Eddi Reader : '07 Winter UK Tour
(February 10 @ Shepherds Bush Empire, London)
UKツアーのロンドン公演を見てきました。今回のツアーは当初は見に行く予定ではなかったのだけど、このツアーに微妙にかかる感じでLeona NaessのUKツアー(※一般的にはRay Lamontagneのツアーらしいけど、NY以外に在住のLeonaのファンにとってはLeonaのツアーです)が組まれていたため、LeonaもEddiも見られて移動も最小限ですむロンドン公演を見に行く事にしたのでした。
今回の前座はRoddy Hartという若い男性アーティストで、普段はバンドでライブを行うようですが、今回はギタリストと二人でアコースティックで演奏してました。全部で7曲演奏したのですが、5曲目ではEddiが登場して、ハーモニーをつけてました。
Eddi は9時を過ぎた頃に登場、バンドは一昨年のUKツアー(こちら参照)と同じメンバー(Roy Dodds, Boo Hewerdine, John McCusker, Ian Carr, Alan Kelly)に、ダブルベースにはKevin McGuireという人が加わっていました。1曲目のMedicineではRoy, Boo, Ianだけが登場し、2曲目からはフルバンドでの演奏となりました。今回のツアーはニューアルバム発売直後ということもあってPeacetimeからの曲が大半を占めるものとなってました。以下がセットリストです。
(セットリスト ー ロンドン・Shepherds Bush Empire公演)
1. Medicine
2. Bell, Book & Candle
3. Muddy Water
4. Baron's Heir + Sadenia's Air
5. Mary and the Soldier
6. Should I Pray?
7. The Afton
8. Prisons
9. Charlie is My Darling
10. Leezie Lindsay
11. Galileo
12. Moon on the Rain
13. Safe as Houses
14. Kiteflyer's Hill
15. Aye Waukin-O
16. Peacetime
(Encore 1)
17. Allelujah
18. Willie Stewart/Molly Rankin
(Encore 2)
19. John Anderson My Jo
20. Wild Mountainside (with snippets of some FA songs)
21. Clare
本編だけで1時間40分弱、2回のアンコール含めて2時間10分ほどのコンサートでした。
全体的な感想としては、まずなんといっても新作の曲がどれもCDで聞くのと大違いで、躍動感や深みが増していました。アルバムよりもずっとソウルフルだったEddi の歌声やJohn McCuskerのホイッスルなどの演奏が絶妙なアクセントとなっていたことも大きいと思いますが、なんといっても最大の理由はRoy Doddsがいたからであることは疑う余地がありません。今回のアルバムは、前作同様トラディショナルナンバーが数曲収録されていて全体的にフォーキーで穏やかな曲が多いですが、ライブでRoy Doddsが加わることでPrisonsやPeacetime, The Aftonといった曲は格段に明るく華やかになり、じっくり聞かせるナンバー(Safe as HousesとかGalileoとか)は奥行きのある味わい深い演奏となっていたと思います。今度来日するときにはぜひRoy Doddsも一緒でお願いします。また、John McCuskerの貢献度が以前より大きくなっていたことも特筆できます。前回のツアーのように自曲を演奏することこそなかったですが、彼がバンドの演奏全体のバランスを取っていることは見ていて明らかでした。Booは今回裏方に徹していて、ほとんどずっと椅子に座ってややうつむきながらひたすらギターを演奏していたという感じでしたが、2回のアンコールのそれぞれ最後の曲では立ち上がって演奏する場面も見られました。Eddi は今回ほとんどの曲でギターやウクレレを弾きながら歌っていて、Charlie Is My Darlingでは以前だとIan Carrに任せていたイントロを自分で弾いていたし、Willie Stewartではスコティッシュ・ダンスをするのではなくしっかりギターを演奏してたりで、以前よりも歌う事以外への意識が高かったです。また、'04の来日公演時はまだEddiの曲のレパートリーが少なかったIan CarrやAlan Kellyが、ツアーを重ねた事でEddi のバンドのメンバーらしさが増していたのにも触れない訳にはいきません。以前ならその場のリクエストに応えるような状況になると演奏に加わらないという場面も見られましたが、今回はMoon on the Rainのような普段は演奏しない昔の曲をいきなり演奏しようというときでもまったく問題ありませんでしたし、毎日変わっているに違いないEddiのアドリブにも柔軟に対処していました。こういったことが積み重なって、今回のコンサート全体の完成度はとても高かったと思います。
Eddiの歌声は、ずっと立ちっぱなしで歌っていたこともあってか、全般的にとてもソウルフルでした。そんな中でもEddiが「ウォームアップとして」と言って演奏した最初の2曲、Medicine(意外な選曲でちょっと驚いた)とBell, Book & Candleは、実際その後歌われた曲とはちょっと違う感じの歌い方で、自分の喉の調子を確かめるかのように、丁寧にスムーズに歌うことを心がけていたように思えました。もちろん、これはこれで良かったです。
開始早々の"Perfect!"というリクエストの声にジョークで切り返したところなどに、今回は新作のツアーであるという意識をEddiが強く持っていることを感じさせてくれましたが、それでも後半以降はこれまでのレパートリーから何曲かをリクエストで、何曲かは自主的にサービスで歌ってくれました。2回目のアンコールで歌われたWild Mountainsideの最後の方では、The Moon is MineやPerfectといったFairground Attractionの曲の一部などを織り込んで歌うということもありました。その中で一番嬉しかったのは、言うまでもなく長年ライブで聞ける日を待ち焦がれていたMoon on the Rain(ソロになってからのコンサートでは初めてフルバージョンで聞くことができました)ですが、最大の収穫と言えるのはアンコール1回目で最初に歌ってくれたJohn Anderson My Joです。この曲はリクエストの声がたくさん上がっている中からEddi がピックアップしてアカペラで一人歌いきったのですが、一人でアカペラで歌っているとは思えないほどテンポ、声量等が完璧にコントロールされていて、歌い終わった後の拍手の大きさからも多くの人が感銘を受けていた事がわかりました。前回の来日公演で聞きたいと思っていた曲の一つという事もあり、個人的にはこの曲がこの日のベストトラックです。Moon on the Rainは、、、Eddiはあえてやや抑えめに歌っていたと思いますが、それがかえってこの曲が本来持つセンチメンタルな雰囲気を引き出していて、バンドの演奏ともどもとっても良かったです。日本に来たときも演奏してくれないかな。。。
実はこの日のEddiは途中で歌詞を何度か忘れたり、高音部(特にWild Mountainsideのコーラス部とか)をやや出しにくそうにしていたり、声も少しハスキーだったりで完璧な出来ではありませんでした。これは本人も自覚していたようで、途中で「こんなとこで歌ってるよりも皿洗いしてるべきかもね」なんて言ったりもしてました。でも、うまくいかないと思ったときは瞬時に歌い方を変えてリカバリーしていたし、以前よりもさらに説得力を増したと思われる歌声に思わずじっと聞き入ってしまうこともしばしばで、Eddi はいまだに進化し続けていると感じさせてくれました。そしてなにより、終始明るい表情で観客とのコミュニケーションや演奏を心から楽しんでいるように見えたのが良かったです。1回しか見られませんでしたが、おととしのフジロック以来約1年半ぶりに見たコンサートは、次の来日への期待を大いに高めてくれるものでした。
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