Ay Fond Kiss
(アルバム, '90)
BMGビクター, BVCP-8(日本盤)
BMGファンハウス, BVCM-37433(日本盤再発)
RCA, 74321 19371 2(英盤)


曲目Cover of Ay Fond Kiss

1. Jock O' Hazeldean
2. The Game of Love
3. Walking After Midnight
4. You Send Me
5. Trying Times
6. Mystery Train
7. Winter Rose
8. Do You Want to Know a Secret?
9. Allelujah (Live)
10. Cajun Band
11. Watching the Party
12. Ay Fond Kiss
13. Comedy Waltz (Live)
14. Clare (Live)
*13, 14 は日本盤再発で加えられたボーナストラック

歌詞については数曲はMark Nevinのオフィシャル・サイトに掲載されてます(DiscographyまたはSongsからどうぞ)。

クレジット
(ソングライティング)
 1. Walter Scott - Traditional arranged by Fairground Attraction
 2, 7, 9, 11. Mark E. Nevin
 3. Don Hecht and Alan Block
 4. Sam Cooke
 5. Donny Hathaway & Leroy Hutson
 6. Tom Parker and Sam Philips
 8. John Lennon & Paul McCartney
 10. Anthony Thistlethwaite
 12. Robbie Burns - Traditional arranged by Fairground Attraction
(プロデュース)
  Fairground Attraction and Kevin Moloney

解説
邦題はラスト・キッス。
Eddiの脱退が発表され解散が決まった後、'90の7月にリリースされたFAのラストアルバムだが、実質的にはそれまでに発表されたシングルに収録された曲を集めたコンピレーション盤であった。その中で10は唯一の未発表曲で、9は'89の5月に収録されたライブバージョン。

ただ当時入手が難しかったイギリス盤シングルや12インチにのみ収録された曲が多く、日本のファンにとっては”新作”的価値は確かにあった。だが楽しく印象的だった来日公演の思い出がまだ残っている時期に解散のニュースが入り、その後しばらくして忘れ形見としてリリースされたこのアルバムを素直な気持ちで聞けたファンは当時多くなかったのではないかと想像する。私もこのアルバムを実際に購入できるまで5年以上かかった。

Eddiのアカペラで始まる1のJock 0' Hazeldean、2のThe Game of LoveはClareのシングルに収録されていた曲で、アルバムFirst of A Million Kissesの収録曲とは一線を画する雰囲気を持つ。前者はほとんどギタロンの音だけをバックにEddiが歌っいて、後者はホーン類の他にタップダンスの音も途中に入り、クラシック映画の1シーンで歌われているかのよう。

3のWalking After Midnightはこのアルバムからシングルカットされたが、5のTrying Times、7のWinter RoseとともにもともとはA Smile in A WhisperのUK盤シングルに収録されていた。Trying TimesはRoberta Flackの曲のカバーで、ギタロンの音が生々しく響く。Winter Roseはちょっとワルツ的な曲調で、その歌詞も物悲しさを感じさせる。同じフレーズを反復する手法はEurythmicsのSweet Dreams (Are Made of This)にも通ずる。Do You Want to Know A Secret?はBeatlesの初期の曲のカバーで、Eddiの歌声とギターの音が可愛らしい。

4のYou Send Meは11のWatching the Party、エンディングを飾るタイトル曲とともにもともとはFind My Loveのシングルに収録されていた。これら3曲はFairground Attractionを語る時には絶対に外せないもので、The Collectionなどその他のコンピレーションアルバムでもほぼ収録されている。

6のMystery TrainはPerfectのUKシングルに収録されていたナンバーで、Elvis Presleyの最初期のヒットとして有名な曲のカバー。控えめなハンドクラップ(?)の音だけをバックにEddiがほとんどアカペラ状態で歌っている。なお日本盤(オリジナル)のライナーノーツによるとFairground Attractionは解散前にElvis Presleyへのトリビュートアルバム(Daryl Hall John Oates等が参加したThe Last Temptation of Elvis)に参加する予定があった(その後解散が決まり結局未参加)そうだが、そうだとすればこの曲とは別のElvisナンバーをカバーする予定だったのだろう。

9のAllelujahはFairground Attractionのナンバーの中でも人気の高い一曲なので、Walking After Midnightのシングルに収録されたComedy WaltzやClareでなく、この曲のライブバージョンが選ばれたのだろう。それら2曲と同じく'89年5月のマンチェスターでのライブから取られた音源のようだ。Graham Hendersonによるアコーディオンがいい雰囲気を出している。

10のCajun Bandは全くの新曲で、たびたび共演している元WaterboysのAnthony Thistlethwaite(演奏と歌にも参加)による曲。録音自体は'88年の1月ということだから、眠っていた曲ということになるのだろう。後のWonderboyにも通ずる、酔っ払いがパブで合唱したかのような楽しい雰囲気を持つ。最後はEddiのスキャットで終わる。

The First of A Million Kissesほどの重要性はないが、Ay Fond Kiss などThe First〜に未収録ながらも優れた曲を含むこのアルバムは、ベスト的なコンピレーションを1枚買うことを考える前に考慮に入れておくべき一枚だろう。

(日本盤再発に際しての追記)
発売以来一度も再発されることなく、でもEddiのソロアルバムのように廃盤にされることもなく(日本では3000円という時代遅れの値段で)売られ続けていたこのアルバムだが、来日公演ライブを収めたライブ盤の発売に合わせて遂に(日本でのみだが)再発されたのは、何はさておき喜ばしい。今回の再発は他のアルバム同様、K2 24bit Masteringによってリマスターされている他に、オリジナル版とは異なるライターによる新しいライナーノーツが付いている。

リマスターの効果は確実に感じられるもので、レベルの大きさもあって、聞き比べるまでもなく音の良さは感じられるだろう。実際オリジナル版と比べてみると、特に違いを感じられるのはギタロンとアコーディオンで、ギタロンの低音は全般的にふくよかさが増しており、Walking After Midnightなどでのアコーディオンの音はより軽快に響く。またThe Game of Loveでのタップダンスの音のリアルさは、Michael JacksonのBlack or Whiteでのノックの音(をヘッドフォンで聞いたとき)を想起させるほど(Qサウンドといって当時話題になりました)。どの曲も新鮮さを持って耳に飛び込んでくるであろうことは間違いないが、なんといっても違いが一番感じられる曲はAllelujahのライブバージョンで、その場にいるような錯覚を起こさせてくれるほど生々しい。このアルバムの代わりに他のコンピレーション盤で済ませた人も少なくないと想像されるが、この一曲のためだけでも買い直す価値はあると言っておきます。ボーナストラックとして収録された2曲はいずれも既発曲だが、The First of A Million Kissesとこのアルバムの”正規盤”2枚ですべての曲が手に入るようになったという意味は大きい。

沼崎敦子氏による思い入れたっぷりのライナーノーツには、来日時のEddiとMarkへのインタビューから、これまで紹介されてこなかったコメントも載っていて、読む価値があるものです。

Discographyに戻る

トップページに戻る