Love Is the Way
(アルバム, '09)
Rough Trade, RTRADCDX454(英盤)
Rough Trade, RT-454-2(米盤)


曲目Cover of Peacetime
1. Dragonflies
2. Silent Bells
3. New York City
4. Dandelion
5. Love Is the Way
6. Sweet Mountain of Love
7. Never Going Back Again (Queen of Scots)
8. Over It Now
9. Fallen Twice
10. It's Magic
11. Roses
12. My Shining Star
13. I Won't Stand in Your Way

クレジット
(ソングライティング)
 1, 2, 4. Boo Hewerdine
 3, 13. John Douglas
 5. Declan O'Rourke
 6. Brian Wilson & David Sandler
 7. Lindsey Buckingham (Never Going Back Again) / Eddi Reader (Queen of Scots)
 8. Eddi Reader & Boo Hewerdine
 9. Jack Maher
 10. Sammy Cahn & Jule Styne
 11. Eddi Reader & John Douglas
 12. Sandy Wright
(プロデュース)
 Eddi Reader

解説
スタジオ録音アルバムとしてはPeacetime以来約2年ぶりとなるソロ9作目。このアルバムが製作された経緯についてはEddi自身がMySpaceに詳しく書いているが、当初ベスト盤用の新曲をレコーディングするつもりでスタジオ入りしたところとても調子良く進んだため、その勢いで新作として製作されたらしい。イギリスでは4月13日に正式リリースされたが、MySpaceでこのアルバムのリリースがアナウンスされた後に行われた昨年秋以降のイギリス/アイルランドツアーのライブ会場では、レーベルの了承のもと、簡易パッケージのものが先行して販売されていた。ただし、そのCDからはRosesが新録音(新アレンジ?)のものに差し替えられているらしい。

音は基本的にアコースティックだが、久しぶりの参加となるTeddy Borrowieckiによるキーボード等や、Teddyがアレンジしたストリングスが入っていたりするため音数は多く、セカンドアルバムを思わせるくらい華やかな曲調の曲が多い(久しぶりにワルツ調の曲も多いです)こともあって、全体的なトーンは明るい。これまでEddiはレコーディングとライブではモードを切り替えて歌い方を意図的に変えているように感じることも多かったが、このアルバムでのEddiはこれまで以上にリラックスした軽やかな歌声を聞かせてくれていて、屋外で歌っているかのようなライブ感に溢れる曲も多い。こういったことからも、レコーディングがかなり気分よく行われたのではないかと想像できる。

流麗なメロディに乗ってEddiが清らかな歌声を聞かせるDragonfliesやNew York CityはこれまでのEddiのイメージに一番近い曲だが、前作のMuddy Waterあたりと比べてもEddiの歌声はよりナチュラルで美しい。Sweet Mountain of Loveは途中ドラマティックな展開となる今までなかったような曲だが、Eddiは丁寧にじっくりと歌い込んでいて、Eddi自身による効果的なバックボーカル(Eddiはバックボーカルとしても超一流であることがあらためてよくわかる)もあって、アルバム中でも印象的な曲のひとつとなっている。遊び心が感じられるアレンジのDandelion、Never Going Back Againは他の曲よりもスタジオで作り込まれた感があるが、バンドメンバーもEddiも作るプロセスを楽しみながら作ったであろうことが想像できて、いいアクセントになっている。Eddiの子供達や姪、John Douglasの兄弟でバンド仲間のStephen Douglas、そしてJohn McCuskerなどの交流のあるミュージシャンなどが参加して家族総出で作ったと言えそうなRosesは、やわらかな日差しのもとでEddiが自然と歌いだしたような光景を連想させる(ちなみにこの曲のビデオクリップはまさにそのようなイメージで作られてます)キャッチーな曲。この曲でのEddiのボーカルは歌う喜びに溢れていて、それをスタジオで丁寧に仕上げたであろうことが感じられる。アップテンポの曲としてはこれまでで最高の曲となっていると思う。そして、タイトル曲のLove Is the Wayと最後を飾る I Won't Stand in Your Wayは、Rosesと並んでこのアルバムを象徴するナンバー。Love Is the WayでのEddiの歌声には、これまでのCDで聞かれたのとは明らかに異なるエモーショナルさが感じられ、アルバムの中でも最もライブに近いフィールを持った曲だろう。バックの演奏も、シンプルでありながらも味があって、ライブでの演奏風景が目に浮かぶようだ。曲のテーマも含めて、アルバムタイトル曲にふさわしい出来と言える。I Won't Stand in Your Wayでは、Eddiは力みのまったく感じられない、これ以上ないくらい自然な歌声を聴かせてくれる。実際には絶妙にコントロールされているのに、「歌」を聞いていることをつい忘れてしまうくらい「歌って」いないその歌声は、静かに、そして深く心に響いてくる。バックボーカルでの歌唱も含め、Eddiがこれまで培ってきた歌唱力を存分に発揮した、Eddiのキャリアの中でも1、2を争う名唱だと思う。バックの演奏もEddiの歌を見事に引き立てているが、特に終盤に向かってすべての楽器の音がEddiの歌声と一体となっていくさまは素晴らしい。余韻を残すかのようにEddiの歌が終わってから1分強続くインストパートも、この曲の魅力を高めている(Sophie Zelmaniの名曲、Fireが連想されます)。

セカンドアルバムやAngels & Electricityと同じか、またはそれ以上に聞きやすいのに、Eddiの持ち味がふんだんに詰まっていて、これまでのEddiのキャリアがあるからこそ到達できたアルバムだと言える。これからEddiを聞き始める人にも薦められるアルバムとなっていると思う。

最後に、収録されているカバー曲について触れておく。Sweet Mountain of LoveはMarilyn Wilson(Brian Wilsonの最初の妻でWilson Philipsの二人の母らしい)とその姉のDiane Rovellのユニット、American Springの'72年のアルバムにBrian Wilsonが提供した曲(原題は"Sweet Mountain")のカバー。Never Going Back AgainはColin ReidのアルバムでもEddiのボーカルでカバーされていた、Fleetwood Macの名曲。It's MagicはDoris Dayが1948年の映画デビュー作、"Romance on the High Seas"で歌った(その他多くのアーティストもカバーしているらしい)歌のカバー。My Shining StarはBoo Hewerdine, John McCusker, Kris DreverなどEddi周辺のアーティストが多く所属しているNavigator Recordsに所属するSandy Wrightという男性アーティストの曲のカバーで、オリジナルは同レーベルのコンピレーションアルバムに収録されている(でもアルバムデビューはしていないみたい)。

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