「日本人と戦争」

そして、これから…

表紙

木村譲二 著
カバーデザイン 藤本やすし+Cap
光文社文庫
ISBN4-334-72950-9 \495(税別)

 世界の中で極めて特殊な位置にあったがゆえに、国際社会でのシビアなやりとりや時として大きな敗北の経験などをすることのないまま、いきなり近代帝国主義社会に飛び込んだ日本は、その特異な地理的、歴史的背景の結果、アジアの諸国のなかでは例外的な急成長と、その反動ともいえるような第二次大戦における大敗を喫してしまうわけですが、そんな日本の国際社会での"戦争"の歴史から、日本人の国民性を解き明かし、今後進むべき道を解き明かそうという本。著者の木村さんは、"航空ファン"誌などでも、国際紛争に関する分析記事などが掲載されることも多く、名前はずいぶん前から知っていたのですが、まとまった著書を読むのは初めてです。

 国際社会にあっては、独善的なキリスト教的文明、不寛容を旨とするイスラム的精神世界、独断で他を省みない中華思想などなどさまざまな人種と、人種の数だけの考え方があるわけで、単純に"世界人類が平和でありますように"的なスローガンだけを能天気に唱えてさえいればいつかは平和がやってくる、なんてことは絶対にあり得ないんであって、日本もまた、独自の戦略をしっかりもって行かなければいけない、という著者の主張は充分にうなずけます。ワシもそう思う。んがしかし、その時日本が拠って立つべき思想が、「義を見てせざるは勇なきなり」的な"大和魂"出あるべきであるとする意見はいかがなものか。

 もちろんそれは、ややもすれば歪んで解釈された"大和魂"とは違う、理にかなった"是々非々"の思想であり、それが"是"であるならば敢然とそれを行うような"魂"である、という主張はわかります。んがしかし、ではその"是"は誰がどう判断するものなのかについてははっきりした答えがない。そこに特定の思惑をもった連中が付け入るスキがあると思うんですけどね。んでそのスキが偶然そうなってしまったモノなのか、巧妙に用意されたモノなのか、うーむ、気になる所ではありますなあ(^^;)

 個人的にかなり同意できる部分はあるんですけれども、それでもなんかこう、その奥にこっそり隠された何かがあるような気がして、手放しでおっけー、とも言いづらいんだよなあこの本(^^;)

00/1/26

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