Eddi Reader @ 東京・Liquidroom (May 26, '07)


東京最終公演は、思わぬハプニングがあったものの、最終的には今回のツアーを締めくくるにふさわしい最高のコンサートとなりました。

今日は土曜日ということもあってか開場前の集まりも良く、開演までの間に順調にフロアが人で埋まっていって、開演時にはギュウギュウ詰めの一歩手前くらい(ちょっと位置を変えようとする人と触るくらい)は入っていたでしょうか。それだけに観客の反応は終始良好でした。

今日も8時を12分ほど過ぎてEddi達が登場。EddiはTokyo FMの番組出演時と同じと思われるベージュ地で花柄のワンピースを着ていました(眼鏡はなし)。Tokyo FMの番組でケルティックスカートを日本に持ってきたという話が出たからでしょうか、ベースのKevinはこれまでのジーンズではなくケルティックスカートを纏って登場してました。開演して間もない頃から音響のセッティングが悪いのか時折ハウリングが起こっていて、Eddiはそれを気にして1曲目が終わった後にはステージ左のPAの方になにやら言ってました。その後も音響の調子は時々悪くなるものの小康状態を保つ中で演奏は続いていき、前半はこれまでとほぼ同様の展開だったのだけど、6曲目に今回のツアーでは初めてFollow My Tearsが演奏されました。この直前に演奏されたPerfectまでは音響の悪さ(ハウリングだけでなくEddiの声があまりピックアップされていない感じもあった)にEddiがかなりナーバスになっているのがわかったのだけど、Eddiのアカペラでのコーラスの説明からそのまま演奏されたこの曲では、Eddi自身がこの曲を気に入っていることがあらためてわかるとても丁寧な歌声を聴かせてくれ、演奏後はふわふわしたいい雰囲気になりました。

でも残念なことに、次のBrose and Butterの演奏中にその雰囲気はスポイルされてしまいました。音響の状態が最悪になってしまったのです。節回しが早くてただでさえ難しい曲なのに歌に集中できなくなったためか、Eddiは声の調子まで狂わされて、曲のテンポに遅れたり、高音部を思うようには出せなくなってしまいました。音響の悪さと自分がうまく歌えないことの両方にいらついたのか、力まかせのスキャットやシャウトでごまかす場面(これに気づいたBooはEddiの方を見てた)がよく見られるようになり、見ているこっちもちょっと心配になるような雰囲気になってしまいました。それでもなんとか気を取り直して演奏されたPrisonsとHoneychildはまあまあの出来だったのだけど、Honeychildで大阪、名古屋と違ってギターを弾きながら歌っていたのは歌だけに専念しないようにすることで気を紛らわせようとしていたようにも思いました。そして運命の瞬間が訪れます。次に演奏されたMuddy WaterではまたHeidi Talbotを呼んで演奏が始められたのだけど、Heidiの最初のパートでもうごまかしが効かないくらいひどいハウリングが発生して、これに怒ったEddiは演奏を中断させてしまいました。ちょっと配線などをいじってすぐにやり直そうとしたのだけど、状況は変わらずでまたすぐに中断。Eddiはもうこのままでは進められないと考えたようで、バンドメンバーと一緒にステージ上の配線を徹底的に確認していました。戸惑う観客を前に、サービス精神旺盛なJohn McCuskerが即興でAlan Kellyと演奏を始めたり(一回一回は短かったけど、、)、Eddiが中村俊輔の歌を歌ったりして場をつないで4、5分ほども経ったころ、ようやく原因が特定できたのか、演奏が再開されました。この時間がいい気分転換となったのか、この後のEddiは吹っ切れたように演奏に集中して、最高の歌声を聴かせてくれました(Brose and Butterで声が出なかったのは本当に喉の調子がおかしくなったからではないということも証明されました)。雨降って地固まるというやつですね。でも照明もお粗末だったし、Eddiの来日公演でこの場所が使われることはもう二度とないでしょう。後半以降はすべての曲が素晴らしく、会場の反応も含め、今回のツアーはもちろんこれまでの公演と比べても最高の出来だったと思います。

あらためて演奏されたMuddy WaterとAye Waukin-OでHeidi Talbotが共演した後、1曲おいてEddiがステージの袖に向かって突然"Hide!"と叫びました。Heidiは「ハイディ」じゃなくって「ヒーディ」だったっけ、なんて思っていたらそこに登場したのは前回のツアーで大阪(1日目)と福岡(1日目)でバンドと共演したNALUさん(。今回は前回と違って正式なゲストとして招かれていたようで、NALUさんのウクレレによるイントロからYou Belong to Me(前回のツアーの名古屋(2日目)ではEddiがウクレレを弾いて演奏されました)が演奏されました。Eddi含めバンドメンバー全員がNALUさんの引き立て役に回ったような状態の中でNALUさんは本当に楽しそうに演奏していて、それを見ている観客もNALUさんを祝福するように盛り上がりました。引き続きNALUさんが演奏に加わった次のFind My Loveでは会場中が一体となり、とても幸せな空気が満ちあふれました。

Galileoで締めくくられた本編も後半はかなりの出来だったのだけど、アンコールでEddiはさらに一段上のパフォーマンスを見せてくれました。最初のHummingbirdだけをとってもこれまでで最高レベルの演奏だと思ったのだけど、本当に驚いたのはその後です。ふとそういう気分になったのでしょう、EddiがThe Wind Knows My Nameをやりたいと言い出したのです。他のメンバーにこの曲のキーは?と聞いていたのだけど、当然ほかのメンバーがこの曲を知っているわけはなく、Eddiはギターを適当にチューニングして歌い始めました。この曲を知っている唯一のメンバーであるRoy Doddsがそれに絡んで演奏が進んでいくうちにJohnやAlan, Kevinといったメンバー達も演奏に参加し始め、Eddiはそれに乗って低い声でソロではおそらく初めて演奏されるこの曲を歌いきりました。ほかの曲でもRoyがいるといないとでは大違いだと思うのだけど、Royがいなければこの曲が演奏される可能性はまったくなかったと思うので、今回Royが一緒に来日してくれて本当に良かったとあらためて思いました。この曲の後半ではEddiはRoyの方を向いてギターを演奏し、RoyもEddiを見守るような優しい表情を浮かべながら演奏していて、二人の絆の強さも感じることが出来ました。

Willie Stewart/Molly Rankinを演奏してEddi達が退場後、比較的大きな音でBGMが流れ始めたのだけど、初日のようにすんなりと引き下がることなくさらなる演奏を求める手拍子が続き、3分ほど経ったところでめでたくEddiとRoyが再登場してThe Moon is Mineが演奏されました。正直な話、東京でこの曲が聞けなかったらちょっと恥ずかしいかもと思っていたので、これは嬉しかったです。ここらへんで会場の盛り上がりも最高潮に達していたのですが、Eddiが突然アカペラでLa Vie En Roseを歌ってさらにヒートアップさせたところで最後のAe Fond Kissが演奏されました。目を閉じたまま穏やかに、でも深い感情を織り込んで歌うEddiの歌声には会場中を包み込むような包容力があり、心を揺さぶられずにはいられませんでした。文句なしにこの日最高のパフォーマンスです。この曲を歌うEddiの姿と歌声からは、この日の観客への感謝が表現されているようにも思いました。こちらからも、意図に反するハプニングがあったにもかかわらず最高の演奏をしてくれたEddi達にあらためて感謝したいと思います。

(セットリスト)
 1. Baron's Heir + Sadenia's Air
 2. Patience of Angels
 3. Allelujah
 4. Peacetime
 5. Perfect
 6. Follow My Tears
 7. Brose and Butter
 8. Prisons
 9. Honeychild
 10. Muddy Water
 11. Aye Waukin-O
 12. Mary and the Soldier
 13. You Belong to Me
 14. Find My Love
 15. Galileo
 (Encore 1)
 16. Hummingbird
 17. The Wind Knows My Name
 18. Willie Stewart/Molly Rankin
 (Encore 2)
 19. The Moon is Mine
 20. La Vie En Rose
 21. Ae Fond Kiss
 (演奏時間約2時間)


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