の見せ場ともいえる部分の迫力が少々不足気味に感じられてしまうのはちょっと残念といえるかな。

 「出撃!」なんぞと勢いついてみたはいいけどいきなり故障して活躍できない新鋭艦とか、お決まりのダメ上司、バカなくせに生まれだけはいいもんで鼻持ちならない同僚との確執、堅物のオナーに訪れたちょっとした転機など、いろいろ見せ場はあるんですが、前述した最後の見せ場の迫力不足がなんとも残念って感じでしょうか。

 そうはいっても新基軸を持ちこむこと自体は全然反対じゃないんで、新たに持ち込まれた国際間の緊張関係が、お話の中にうまく盛り込まれていけば、今後も楽しめるシリーズにはなりそうです。そこらに期待っすね(^o^)。

00/7/5

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