Anything Box


*'03 Favorite Albums
1. Leona Naess (Leona Naess)
2. Sings the Songs of Robert Burns (Eddi Reader)
3. Beautiful Collision (Bic Runga)
4. Say You Will (Fleetwood Mac)
 以下特に順番無し:
・Dandelion (Claire Holley)
・Gaze (The Beautiful South)
・The Evening of My Best Day (Rickie Lee Jones)
・Do It for Love (Daryl Hall John Oates)
・Volcano (Edie Brickell)
・Avalanche (Thea Gilmore)

*番外
*特別賞
*今年印象に残ったライブ

今年はHall & OatesやFleetwood Macを始めとして、個人的に重要なアーティストの新作がこれまでにないほど相次いでリリースされたほか、新しいアーティストとの出会いもあって、音楽面に関してはとても面白かった一年でした(グラミーのノミネーションとか、ヒットチャート的には駄目だけどね)。正直な話、秋のリリースラッシュ以降はあまりまともに聞けてないのだけど、それでも(選ぶ苦労は別として)10枚あげるのには苦労しません。

Sophie Zelmaniの新作(CDではなかった、、、)が年末になんとか間に合ったのだけど、これはSiljeの新作(まだ来てないし)とともに、来年に回すことにします。

1. Leona Naess (Leona Naess)
前作と一転して、ミディアムテンポでメロウな雰囲気の曲で統一されたアルバム。前作でのレトロなグルーブにLeonaの声が乗っかるというのもある種ミスマッチな感覚で面白かったが、やはりLeonaの持ち味はミディアム〜スローな曲で最大限に発揮される。パートナーだったRyan Adamsのプロデューサー、Ethan Johnsを迎えて、これまでよりぐっとルーツロック寄りのサウンドで、自分の思う通りに作ったであろうことが実感できる素晴らしい出来。3作目となる今作で、彼女独自の世界の確立に成功している。
時々無意識的に表れるボーカルの揺れは、もうEdie Brickellとの比較を必要としない個性を持っており、とても魅力的。才能の豊かさはNorah Jonesにも決して劣りません。国内盤が発売されないのが信じ難い。
ベスト・トラック:Christmas

2. Sings the Songs of Robert Burns (Eddi Reader)
Eddiが敬愛する詩人Robert Burnsの作品を取り上げた「トラッド」アルバムだが、このアルバムで聞かれる音楽は「トラッド」という言葉から連想するような堅苦しいものではなく、硬軟取り混ぜて、様々な表情を見せる。これまでのEddiとの接点となるバラード群を間に挿んでいることも、聞きやすくすることに成功した一因だろう。Boo Hewerdine, John McCuskerを始めとしたメンバーやEddiの地元グラスゴーのオーケストラのサポートも光る。「蛍の光」の原曲であるAuld Lang Syneや、Fairground Attraction時代からのレパートリーであるAe Fond Kissの再録に、いまのEddiの包み込むような豊かな表現力を見る。
ベスト・トラック:Ae Fond Kiss

3. Beautiful Collision (Bic Runga)
今年最大の収穫と言えるアルバム(海外でのリリースは去年だけど、、)。Amazon.comで検索をかけると、たびたびこの人がお薦めとしてあげられてために去年からずっと気になってて、今年になってから購入。最初のうちはすっと通り過ぎていく感じであまり印象に残らなかったのだけど、何回か聞いているうちに、その主張しすぎないボーカルに惹かれるようになってました(Norah Jonesと同じ感じ)。
マルチ・インストゥルメンタリストでセルフ・プロデュースというのはSherylと共通しているが、音楽的にはむしろSophie Zelmaniに近く、ミディアムテンポでドリーミーな曲調が多い。歌声はCardigansのNinaに似ているが、その歌い方はメロディに寄り添うように適度に抑制されている(だからこそ、しっかりと歌っていると言える)。ところどころ使われるストリングスやハーモニカなどの楽器の使い方も効果的で、自分の目指している音をよく理解して作っていると感じさせる。
ベスト・トラック:She Left on a Monday

4. Say You Will (Fleetwood Mac)
The Danceから6年待たされた、Fleetwood Macの復活作。Christineが抜けたためにLindseyとStevieの二人を前面に出す形となって、これまで以上に二人の個性が色濃く出た曲が並んだ。「無駄に長い」とか、「詰め込み過ぎ」なんて批判も聞こえてくるけど、むしろその逆で、Lindsey, Stevieのいずれの曲もソロの匂いを感じさせながらもFleetwood Macらしさを感じさせるレベルに昇華されている、とても密度の濃いアルバムです(だから聞き通すには根気がいる)。(このメンバーで)キャリア30年近いバンドが"Come"とか"Murrow Turning Over in His Grave"のような実験的な音を作るということも驚くべきことだけど、そういった曲をライブで再現(というかそれ以上に)できるのは高い演奏力とプロ意識の賜物だろう。今年は長年の夢がかなって彼らのライブを4回も見ることが出来たし(それでもまた見たいぞ!)、今年の個人的なMVPは間違いなく彼らです。
ベスト・トラック:Goodbye Baby

以下特に順位なし。
・Dandelion (Claire Holley)
今年は意識的に未知のアーティスト(ほとんど女性アーティスト、、)を聞くように心がけたが、Bic Rungaと並んで、今年出会ったアーティストの中で一番印象的だったのはこの人。アメリカ旅行中に偶然見かけたとき、惹き付けられたのはジャケットのJodie Fosterを思わせる容姿だが、現地滞在中に試聴してみて、中身もジャケットに負けない魅力があるとすぐにわかった。
1曲目が特に象徴的だが、フォークロック〜カントリー調の曲が多く、声はSherylにいくぶん似てるので、あまり詳しくない人が聞いたら間違えるかもしれない。アコースティックでシンプルな爽快感あふれるアレンジで、自分の声をうまく活かしている。
ベスト・トラック:Sugar

・Gaze (The Beautiful South)
新女性メンバーAlison 'Lady' Wheelerを迎えての3年ぶりとなる新作。ここ2作ではビートを利かせたファンキーでバウンシーな曲調が多く見られたが、このアルバムではまたメロディ重視の路線に回帰している。とはいっても、もちろん単純に昔に戻った訳ではなくて、リズミカルな要素を隠し味として、メロディ、ハーモニーを活かした親しみやすい音楽を作り上げている。3人のシンガーにさらにバックコーラスまで加えたボーカルアンサンブルはこれまで以上に多彩で、聞いててとても楽しい。ここ数作では出番の少なかったDave Hemmingwayが大活躍しているが、これはAlisonが入ったことでボーカルの組み合わせに選択肢が増えたのがもたらした効果だろう。彼らほど”歌”の楽しさを伝えてくれるアーティストは、現在ほかにほとんどいません(※例外は言うまでもなくHall & Oates、、)。
遂に11年ぶりに彼らの素晴らしいライブ(Fleetwood Macと並んで今年のベストです)を見ることが出来たのも、今年の忘れ難い思い出です。
ベスト・トラック:Life Vs. The Lifeless

・The Evening of My Best Day (Rickie Lee Jones)
自作曲によるアルバムとしては6年ぶりとなるそうだが、その間にもIt's Like Thisのような充実した作品を発表してくれていたので、懐かしいという感じはない。音楽的にはIt's Like Thisの路線をさらに押し進めたようなジャジーなものが多いが、一曲の中でもいろいろな変化がつけられていて、Rickieの変幻自在の歌声も様々な表情を見せてくれる。聞いていてとても心地よいのだが、歌詞は現在のアメリカ政治をやり玉にあげるなど、結構辛辣だったりして、一筋縄でいかないところが頼もしい。かなりの力作。
ベスト・トラック:The Evening of My Best Day

・Do It for Love (Daryl Hall John Oates)
待ちに待った待望の新作は、アコースティックギターをアクセントに、一緒に歌いたくなるような、メロディと二人の歌声の魅力を前面に押し出した作品となった。彼らの意思表明ともとれる、力強さを感じるジャケットもいい。前半はとても充実していい出来なのだけど、それと対照的に、中盤に「らしさ」があまり感じられない普通のMORナンバーがあるのが残念(Intuitionのように遊び心たっぷりの魅力的な曲もあるのだけど)。とは言え、Forever for YouやHeartbreak Timeのように、いまのDarylだからこそ歌える、魅力溢れるナンバーが収録されているのが嬉しい。いまから次のアルバムが待ち遠しい。
ベスト・トラック:Forever for You

・Volcano (Edie Brickell)
Fleetwood Mac以上に奇跡的な、まさかの10年ぶりの復活作。Leona Naess, Rickie Lee Jonesの最新作が出た年(しかも同じような時期)にアルバムが出るとは、なんかの巡り合わせでしょうか。
プロデューサーにCharlie Sextonを迎えて、ルーツに戻ったような、アーシーで懐かしさも感じさせるようなサウンドを聴かせる。グループ時代のようなフリースタイルな歌い方はさすがにあまり見られないが、特筆すべき点のなかった前作とは比較にならないくらい歌声は伸びやかで、落ち着いた歌唱の中にも力強さが時々顔を覗かせるのが好ましい。これを契機に継続的な活動を望みたい。
ベスト・トラック:Take A Walk

・Avalanche (Thea Gilmore)
毎年アルバムをリリースしている多作家なThea Gilmoreの最新作。シングル曲の印象から、今回はこれまでよりだいぶコマーシャル路線に走ったかとも思ったけど、アルバムを聞いてみると音楽に対する誠実な姿勢はこれまで通りで、むしろ吹っ切れたような感じでいい意味で力が抜けている。
イギリスではだいぶ評価が高くなってきたけど、日本ではまだアルバムが出ていないのが残念。Norah Jones, Leona Naessに並ぶ才能の持ち主です。
ベスト・トラック:Rags And Bones

番外
・Neil Young
今年は新作Greendaleの発表のほか、過去の作品の再発、来日公演と盛りだくさんで、今年関連アルバムを聴いた時間が一番長いのは、実はこの人かもしれません。ライブでは、Greendaleの全曲をミュージカル仕立てにした前半に、衰えることのない意欲と力強さを感じました。

特別賞
・Kawasaki Live in Japan (Fairground Attraction)
記憶の中にのみ留められていたコンサートが14年の月日を経てリリースされた、Fairground Attraction待望の公式ライブ音源。「幻のセカンドアルバム」に収録予定だった曲がEddiのボーカルで聞けるというのも大きいが、それ以上に、たった一枚のアルバムで音楽史に永遠にその名を刻んだ彼らの生の姿を再体験(追体験)できるということ自体、とても貴重なことだ。ここに収められているEddiのはつらつとした歌声、Markの軽快なギター、そしてバンドメンバーの堅実で味わい深い演奏のすべてが、Fairground Attractionというグループの魅力を物語っている。日本ではこのアルバムのリリースに合わせて遂にFairground Attractionのアルバムがリマスターされたことも特筆に値する。

・Live in Concert (Daryl Hall John Oates)
遂に出た、現在のHall & Oatesの演奏を収めたライブDVD(おまけCD付き)。通常のコンサートとやや異なる曲順、選曲となっていることに加え、久しぶりにUnpluggedスタイルの演奏もあったりして、文句なしに楽しめる。音楽に対しての愛情がたっぷりと感じられる、歌心溢れるDarylの熱い歌は本当に素晴らしい。ここでの演奏を見れば、彼らがまぎれもなく現役で、クリエイティビティの面で現在何度目かのピークを迎えていることが理解できるだろう。コンサートとは別に収録されているインタビューでの淀みない受け答えと、(特にJohnの)含蓄のある発言は、Daryl & Johnが日頃から真剣に音楽に接していることが実感できるもので、ファンであることの幸せを感じることが出来る。
今年の来日公演に行った人はもちろん、行かなかった人でも楽しめることを保証します。


*今年印象に残ったライブ
1. Fleetwood Mac (7/11, 12@LA & 11/22@Newcastle-upon-tyne)
1. The Beautiful South (11/20@London)
3. Daryl Hall John Oates (5/25, 28@東京国際フォーラム)



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