関西国内空港
トップ国内線到着立山新湯 詳細&写真



秘湯を目指して ――立山新湯への旅 1,2日目――


種別天候日程
晴れ 2004年8月12日〜14日
 今回の探検家は立山新湯を目指します。アプローチが大変と評判の新湯ですが、エアリアマップで『無許可の自動車通行不可』の文字をみて自転車で旅することにしました。ほんとのところ別の資料で車両禁止と書いてたのを見たはずなのですが、つごうの悪いことは意識の中心から遠ざけてしまう探検家は、なんとなく自転車でいける気になっていたのです。  車の天井に自転車を縛り付け(貧乏な探検家のことですからもちろん直縛りです)彼らは夕暮れまえに折立に到着しました。
到着の喜び そこはなんとなく高原の雰囲気。さっそく浮かれ気分で自転車を下ろし、ふらふらと漕ぎ出します。 折立よりチャリでスィーっと photo by Jn(photo by Jn)
しかしなんてことでしょう。林道の入り口の監視所には『車両進入禁止(自転車を含む)』と看板が立ってるではないですか。しかも違反者は条例により罰せられますとのただし書きまで。
折立の看板 photo by Jn(photo by Jn)
 探検家と仲間達は額をよせて相談します。監視所の人が帰ってから夜中に行ってしまおうという人もいますが、入ってから見つかったら言い訳のしようもありません。もういい歳なんだから警察沙汰は勘弁してほしいです。
明日の相談 とりあえず監視所の向かいのキャンプ場でテントを張って様子を見ることにしたようですが、幸か不幸か監視所の明かりは一晩中消えることがありませんでした。やむを得ません、彼らは徒歩で新湯を目指すことにしました。歩きでGo

 明け方の林道は人も車も通りませんし、うっすら霧に包まれた景色は別荘地の散歩気分です。 早朝の道 photo by Jn(photo by Jn)

 そこここに力尽きているヒミズやモグラも気分を盛り上げます。
モグラ photo by Jn(photo by Jn)
 探検家たちはあれやこれやで騒ぎつつ長い道のりを歩きつづけました。



 どのくらい歩いたでしょうか。実のところ山歩きがそんなに好きやない自分をそろそろごまかしきれなくなってきた頃、緩いカーブの陰からあの横断幕がふいに現れました。しかしネットで下調べしていた『歓迎 立山カルデラの自然はみんなの宝』という和やかなものと文面が違います。
横断幕『キミよ知るか! 動く山を 叫ぶ川を』

 かなり威嚇されているように思うのは考えすぎでしょうか。しかしそれで良いのです。ここまでの道のりで探検家達は刺激に飢えていました。景色が綺麗とかモグラがたくさんいるとか言いましたが、実のところ彼らが求めるのはそんなことではありません。横断幕のその言葉こそ本来の目的のにおいを漂わせているのです。

 とたんに活気づいた探検家たちは、カーブのブラインド側にあるはずの監視所をどう通過するか相談し始めます。下調べで見つけた記録では監視所の裏の茂みを越えたとなっていましたが、実物を目にすると迂回路の尾根はそこそこ高そうです。 偵察 傾斜がきつく濃い薮で、本来チャリを担いでここを超えようという計画だったあたり毎度のザルっぷりです。なんにせよ、ここまでで結構くたびれていたので、監視所に一声かけたら通してくれるのではという希望的な意見も出ています。しかし声をかけて断られた後に裏から抜けるのは彼らの偏った倫理観にてらして好ましくありません。そこで彼らは偵察のすえ、少し戻って山側の斜面に取り付きました。
藪へ入る
 監視所を気にしながらの薮こぎは脱北気分です。藪こぎで突破! photo by Jn
(photo by Jn)
 みな息をひそめて小声でルートを確認しあいますが、茂みはざわつきかなり音をたてていますし、しまいにはクシャミまでする始末。かなり楽しげですが本気でこっそりしてるつもりでしょうか?
 程なく尾根向こうの道へたどり着きましたがここにも問題がありました。無事通過薮越しに様子をうかがうとなにやら人工物が見えるやないですか。ここで茂みから道に出て監視所のまん前だったのでは目もあてられません。次のカーブまで薮の中を歩けば確実ですがそれは面倒なようです。
 結局、おずおずと森から道にでましたが、幸い監視所は見当りません。逆に監視所よりだいぶ奥まで来てたようで、現在いる有峰トンネルを経てカルデラへ入るルートと並行してるはずの湯川谷沿いにカルデラへ入るルートが見えません。ほんとは湯川谷沿いルートの方が立山温泉跡までの距離が短く高低差も少ないのですが、ルートの分岐は監視所の直後なので今更引き返せません。もっと言うと戻るのが面倒です。でもまあここからは見所も多いはずなので、多少高低差があってもそれほど苦にならないでしょう。探検家たちはトンネル目指して歩き出しました。
見所の柱状節理
 しかし監視所を通過できて油断してたのか、ちょっと会話に夢中になりすぎたようです。はっと気付いた時にはカーブの直ぐ向こうに車の気配が近づいてました。こう言う事態は不謹慎に脱北気分を高めます。最後尾の探検家はささっと道を横切り、丈の高い薮に飛び込みました。なかなか良い反応でしたが、ほかに飛び込みやすい茂みがなかったため他の仲間たちも同じ場所に続けて飛び込んで来て、薮の中でザックを背負った二人の下敷きになってしまいました。車が通り過ぎたあと「この蜘蛛の糸は僕のです。出てってください」と話ながら三人が茂みから這い出すと、残りのひとりバタやんは隠れもせず外で平然しています。「きみら丸見え。車の人ら笑てたで」とのこと。どうやら警戒しすぎのようです。そうなるともう車がきても隠れることなくもくもくと歩き続け、結局トンネルの入り口には昼過ぎに到着です。
トンネルに到着
 入り口で少し遅めの昼食をとり、探検家たちはトンネルへと入りました。
昼食準備 出口が彼方に見える photo by Jn
(photo by Jn)

 トンネルには照明が一切ありませんが、路面がきれいに舗装されてるので、背後の入り口から差し込む明かりと、遥か先の出口の輝きを頼りに進むことができました。しかしトンネルの中程まで来て背後から差す光が届かなくなると、小さな出口が目の前に灯された豆球のように見えて距離感がおかしくなってきます。
近付く出口  突然水音がして土砂降りの雨のように地下水が漏っているとこもあります。それでも明かりをつけずに歩き続けると出口は次第に大きくなり、ついには出口から青空がみえてきました。快晴やないですか。
出口にて

 よく考えたらトンネルに入る前から快晴でした。でも暗闇を歩いた時間の長さが探検家に空の青さを忘れさせ、何よりトンネルに入る前とガラリと変わった景色が全てを新鮮に感じさせるのです。突然カルデラの中に飛び出すトンネルは最高の演出、たまには遠回りもいいんじゃないのお手本のようです。なによりカルデラ内の景色自体がすごいんですが、景色を描写するとますます長くなるので辞めときます。こんど探検家たちに会ったとき直接話を聞いてください。
カルデラの景色

万里の長城?
 さてこのあたりは予定してたルートと違うので準備不足です。そのうえ地形図と登山地図とで道がかなりちがいます。もうこの辺はアレなんで一般の地図に正確に道をのせる意味があまりないのでしょう。しかしどちらにしても道なりに行けば温泉跡に着くようですし、舗装路が続いているので道を見失う心配もありません。
カルデラの道を歩く photo by Jn(photo by Jn)
 カルデラ博物館HPのカルデラ地図で見た天涯水という湧水も、愉快な看板が目印になりじきに見つかり順調です。
天涯の水 photo by Jn
 しかしこの辺りはアレなはずなのに、誰が見るのか不思議な看板です。
 ひとしきり涼んだのち先を目指すと、驚いたことに見失うはずのないと言った道が無くなってるやないですか。道がない.. photo by Jn(photo by Jn)
 枯れ谷に突き当たり道がザックリいかれてます。これが動く山とか叫ぶ川とかいうやつでしょう。
 しかたないので来た道を少し戻り下流へ向かう枝道を行きますが、これまた川に叫ばれて無くなってます。でもここは山が動かなかったのか道が河床と同じレベルなので渡ることが可能です。
道がいきなり川原になる photo by Jn





(photo by Jn)
 しかしGPSは地図上の道と全然違う軌跡を描いていてますし、ここからすんなり温泉跡にいけそうにもありません。探検家達はちょっと小高い丘にある「幸田文」の石碑で休憩がてら相談します。
 これは「ふみ」ってよむのとか、有名な人なんとか、どのくらい有名なら車で来れるんやろとか、立派な石やけど代金は幸田文もちかなとか、砂防工事してる会社もちやったら税金が流れたことにならんのかとか、幸田露伴は蟹工船かとかいうような、微妙に教養のなさそうな当面の問題を避けた会話をした後、探検家が遠く兎谷の出口を見つめて「まっすぐ行くか」と提案しました。
 が、その案はさっくり却下です。
 彼らのレベルではまっすぐ行くか、道なりに行くかしか選択肢がないので、それなら道なりに行くしかありません。そこで丘から舗装道路へ下りると、これまで裏側が見えてた看板に『この先温泉跡』て書いてるやないですか。ほんとに直進行軍しなくてよかったですね。

 ここからはさすが幸田文が通ったためか、砂防工事用の作業路とは思えないしっかりした舗装路面です。道がはっきりしたおかげで、もう迷う事もありません。彼らは途中で横道へそれて噴泉によって余裕なぞかましつつ、温泉跡へ到着しました。
噴泉への横道 photo by Jn
(photo by Jn)

噴泉

 温泉跡周辺は、あずま屋や手洗いなどかなり立派な施設が目白押しで、石碑もあちこちにあります。 立山温泉跡 photo by Jn
(photo by Jn)
 吊橋前の碑文によると、つい数年前には衆院議長が来たとのこと。舗装が綺麗なのはどうやら幸田文の力ではなかったようです。ちなみに手洗いは抜群に清潔で富山の『優良公衆トイレ賞』みたいな賞を受賞してました。お世話になったので「誰もこないんだから汚れようがない」とか言う突っ込みはよしときましょう。

 さて、あずま屋にサイトを設営して一息つくと、さっそく温泉と釣りです。
釣り橋 photo by Jn



(photo by Jn)
 吊り橋で対岸に渡ると川原に湧いてる温泉へ降りれます。石を積んで湯船を作り川の水とお湯を混ぜて完成。
川原の温泉
 なかなか良い出来の露天風呂です。でも探検家は1分ほどですぐに上がってしまいました。ここまで温泉目指して遥々やって来たのに、どうしてこんなに早風呂なのか理解できません。しかしまあ探検家はそれで満足なようです。

 お次は釣りです。川原から段丘に上がると泥鰌池まで木道が続いてます。この池は数十年前にニジマスが放流されたままで釣り人もいないので、無警戒に大物が釣れてもいいはずです。でも相変わらず探検家の釣り竿に魚がかかる気配はありません。
泥鰌池での釣り
 まあ食料調達に失敗するのは毎度のことですし、泥鰌池の景色は趣があり、夕暮れ時となるとあちこちで魚が跳ねるので退屈はしなかったようです。
 そんなこんなでカルデラを楽しんで、探検家達は眠りにつきました。

報告書へ<< >>3日目へ



トップ国内線到着立山新湯 詳細&写真 このページのトップへ▲