「民」食う人びと

新・日本官僚白書

表紙

佐高信 著
カバーデザイン 鈴木一誌
光文社文庫
ISBN4-334-72983-5 \619(税別)

 折りにふれ日本の官僚の無策と腐敗を鋭く批判してきた佐高信さんの「新・日本官僚白書」と「『民』食う人びと」を一冊にまとめた本。だいたい1996〜1997年ごろの日本のさまざまな官僚、政治家がらみの余りよろしくないお話が続々と出てくる訳ですが、この状況、それからちょっと時間がたった現在ただいまも、ちょっと役者と舞台の名前をかえれば通用してしまうのが恐ろしいというか情けないというか(^^;)。

 佐高さんに指摘されるまでもなく、日本の官僚主導型の政治のなかでは、一度決めたことは何があっても推進することが大命題になっており、それを止めようとする流れが生まれてくると、官僚という生き物たちはすさまじい力で抵抗してくる、というのはたとえば吉野川河口堰の問題などで充分船名になっていると思うんですが、ではなぜそんなことは起きるのか。

 先輩が定めた政策を自分の代で潰してしまうことはできないという事なかれ主義、若いうちから分不相応な力をもってしまうことから来る根拠のない特権意識、同じく若い頃から専門バカとして仕事を続けてきたことから来る想像力と常識の欠如などなど、うなずける理由はたくさんあるんですが、ではこの状況を打破するにはどうすればいいのか。

 官僚とそれに密着して腐敗する政治家たちへの舌鋒の鋭さとは裏腹に、佐高さんにもこの状況を一気に改善する妙案はないようで、そこは残念。最近妙に本多勝一氏の、どうも独善的に感じられて好きになれない部分と同じような匂いが強まってきたように感じていた佐高さんですが、本書ではそこまで鼻につく部分はなく、好感の持てる本だっただけにそこはちょっと惜しかったかな。

 佐高さんの本で毎回不満に感じるのは、あちこちの雑誌に掲載された文章をまとめることから、同じような文章が繰り返して現れるうっとうしさにあると思うんですが、二冊の本をあわせた本書でもその傾向が少し見えてしまい、これも不満に感じるところ。機会を捉えて休みなく批判を続ける佐高さんの姿勢には好感をもつんですが、一つじっくり腰を据えた本も読んでみたいとは感じますです。

00/3/30

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