Eddi Reader @ ラフォーレミュージアム六本木 (July 4, '04)
2年3ヶ月ぶりとなったひさびさの来日公演の初日、東京公演は前回と同じラフォーレミュージアム六本木です。Eddiがソロになってから、これまで東京では必ず2回以上の公演があったのに、今回は初めて1回だけとなってしまって少し残念です。でも、他の場所はすべてブルーノートで1日2回公演のために1回1回が短くなるはずなので、そういう意味では通常のコンサート会場でフルセットを見られる東京は、考えようによっては恵まれているのかもしれません。
開演前の集まり具合はわりと良かったようで、魔が差して今回もe+のプレオーダーで取ってしまった私は231番ととても悪い番号だったために、入場した時にはすでに前の4〜5列はどこのブロックも埋まっていました。真ん中のブロックはもう少し後ろまで埋まってしまっているようだったので、しかたないので左寄りのブロックの前から5列目に座りました。Booが来るだろう右側に行っても良かったのだけど、今回初参加のJohn McCuskerはきっと左側に違いないと思ったために、左側に座ったのでした(で、予想通りJohnはほぼ目の前の位置に来ました)。
今回は前回のような”前座”はなく、開演時間を7分ほど回ったところでEddi達が登場してコンサートが始まりました。今日のEddiは緑色のドレスを着て、そして黒縁の眼鏡をかけてました(眼鏡をかけて歌うEddiを生で見たのはひさしぶりです)。髪は見た瞬間短くなったと思ったけど、あとで前回の写真を確認したら、同じかやや短いくらいでした。バンドはBoo Hewerdineのほか、アルバムのアレンジに大きく関わったJohn McCusker(Kate Rusbyの夫でもある、Kate Rusbyも連れてきて一緒に前座やれば良かったのに。ブルーノートでなければね、、)、Ian Carr (ギター)、Alan Kelly (アコーディオン)、Andy Seward (ダブルベース)の5人。Eddiは登場後まず日本語の本を持ちながら「私のいっていることわかる?」「私はあまり日本語が話せません」というようなことを言った後、バンドメンバーの紹介をして演奏が始まりました。
演奏はアルバムでも1曲目のJamie Come Try Meからスタートしました。この曲、アルバムではEddiが珍しく歌い損じているというか、声色が変わるのが少し不自然に感じられるところがあったりして、歌声に硬さが見られるのだけど、生で聴くEddiの歌声はとても柔らかく、音程や声量の変化も滑らかで、見違えるほど魅力的な歌になってました。個人的にはやや心配していた曲だっただけに、これで安心してEddiの歌声に身を委ねることが出来るようになりました。
日本ではボーナストラックとして収録されていたGreen Glows the Rashes Oを挟んで、Brose and Butterが演奏されましたが、曲紹介でEddiは「この曲は。。。」(自粛)と話した後、通訳の女性を呼び出して「日本語でなんて言うの?」と聞いて、その女性が意を決したように訳した瞬間、場内からは大きな笑いがおこりました。この曲でEddiはギターを置いて歌ったのですが、間奏部では軽くステップを踏んだりして、リラックスした様子が伝わってきました。そのためか、アルバムではその早い節回しでやはりやや歌が硬かったこの曲でもEddiの歌は表情に富んでいて、息が続かなくなりそうな歌詞にも関わらずブレスもそつなくこなしていて、聞いてて楽しくなる演奏でした。次のCharlie is My Darlingも、John McCuskerのフィドルが効いたとても陽気な演奏で、ここまでで観客を引き込むことに成功していたと思います。
Eddiの朗々とした歌声が印象的だったWinter It Is Pastの後は、以前のアルバムからの曲が続きました。Booがこの曲を書いたと紹介したあと演奏されたPlease Don't Ask Me to Danceでは、前半はBoo, IanとEddiのギターのみによる演奏で、繊細でセンチメンタルにも感じられるメロディが非常に魅力的でしたが、他のメンバーも加わって演奏された後半は一転して牧歌的な響きのある演奏となり、それぞれ楽しめました。個人的には今日のベストトラックの一つです。続いて演奏されたHummingbirdは、Johnny Scottの鬼気迫るスピード感溢れる演奏とも、Boo & Colinによるアコースティックでシンプルな演奏とも違って、いままでとちょっと違う軽快感の感じられる演奏でした。この後、また新作からWild Mountainsideが演奏されましたが、こういう曲順で聞いてみて、あらためてこの曲はEddiのソロでの代表曲の一つと呼ぶにふさわしい曲だと感じました。丁寧に感情を込めたEddiの歌声と、John McCuskerのはかなげなホィッスルの音もよく合っていました。暖色系のライティングもあって、夕焼けを見ながら聞いているようにも感じられました。
そして「1925年にレコーディングした」と言って笑わせた後に演奏されたのは、驚いたことにFairground Attraction時代のComedy Waltz。この曲はFairground Attractionの来日公演時に演奏されず、個人的には当時最も聞きたいと思っていた曲の一つだっただけに残念だったのですが、それがまさか今回生で聞けることになるとは思ってませんでした。The First of A Million Kissesでは物悲しさが際立つこの曲ですが、フルバンドでの演奏で、今のEddiの包み込むような包容力ある歌声で歌われると何ともいえません。個人的には間違いなく今日のベストトラックです。その後Find My Loveでひとしきり盛り上がった後、Willie Stewartはさらに明るく楽しい演奏で、そのままMolly Rankin(ここでもJohn McCuskerの活躍が光ります)まで一気に演奏されました。
ひと呼吸置いた後、Fairground Attractionでも歌っていた曲だけど、と紹介されて演奏されたのは、日本では久しぶりとなるAe Fond Kiss。'98の来日公演の時のようなアカペラではなくフルバンドでの演奏ということもあるかとは思いますが、いまのEddiが歌うと、聞いていて切なくさせられるFairground Attractionのバージョンとは異なり、Comedy Waltzと同様に歌声に身を包み込まれるような感じを味わえます。こういう曲を聞くと、この15年でのEddiの深化をはっきりと認識することが出来ます。
そして、これが最後の曲と言って演奏されたのはFollow My Tears。毎回のように歌われていていますが、Eddiがそれだけ気に入っている曲なのでしょう。Eddiは、今回もコーラス部を一緒に歌えるようにと観客に手ほどきしながら穏やかな歌声を聴かせてくれていたのですが、途中から曲調が変わり、Eddiが日本語の歌詞を口ずさみ始めました。しばらくの間は何を歌っているかわからなかったのですが、気がついた人が一緒に歌い始めてそれが蛍の光(日頃聞き慣れたバージョンです)だとわかりました。途中Auld Lang Syneの歌詞を挟みながら、なんども日本語詞を繰り返し、「いつしか年も〜」のところでは観客のコーラスも聞かれました(※久しぶりで歌詞(もともと1番しか知らないのに)思い出せなかったのは私です、、)。これで本編は終わりで、ここまでで約1時間20分。
「たくさん拍手してくれたらすぐまた出てくるから」という退場前の言葉通りに、アンコールを求める会場の拍手に応えてEddiはすぐに戻ってきて(10秒ほどで出てきたような)、「一緒に歌ってね」という言葉に続いて演奏されたのはPerfect。ここまでも今日の会場は結構良好な反応をしていたと思うのですが、さすがにこの曲ではそれまでよりさらに大きな手拍子と歓声が起こり、席を立つ人も多く見られました(個人的にはこの曲をきっかけとして立つ気にはならないのだけど)。でも、他の曲と違って歌詞を一緒に口ずさむ人が多いというのは、見ている方もコンサートに参加しているという実感があって、やはりいいものです。Perfectの後はWings on My Heelsを演奏すると一度は言っていたのですが、そこで起こったリクエストの声に応じて、Kiteflyer's Hillが歌われました。今日のKiteflyer's Hillは、これまでの全体的に明るい雰囲気もあってか、しっとりと歌い込むという形ではなく、ややテンポの速い歌い方でいつもとちょっと違った感じでしたが、それでもやはりコーラス部でのEddiの歌声には説得力がありました。そしていかにもスコットランド民謡といった感じの曲が演奏され、またEddiがバンドメンバーの紹介をするとともに、バンドの一人一人に日本まで一緒に来てくれてありがとうと感謝の言葉をかけてました(特にBooに対しては思いっきり頭をさげて感謝してました)。曲名はわかりませんでしたが、今日のコンサートを象徴するような陽気な曲調に会場からも大きな手拍子が起き、バンドメンバーも楽しそうに演奏していたのが印象的でした。演奏が終わった後のメンバーの満足そうな顔が忘れられません。
しばしの間を置いてふたたびEddi達が登場して始まった2回目のアンコールでは、しばらくの間、Eddiがリクエストを受け付けていて、いろんな曲名があがったのですが(The Right Placeは一時集中的に声がかかったので演奏してくれるかもと思ったのだけど)、Eddiが「Swimming Songって知ってる?」と言ったのでてっきりこの曲が演奏されるものだと思っていたら、結局演奏されたのはWings on My Heelsでした。個人的にこの曲はとても好きで、必ず聴きたい曲の一つなので、これはこれでもちろん歓迎だったのですが、久しぶりにSwimming Songも聞いてみたかった気はしました。でも、生で聞くこの曲は、いつだって他の曲とはひと味違います。今日歌われた中でもひときわ丁寧にしっとりと歌い込まれたこの曲で、コンサートは終わりました。
終わった時はもう終わり?と思ってしまいましたが、2回のアンコール含めてトータル1時間45分は、前回と比べてもそれほど短いわけではなく、また内容的にも、新作の曲にまったく違う表情が与えられていて、聞いて見て楽しいコンサートでした。全体的にこれまで以上にEddiが自然体でリラックスしていて、ときおり日本語の本を取り出しては観客とコミュニケーションを図っていた姿も印象的でした。演奏面では、フィドルのほかホィッスル、(マンドリンライクな)ギターを場面場面で持ち替えて演奏したJohn McCuskerの存在がやはり大きかったと思います。トラッド色がこれまでより強く感じられるバンドの演奏は、彼を中心にして作られていたと感じました。今回は自曲を歌うこともなかっためにひたすら地味な役回りを演じたBooでしたが、Please Don't Ask Me to DanceやKiteflyer's Hillなど、前半ギターのみの演奏になる曲での演奏ぶりは光っていて、やっぱり屋台骨という感じでした。Follow My TearsでEddiがコーラス指導をしている時に、やや控えめな声量ながらも聞かせてくれた歌声も良かったです。
満足できるコンサートでしたが、前回よりもスタート時間が早かったことを考えると、正直な気持ちもっと聞きたかったです。一度でいいからオーストラリア公演のように3時間くらいの演奏を見てみたいものです。
(セットリスト)
1. Jamie Come Try Me
2. Green Glows the Rashes O
3. Brose and Butter
4. Charlie is My Darling
5. Winter It Is Past
6. Please Don't Ask Me to Dance
7. Hummingbird
8. Wild Mountainside
9. Comedy Waltz
10. Find My Love
11. Willie Stewart/Molly Rankin
12. Ae Fond Kiss
13. Follow My Tears 〜 蛍の光
(Encore 1)
14. Perfect
15. Kiteflyer's Hill
16. Heaven's Gate
(Encore 2)
17. Wings on My Heels
終演後、ホールの外に出たらすでにそこにはEddiがいて、人波を引き連れて歩いていました。EddiはまっすぐCD売り場へと向かい、会場でCD購入した人を対象にサイン会が始まりました(正式にサイン会が行われたのは今回が初めてかも)。Boo, John McCuskerはEddiの横に並び、他のメンバーもすぐ脇に立って、ファンとの交流を楽しんでいました。私はせっかくだから2枚組ライブ盤を買おうかと思ったのだけど、既に売り切れていたようなので(開演前はあったのだけど)、結局特に何も買わずに横でしばらく眺めていました。その間にも列はどんどん延び、たぶん200人強は並んでいたと思います。私は30分ほど経ったところで帰りましたが、最初の方の人はEddiとゆっくり話す時間が取れていたためか列がなかなか動いてなかったので、最後の人まで達するにはあのあと1時間半くらいかかったのではないかと。ちなみに会場で売っていたCDの中にはLiveやDriftwoodのイギリス盤、Booのライブ盤、アコーディオンを弾いていたAlan Kelly(この人ミュージックプラントの取り扱いアーティストらしい)のCDもありました。
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