中小企業診断士(休止中)勉強日誌(2006年8月)

作成日: 2006-08-06
最終更新日:

ゼロ・トレランスを考える

最近、ゼロ・トレランスという言葉を聞くようになった。 学校教育について、非寛容(不寛容)を方針とする対応を指す。 規則への違反を厳格に適用し、処分を行うことをいう。 ゼロ・トレランスは、割れ窓理論を根拠としている。 割れ窓理論とは、おおまかに言えば、軽微な犯罪を厳格に取り締まることが、 重大な犯罪の抑止につながる、という理論である。

割れ窓理論を最初聞いたときに、その実効が上がったことから 新鮮に聞こえた。しかし、今冷静に考えると、 昔の職場で行っていたヒヤリ・ハットによる事故抑止活動と同じである。 その職場では、安全上ヒヤリとしたりハットしたりした事項を、 緑色の紙に書き、安全会議で集計し、報告していた。 この活動は、割れ窓理論よりずっと前に知られていた、 ハインリッヒの法則に基づいている。 言うまでもないが、ハインリッヒの法則とは、 「重大な災害が1件起こる背景には、軽度の災害が29件、 事故に至らない事故が300件存在する」というものである。

では、ゼロ・トレランスを厳格に適用するにはどうすればよいか。 ルールを事細かに決めなければならない。そして、 処分の程度も勘案しなければならない。さらに、 処分の適用は厳格でなければならない。これだけのことを、 労力をかけて行う必要がある。 その労力が適用する対象に見合うものであるかを、考えなければならない。

ゼロ・トレランスの適用先は、学校教育だけでない。 企業や官庁などの組織におけるコンプライアンス(法令遵守)も同様に、 ゼロ・トレランスの適用先であろう。 問題は、ゼロ・トレランスを適用でき、ゼロ・トレランスに耐え得る組織であるかだ。 (2006-08-06)

註:ニューヨークの犯罪率が減少したのは、 ゼロ・トレランス政策ではない、という主張がある。 「ヤバい経済学」という本で取り上げられている。 そのうち読んでみよう(2006-11-26)。

付記:「ヤバい経済学」を読んだ。 感想を記した。(2007-05-13)


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MARUYAMA Satosi