イタリア日記
〜 Roman Workingday 〜

2005/Jun/06

ローマ(11日目)


月曜日。
この連休で、 左肩の凝りが一層激しさを増した。
もう少し正確に表現すると、
  1. 震源は、 左肩甲骨と背骨の間あたりと推測される
  2. かなり痛い。 揉んでも解消されない。 風呂に浸かって若干改善される。
  3. PCに向かうと悪化する。
  4. 街中をぷらぷらしているときは、 感じない。
「その肩凝り、 放っておくと大変なことになりますよ。」 なぁんてビートたけしに言われたりして。



6:30の目覚ましを全否定。
7:00に設定しなおし、
7:15に設定しなおし、
7:30に設定しなおし、
「逃げちゃだめだ」と起床。
リーゼントが爆発したような寝癖を整え、 朝食。
空腹ではあるが、 リストランテに行くと食欲が失せる。
飽きたわけではないんだけど。

歯磨き、 洗顔、 ジャケット羽織って、 玄関へ。
「タクシーぷれご」

ホテルのすぐ外で待ってるらしく、 ムルティプラが滑り込んでくる。

「びあでらぐらんでむらーりあ」
「むらーりあ?」
「むらーりあ」
運ちゃん、 おもむろに地図をめくる。 おいおい。
なんとか発進したものの、 ハンドルに地図を置きっぱなし。



なんとか到着。
自社オフィスでメールチェック、 客先オフィスで作業開始。 おっ、 D:\ドライブにアクセスできるじゃん。 データベースは? ゲットできるじゃん。 よしよし。

客が擦り寄ってくる。
「ミーティングしたいんだけど。」
おーけー。
先週私が作った資料でお客が説明を始める。
が、 すぐに、
  1. 英語はやだ
  2. おまえの資料やんけ
ということでお鉢が回ってくる。 んだよ、 最初っからそー言えよ。

試験構成を巡って紛糾。 イタ語が飛び交う中、 ときどき、 「今、 こーゆーハナシしとんねん。」 と英語で教えてくれる。
客の一人が、
「おーけー!」
ってなにが???
二つの試験方法を本日試してみて、 明日の本番に備える、 ということでおーけーなのだそうだ。
見事な問題の先送り方法である。



これで午前中がつぶれ、 ランチ。
弊社社員さんの車に乗って。
「われわれはニッポンからいろんなものをいただいている」
「いやいやいや」
「グレンディザーとか」
「は?」
「デュークフリート」
「あぁ!20数年前?」
「あれが日本から来た最初のアニメだ。  いまだにファンが多い。」
なんだよ、 随分感謝されたと思ったら、 思いっきり「粗品」レベルじゃんか。 逆に恐縮しちゃうよ。

しかし、 日本のアニメ、 今でもばんばんやっている。 私が確認しただけでも、
  1. りかちゃん(テレ東のクレジット確認、 魔法少女系)
  2. いぬやしゃ
  3. GTO
など。 2と3なんて、 イタリア人が見て面白いのかねぇ?
セリエAの試合を有難がって見てる日本人もいることだし、 お互い様なのかねぇ。



ランチ後、 クルマを連ねてオフィスへ。

その前に、
「ここのスィーツは絶品だ。」
という近所のお店へ。
うっ、 勘弁してくださいな。
「ジェラートもあるし。」
んじゃあ、 りもーね。

・・・バニラか? バニラがちょっと効き過ぎてるのか? レモンの清涼感に期待したのに、 ちょっとくどい。



午後いっぱいかけて、 パラメータの日伊比較。
客先でのみ収集可能なデータをゲットして、 自社オフィスに向かう。

メールチェックしたり、 パラメータの定義を確認したり、 気づけば21:00。 帰ろう。

いつもの警備の兄ちゃんにカードを返す。
「たくしーぷれご」

と、 いつもの笑顔でなにやら話し掛けてくる。
「なんたらかんたらろーまなんたらかんたーら」

言葉のみで理解しようとすると、 まったく分からない。

「のーおかぴっと」

それでも話し掛けてくる。 必死で聞き取る。 一語一語を脳が解析して、 ふるいにかけている。
「なんたらかんたらろーま・・ころっせおー、 なんたらでとれびぃ」

あ! あぁ、 観光したかって?
「しーしー」

まだ続く。 自分を指して、
「いたーりあ、 さるでーにゃ」

私を指して、
「じゃっぽーね、 ・・・」

あー分かる分かる。
「じゃっぽーね、 おーさか」
「あ〜、 おざか!」
「おさか」

面白い。 お互いがお互いを小さい子供のように思って相手してるみたいだ。
私は、 彼が一生懸命話すことを一言一句漏らすまいと聞いている。 ちょうど、 小さい子が何かを伝えたい一心で、 支離滅裂になりながらも必死になって話すのをちゃんと聞いてあげる母親のように。 彼は彼で、 ボキャの少ない子供に色々問い掛けているような感じなんだろう。

そして、 言葉自体は通じなくても、 コミュニケーションとしてちゃんと成立しているってところが面白い。
機械同士の通信では絶対ありえないことだ。
上位プロトコルレイヤーの言語で分かり合えない以上、 その通信は通信たりえず、 雑音と変わらない。 なのに、 人間同士で分かり合えるのは、 類推するという機械にはまだない機能と、 レイヤー0と呼べる「常識」のおかげであろう。
言語レベルで全く分かり合えない方が、 会話は絶対面白い。

タクシーが来るので、 オフィスを出る。
「ちゃお〜」

オフィスの前の門はぴしゃりと閉まってて、 どこをどうすれば開くのかさっぱり。
タクシー到着。 まじっすか。 どーすんだどーすんだ?
とタクシーの運ちゃん、
「なんたらかんたら」(と私の後ろの方を指差す)
「?・・!」
おー、 そんなところにボタンが?
ぽちっとな。
かしゃん、 おー、 開いたよぉ。
「ぐらーつぃえ」



ホテル到着、 荷物を置いて速攻リストランテ。 ぺこっぱ。

「ぼなせら〜」
「はぃ、 まいふれんど。 はわゆ?」
いつもなぜか親切にしてくれるウェイター、 ANTONIO氏が飛び切りの笑顔で迎えてくれる。
齢50後半、 だろうか。 カンペキな英語。 適度にフレンドリーな応対。 大声を上げて呼ばなくても、 来てほしいときにさりげなく来てくれる。
私の知る限り、 最高のウェイターである。
なんてったって、 料理を美味しくすることのできるウェイターなんだから。



結局、 人なんだなぁ、 と思う。

言葉が通じないと分かっていながら、 笑顔で話し掛けてくれたり、 ちょっとした心配りでもてなしてくれたり。


人を救うのは、 いつだってこういう笑顔だ。


人を救う笑顔・・・、 私にできるだろうか。



ぼなのって。





もどる。 一覧 つづく。