企業診断を読む(2001年5月号)

作成日:2001-05-03
最終更新日:

診断士の日々

小林勇治さんの仕事のやり方が紹介されている。 小林さんは、現状のシステム屋の商売方法を批判している。 最初は値引きするものが、あとからシステム変更ごとに追加修正料金をとるという従来のシステムが、 小林さんの批判の対象である。 これもわかる。では、このシステム変更は、どちらが言い出したものか。顧客の側からか。 それともシステム屋の側からか。 システム屋としていうと、顧客の要望の程度が度を越してきたり、 要望の頻度や数が度重なるというときに対処に苦慮するものだ。 たまたま同じ号で、「コンサルタント養成セミナー●経営診断ポイント講座(第6回)」の、 「中小企業経営・政策」の粂野博行さんの講座があった。 粂野さんは、本年 3 月に放映された NHK スペシャルの内容で、 (これはソフトウェアではないが)次の事実を指摘した。

発注側企業は、打ち合わせ当日設計変更を(受注側企業に対して)行なったにもかかわらず、 価格変更を認めさせなかった。結局は受注側企業にとって実質的な値引きとなり、 発注側に有利な条件で取り引きが行われていたことを示す。 受注側企業は今後も取引関係を維持することを目的としてこの実質値下げを受けていた。 その一方で、発注側企業も受注側企業の技術レベルが未確認のまま取引せざるを得なかった。

NHK スペシャルの場合指摘されるべきは、 適切な仲介者を立てて双方の不安点を解消すべく実務を行うといったことだろう。 粂野さんの講座でも、後段で「(前略)中立的な立場にある公的機関が、 (中略)不適切な取引を行う企業に対し、ホームページなどで企業名を公開するなどして、 適切な取引関係の形成を図る必要があると考えられる」と主張している。

私は必ずしもこの意見に与するものではない。 公的機関の介入は自由な競争を阻害する可能性があるし、 監視を行う機関は必ずしも公的である必要はないと考える。

ただ、仲介という行為が単に物流のみならず(むしろ物流の仲介より)情報の仲介に重きが置かれる ようになった、ということは痛感する。


E ビジネス時代に向けた新しい人事戦略モデル

著者の関口さんは、Eビジネスの4つの特徴を次のようにまとめている。

  1. スピード
  2. 複雑性
  3. ボーダーレス性
  4. 不確実性

Eビジネスの特徴とはいうけれど、旧来の仕事を効率化すると必然的にこれらの結果が出てくるのではないか。

さて、関口さんは、従来の日本型モデルに代わって新しいモデルを示している。 これは、企業の外部に人材マーケットと外部関係者をおき、 三者の連携を通して人事戦略を構築するものである。このモデルを提示するに至った経緯として、 日本型人事戦略モデルの弊害を挙げる。

これらの弊害を解消すべく、打ち出しているモデルについて考えてみた。 が、ここでは詳細は省く。

一読して感じたことは、この企業モデルがどのサイズの企業にも、 またどんな業種の企業にも通用するのだろうか、ということである。 事例を通して考える。

私の勤務する企業は、従業員 300 人強、情報サービス業である。 外部人材の登用もそこそこ行っている。 情報サービス業という業種では当然のことであろう。かくいう私も転社組である。 以上からは、従来企業よりは提案モデルに近い人事政策をおこなっているといえる。 しかし、まだまだなところもある。

人材市場に関しては、この業界だから、流動的でありそれが活力のもととなっている。 しかし、私の勤務先は転入・退出の度合は業界平均に比べて低いのではないかと思う (かくたる証拠はない)。度合が低いということは、必ずしもいいことばかりではない。 ぬるま湯につかっているのではないか、とも思えるからだ。

外部人材に魅力的に映る制度とその広報機能、ということで最近人事制度の改定があった。 平たく言えば、信賞必罰制度を強めたものである。また、キャリアアッププランも 従来にくらべれば明確に示したものである。賃金体系の変更も伴うため、 社員への説明会がなされた。

私はなまけものなので、たぶん給料は減るだろう。 それは嫌だけれど仕方がない。マズローの5段階説や、ハーズバーグの衛生要因理論を 思い出して、家のローンが返せる程度もらえればいいか、と内向きの発想をしてしまう自分である。 そんなことを思い出しつつ、せっかく従業員の一部も集まっているいい機会なので2点質問した。

  1. この制度の有効性はどのようにして検証するのか。
  2. 人事と教育は不可分の関係にある。 今回教育については触れられていないが、どのような方針をもっているのか。

担当者の答えは、1.はしかるべきときに従業員のみなさんに説明する、 2.は今年度一杯でまとめて来年度に発表する、とのことだった。

たまたまこの日の夜、飲み会があった。この会合に出ていた同僚が「すごいですねえ、 さすが診断士だ。あの中で聞いていた人に質問の意味がわかりましたかねえ。 説明責任を要求しているんですよ。」

この同僚も鋭い突っ込みを入れていたが、これは省略する。

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