3 活断層型地震

直下型起きるとしたら...


エネルギーは小さいが直下型は恐い

 すっかり有名になってしまった活断層型地震.代表例は勿論95年1月に起こった阪神−淡

路大地震です.

 活断層型地震は,プレート内部に溜まった歪エネルギーの放出によるものです.海洋型地震

は,移動するプレートどうしがぶつかり合う界面で発生しますが,活断層型地震は,押されて

圧縮や引っ張りを受けたプレート内部で発生します.基本的に外力は海洋型と同じプレートど

うしの凌ぎ合いによるものですから,やはりプレート界面に近いところほど発生し易いと言え

ます.

 大きな違いは,海洋型地震の場合,エネルギーの放出でプレートが元の状態に戻るのです

が,活断層型地震の場合は,ずれたら元に戻らずそのままです.活断層とは,”地震の痕跡”

と見ることができます.つまり,その断層は元々プレート内の”弱い部分”だったということ

です.

 さて,活断層型の歪エネルギーは,海洋型と比べて圧倒的に小さく,地震の規模も小さいで

す.しかし,震源が浅い(30km 以内)ので,直下型の場合,規模の割には大きな被害をも

たらす恐れがあります.海洋型の代表格である関東大地震は,M7.9.かたや,阪神−淡路

大地震のそれは,M7.1.Mが1違えばエネルギーはおおよそ32倍も違います.同じく海

洋型の安政東海大地震などはM8.4ですから,格が違うと言えるでしょう.

 ところが,阪神−淡路大地震の被害は海洋型に匹敵するぐらいもの凄いものでした.特徴的

なのは,大きな被害が長さ60 km,幅4km ほどの狭いライン上に集約していたこと(火災の

被害は除く)です.この地震は,淡路島から六甲山へ向かう複数の活断層が一気にずれたこと

によるものだそうです.エネルギーはさほどではないので,この断層ライン周辺でのみ,被害

が大きかったわけです.そして,この被害をより大きくさせたのは,浅い震源であったことも

さることながら,2つの地震が数秒の差で連続して発生した,いわゆる”双子地震”であった

ことで,ドップラー効果によって,揺れが倍増したのだそうです.こういうことは,活断層型

地震では比較的起こりやすいことだそうです.

 

 関東周辺の活断層を下図に示します.ここには載せませんが,関西等と比較して,その数は

圧倒的に少なく見えます.これは,関東地方一帯は関東ローム層に覆われていてその下に隠れ

ている可能性が高いということです.但し学者によっては,確かに少ないと言われている方も

います.

 要注意は,相模トラフの延長線に

ある”国府津・松田神縄断層帯”で

す.ここは,純粋な活断層というよ

りは,プレート界面と捉えるべきで

す.A級断層で,約100〜1000年

に1度の割合で動くそうです.その

他,三浦半島一帯も危険地帯です.

 B級断層(約1000〜10000 年に

1度)では,東京多摩地区に及ぶ

”立川断層”,荒川沿いの”荒川断

層”などが有名です.

因みに先の阪神−淡路大地震で動い

た”六甲山系断層”もB級でした.

 東京を中心に考えた場合,現在,海洋型,いわゆる親玉地震として警戒しなくてはならない

のは,駿河−南海トラフによる”東海地震”と,フォッサマグナ西端による松本〜甲府を中心

とした地震です.大規模なため,東京も相当な被害を被ることが予想されます.

 一方,相模トラフ系の親玉地震は,関東大地震から80年しか経っていないので心配はない

でしょう.但し,これはあくまで”親玉地震”についてです.

 実は,東京が最も警戒しなければならない地震は,この相模トラフの親玉地震の間隔

内で必ず発生する,活断層による直下型地震なのです.

 

 相模トラフ系の地震の親玉の周期はほぼ200年と言われています.1923年の関東大地震の

前の親玉地震は1705年の元禄地震です.では,この間,何もなかったのかというと,そうで

はありません.震度5以上の地震は最低10回は起こっているようで,その中でも,1855年の

安政江戸地震(M6.9)や,1894年の明治東京地震(M7.0)等は,東京直下型地震で,大き

な被害をもたらしたようです.特に安政江戸地震では,良い言い方ではありませんが,死者の

数は阪神−淡路大地震を上回っているとのことです.

 そして,今まさに東京は,直下型地震の危険が切迫していると言われています.以下に,親

玉(海洋型)地震と主な直下型地震の年表を示します.

 1923年の関東大地震と,それによる数年間の余震後,長いこと”静穏期”が続いてい

ましたが,1980年に上図の如くM6.1の地震が発生し,”活動期”に入ったと言われてい

ます.直下型ということで上図には載せませんでしたが,1987年には,M6.7の千葉県東

方沖地震が発生し,東金市を中心に被害が発生したことも記憶に新しいところです.

 上図から,今東京は,直下型地震の危険性が極めて高いことが分かると思います.


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