「イエスの遺伝子」

表紙

マイクル・コーディ 著/内田昌之 訳
カバーデザイン 花村広
徳間文庫
ISBN4-19-891267-X \590(税別)
ISBN4-19-891268-8 \552(税別)

 その急成長ぶりから"バイオ技術界のマイクロソフト"と言われるジーニアス社の社長で天才的な遺伝子学者、トム。彼は同僚の天才的コンピュータ工学者、ジャスミンらの協力により、人間の遺伝子の内容を完全に解明する"ジーンスコープ"を開発、それによってジーニアス社を世界最大のバイオサイエンス企業へと発展させたのだ。その功績によりノーベル賞を授与されるまでに至り、栄光と幸福の絶頂にあるトムを突如悲劇が見舞う。彼を狙った狂信者の弾丸により最愛の妻が殺害されてしまったのだ。しかもその妻の遺体からは、遺伝性の脳腫瘍が発見される。その腫瘍は妻を失ったトムにとって最後にひとり残った愛情の注ぎ先である愛娘、ホリーにも受け継がれていた。トムが開発した遺伝子解析装置は、冷酷に娘の命をあと1年以内と診断する。最愛の娘の命を救うため、ありとあらゆる方策を検討するトムだったが、決定的な対策は見つからない。そんなトムが最後にすがったのは、奇跡の治癒力を持っていたと思われる、イエスの遺伝子を解析し、彼と同じ遺伝子情報を持つ人間を現代世界の中から探し出すことだった………。

 「リング」の鈴木光司さん、「パラサイト・イヴ」の瀬名秀明さんらも推薦したってことで話題を集めた(らしい)作品の文庫化。作者のマイクルさんは英国のそこそこエグゼクティブなビジネスマンという職をなげうって作家に転身し、2年がかりで書き上げたこのデビュー作が大ヒット、というなかなかハデな経歴の人なんだそうです。

 イエスが存在したのか、存在したとして、今に語り継がれるような奇跡を実際に起こしたのかどうかってのは、個人的にはアヤしいもんだと思っているほうなんで、そのイエスの遺伝子を採取する、という行為自体がすでに馬鹿馬鹿しく思えてしまう私にとっては、最初のツカミからして少々弱かったりするワケですが、本書で語られる遺伝子解析装置、ってアイディアは悪くないと思います。ですから、いたかどうかもわからん人物の遺伝子を採取する、ってところに有無を言わせぬ説得力があるか、遺伝子の採取という行為自体にものスゴく斬新なシカケでもあればそれでいいか、って感じだったんですけど、どっちもそれほどでもないんだなあ(^^;)

 まあデビュー作ってことで、お話の筋立てとかツメの細かさとかに粗い、と感じられるものがあるのはしかたがないんでしょうけど、それでももうちょっと何とかならんかったのか、てな感じかな。でもやっぱ一番大きいのは「なんでそんなに能天気にイエスの存在を信じられるの?」てとこですかねえ。こういうのはキリスト教国で生まれ育たないとどうしようもないのかな。個人的にダメな本じゃあないと思うけど、さりとてぱっとしたところも感じられない印象っすね(^^;)。

00/2/16

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