John Oates: Solo Tour in Japan '09
'09/2/2, 3@ Billboard Live Tokyo (東京・東京ミッドタウン)
ソロとしては初めてとなるJohn Oatesの来日公演の東京公演2日間を見ました。日本では1月下旬にリリースされた最新ソロアルバムに伴うツアーです。'02のソロ第一作がリリースされた時にはプロモーション来日(この時のレポートはこちら)まではしたのだけど、ソロでのツアーは日本では実現しなかっただけに今回はまさに待望の来日公演でした。ソロアルバムからの曲はもちろん、Hall & Oatesの曲でJohnと関係が深い曲(そしてDaryl & Johnのコンサートではあまり演奏されない曲)を聴くのを、多くのHall & Oatesファンと同様に個人的にもずっと楽しみにしていたので、うれしい来日公演となりました。
今回の会場はBillboard Liveという、通常のライブハウスではなく、着席して食事を取りながら演奏を楽しむ(ことが想定された)スタイルのクラブだというのが正直残念なところでしたが(ワンステージの時間が短くなるし、会場の反応が通常のライブハウスと較べるとどうしても、、、)、だからこそ呼びやすかったというのはあるのかもしれません。John本人にとっては、たぶんスタッフに教えてもらったと思うのだけど、Hall & Oatesとして来日したときによく通っていたソウル・バー、George's(音楽評論家の吉岡正晴さんがここで文章書いてます)のあった場所に立った東京ミッドタウンにある会場で演奏することには感慨があったようです(MCでそう言ってました)。私はこれまで何回かここに来てて、最近では昨年12月にLisa Loeb(とその数日前にはPriscilla Ahn)をここで見たのだけど、その時と比べて音響面が良くなってました。音量も少し大きくしてたと思うのだけど、音場感がこれまでよりずっと良くなっていたように思います(特にShe's Goneなどでのキーボードの音で顕著でした)。ウェブサイトのWhat's Newによると、最近スピーカーを増設したらしいですから、その効果なのでしょう。
観客の入りが少し心配ではあったのだけど、2日間の4回のステージはどれも9割程度は埋まってる感じで、3階(ステージと同じ階)の後ろの方のテーブルに少し空きがあるくらい(初日のファーストステージではここに法人客?と思われる一団がいて3階は満員だった)で、カジュアルシート(4階と5階)もほとんど埋まっているように見えました。私は初日は2ステージとも3階(ファーストが3列目のメンバー席、セカンドが最前列の左側で最後にJohn達と握手できた!)で、2日目はファーストが4階のカジュアルシートの左側、セカンドステージは3階最前列中央のテーブルで見ました。
ここでのコンサートは各日2ステージで、通常各ステージは1時間〜1時間10分なのですが、今回Johnはもっとたっぷりと演奏してくれて、特にセカンドステージは2日間とも1時間半を超える充実の内容で、構成も各日ともファーストステージと少し変えてくれました。基本的な構成は、最初の5曲がAbandoned Luncheonetteからの4曲+Sara Smile、次にJohnの一人での演奏(リクエストコーナーあり)、そしてソロアルバムからの曲を主体に5曲以上を演奏して本編が終了、そしてアンコールで戻ってきて1曲演奏、という感じでしたが、2日間を通してまったく同じセットリストのステージはなく、初日と二日目でも曲目を変えてくれたので、すべてのステージを見ることにしてほんとに良かったです。私の他にも連日、または2ステージ連続で見に来ていた人は多かったようで、Johnは見覚えのある顔が多いということでセットリスト(特に中盤と終盤)を変えてくれていたという面もあったと思います。バンドメンバーはキーボードに共作者でプロデューサーでもあるJed Leiber、ベースにMichael Mercier、ドラムスにJohn Michelという3人編成でした。
前半はAbandoned Lucheonetteからの曲が4曲続いた訳ですが、Johnはその理由を「このアルバムを大切に思っている("dear to my heart")」ほかに「新作の曲には同じスピリットがあると感じている」からだと言ってました。このなかで(She's Goneは言うまでもなく)Las Vegas TurnaroundはDaryl & Johnのコンサートで聴いたことがありますが、最初の2曲はもちろんライブで聴くのは初めて。他の曲もDaryl抜きで(というかJohnがメインで)の演奏を聴くのはもちろん初めてですから、やっぱり最初のうちはちょっと観察的に聴いてしまいましたが、じきにJohnの歌声とバンドの出す音にぐっと引き込まれていました。唯一予約していなかった2日目のファーストステージをこのセットが終わったら予約しようと決めたくらいです。最初の2曲はJed抜きでのトリオでの演奏だったのでまさにUnpluggedな演奏でしたが、Johnの声質とあいまってその演奏はアルバムでのフォーキッシュな感じではなく、ルーツロック的な響きがありました。これに対してJedが加わったShe's Gone以降では、JedのキーボードとJohn Michel & Michael Mercieによるコーラスが印象的でした。Jedのキーボードは、その後のソロアルバムの曲でも同様でしたが、Everytime You Go Awayで聴かれるような広がりと余韻のある演奏でとても良かったです(最近のSteve Winwoodの演奏を思い浮かべずにはいられなかったのは私だけでしょうか)。John Michel & Michael Mercieは後半も数曲で効果的なコーラスを聴かせてくれましたが、特にJohn Michelの声はハイトーンであることもあって、ハスキーなJohnの声と好対照をなしてました。それを一番感じたのがSara Smileで、Johnの声に寄り添うように聞こえる高音が心地よかったです。Sara Smileではコーラス部でDarylとの声域の違いもあって"Smile"と繰り返しているのかなと思っていたのですが、もしかするとコーラスをより引き立てるためにそうしていたのかもしれません。そう思えるくらい味わい深いコーラスでした。
中盤のJohnのソロパートは、すべてのステージで内容が違いました。初日のファーストステージでは、すべてリクエストされた曲を演奏することになったので、多くの人が想像していたと思われる順当な内容(Camellia, Italian Girls, Possession Obsession)となりましたが、ここで3曲演奏するとこのあとソロアルバムからの曲を演奏する時間が短くなることに気づいたJohnが、セカンドステージではリクエストを観客に聞くときに自ら「何でも演奏できる訳ではなくて、あらかじめセットリストの紙に書いた曲しか演奏できないんだよ」とばらしてしまったこともあって、すべてがリクエストというわけではなくなりました(予定してなかった曲がリクエストされた時には即座に"No."とか"Next time"とか答えてた)。それでも初日で時間配分がわかったのか、その後の配曲を調整して、2日目もやっぱりリクエストには応えてくれました。演奏された曲の中では、Italian GirlsもPossession Obsessionも良かったのだけど、Promise Ain't Enough(この曲は自分では考えつかなかったので、リクエストした人に感謝です)とKeep on Pushin' Love, そしてCome Back Babyが特に良かったです。Promise Ain't Enough, Keep on Pushin' Loveはともに一人での演奏ということもあってイントロからしてスタジオバージョンとは違うのですが、シンプルな、でも力強さを感じる演奏にあわせて歌うJohnの歌声は、Promise Ain't Enoughでは切々と、Keep on Pushin' Loveでは静かな熱さを感じさせてくれる、とても味のあるボーカルでした。Come Back Babyは国内盤のボーナストラックだそうで(輸入盤しか買ってないので知らなかった、、)、こういう時でないともう演奏する機会がないから、と言ってJohn自らのリクエストで演奏されたのですが、ブルースフィーリング溢れる演奏にのせてJohnが思い入れたっぷりのソウルフルな歌声を聞かせてくれたのがとても良かったです。
後半は1000 Miles of Life の曲を中心に演奏されましたが、初日のセカンドステージ以降はここにより時間をかけるようになって、曲数が多くなったり、違う曲を演奏したりするようになりました。新作からの曲はどれもスタジオバージョンと少し印象が違って良かったですが、個人的に特に良かったと感じたのはSpinning DownとGhost Town, そしてタイトル曲の1000 Miles of Lifeでしょうか。この3曲は初日、二日目ともにセカンドステージでは本編最後に連続して演奏され、曲を追うごとに徐々に盛り上がって行く展開は良かったです。ニューオリンズのことを歌ったというGhost Townは、派手さこそないですがドラマ性のある曲で、曲が進むにつれてバンドの演奏は白熱し、Johnの歌声も熱くなっていくのが感じられました。ファーストステージで最後に演奏されたのが納得できる曲です。1000 Miles of Lifeは全編を通しても特に躍動感を感じる演奏で、スタジオバージョンのような女性コーラスはありませんがバンドが一体となった厚みのある音は、もっと大きな会場でも盛り上がれそうな感じでした。2日目のセカンドステージで演奏してくれたColor of Loveもかなり良かったです。(リクエストでLittle Angelが演奏されたものの)ファーストソロの曲は今回は演奏してくれないのかと思っていたので演奏してくれたということだけでうれしかったのですが、すごくファンキーで、JohnとJohn Michel, Michael Mercieのコーラスもばっちり決まっていて、とっても楽しくなる演奏でした。この曲、最後はコーラスで終わるのですが、John達もかなり気分が良くなったのか、演奏後にもう一度繰り返してました。この後にはI Can't Go for Thatが演奏されたのだけど、演奏後に「いま気づいたけどコーラスがColor of Loveと同じだ」と言って、Color of Loveの時と同じように3人でコーラスを繰り返すという場面もありました。アルバムで再録されているChange of Seasonも今回演奏してくれましたが、演奏前にはどうして今回アルバムに入れたかについて語ってくれました。これまでレコーディングした曲であらためてレコーディングしたいと思った曲はほとんどないそうですが(「レコーディングされたバージョンがその時点のアーティストを表現しているし、その当時の様々な思い出と結びついているから」だそう)、この曲だけは曲を作ったときに考えていた形であらためてやってみたいと考えたのだそうです。「このスタイルで演奏するのは初めて」と言って演奏したI Can't Go for Thatは、曲紹介の時点でこの曲だと確信してはいましたが、イントロはもちろん全面的にアレンジが大きく変えられていて、かなり印象が違いました。Daryl & Johnでのバージョンに比べるともっとゆったりしたグルーブで、少しジャジーな感じもありました。通常Charlieのサックスソロとなる部分は、ベース、そしてキーボードのソロが入れ替わるように入ってました。そして初日、二日目ともにアンコールで演奏されたYou've Lost That Lovin' Feelingは、個人的には2日間を通してのベストトラックです。'05のDaryl & Johnのツアーでの演奏も素晴らしいものでしたが、Johnメインの今回のバージョンもそれに匹敵するくらい良かったです。Darylのボーカルが入らない分、ややテンポが遅く、Darylと違って語尾("that lovin' feeling"の"feeling")をはっきり発音するという違いもあるのですが、この曲でのJohnのボーカルはDarylにまけず劣らずソウルフルで、とても感動的でした。
2/2 ファーストステージ セットリスト
1. Lady Rain 2. Had I Known You Better Then 3. She's Gone 4. Las Vegas Turnaround 5. Sara Smile 6. Camellia *リクエスト 7. Italian Girls *リクエスト 8. Possession Obsession *リクエスト 9. Good Son 10. Change of Season 11. I Can't Go for That (No Can Do) 12. Raven 13. Ghost Town (Encore) 14. Circle of Three 演奏時間:1時間20分 |
2/2 セカンドステージ セットリスト
1. Lady Rain 2. Had I Known You Better Then 3. She's Gone 4. Las Vegas Turnaround 5. Sara Smile 6. Promise AIn't Enough *リクエスト 7. Come Back Baby 8. Good Son 9. Change of Season 10. I Can't Go for That (No Can Do) 11. Raven 12. Spinning Down 13. Ghost Town 14. 1000 Miles of Life (Encore) 15. You've Lost That Lovin' Feeling 演奏時間:1時間32分 |
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2/3 ファーストステージ セットリスト
1. Lady Rain 2. Had I Known You Better Then 3. She's Gone 4. Las Vegas Turnaround 5. Sara Smile 6. Little Angel *リクエスト 7. Possession Obsession 8. Keep on Pushin' Love *リクエスト 9. Good Son 10. Change of Season 11. I Can't Go for That (No Can Do) 12. Raven 13. Ghost Town (Encore) 14. You've Lost That Lovin' Feeling 演奏時間:1時間23分 |
2/3 セカンドステージ セットリスト
1. Lady Rain 2. Had I Known You Better Then 3. She's Gone 4. Las Vegas Turnaround 5. Sara Smile 6. Promise AIn't Enough *リクエスト 7. I Found Love 8. Good Son 9. Change of Season 10. Color of Love 11. I Can't Go for That (No Can Do) 12. Raven 13. Spinning Down 14. Ghost Town 15. 1000 Miles of Life (Encore) 16. Circle of Three 17. You've Lost That Lovin' Feeling 演奏時間:1時間33分 |
Johnは多くの曲の演奏前に曲紹介をしたり、昔のエピソードを話してくれたり、観客とごく自然にコミュニケーションを取ってくれました。Hall & Oatesのコアなファンが多かったと思われる会場の反応も比較的良かったので、チームワークのいいバンドに支えられ、Johnもリラックスして思う存分演奏できていたのではないでしょうか。Darylと一緒でもまたどんどん活動して欲しいけど、ソロでもまた来て欲しいと思わせてくれるコンサートでした。
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