中小企業白書を読む(2000年)

作成日:2000-06-03
最終更新日:

1. 2000年中小企業白書について

価格が 2000 円である。最近の技術書は一ページあたり 10 円は確実にするから、この白書はお買得である。 これは逆にいえば、大蔵省がまともすぎる値段を付けているということだ。 昨今の財政危機を考えれば、もっと儲けようという下心を露にしてもいい。もっと高い値段をつければいい。 中小企業白書は白書全体の中での売れ行きがいいらしい。およそ3万部売れるという話だ。 主な読者層は中小企業の経営者、企業コンサルタント、中小企業診断士を目指す人たちという。 こういった読者ならば、多少は値が上がっても買うだろう。

単に値を上げることに気が引けるのなら、CD をつければよい。労働白書がいい例だ。 ただし、労働白書は 大蔵省印刷局の出版ではない。 労働省外郭団体の出版である。大蔵省は CD が発行できないか、 発行を許可していないかのいずれかだろう。 現在中小企業白書の CD も別売されているが、けっこうな値がすると聞いている。 だいたいそれほど流通していない。私が行く普通の書店で中小企業白書はけっこう見かけるものの、 CD はお目にかかったことがない。どうせ CD の原価など100円もするまい。情報を金にする、 てっとり速い手段だと確信する。

表記の問題もおもしろい。なぜか今年から、元号でなく西暦になった。日の丸・君が代を推進する行政府は、 なぜ元号を使わないのだろう。2000 という数字の切りの良さにひかれてちゃっかり拝借しただけなのだろうか。 大蔵省発行の白書類で年を西暦で表記しているのは規制緩和白書だけである。これは、元号も規制のうちと 解釈できそうだ。中小企業白書が 2000 年を採用しているのは、規制緩和の一環として捉えていけば良いのか。

副題がふるっている。今年は「IT 革命・資金戦略・創業環境」となっている。これだけならいい。 よくわからんのは、表紙の美しい菜の花畑の写真を、次の白抜き文字が汚していることだ。
IT Revolution
Cashflow Management
Equity Culture

ゲベゲベである(ゲベゲベの意味はここでは定義しません。語の響きと文脈からご想像ください)。しかし、 私の乏しい英語力ではよくわからない。誰か御教示下さい。

2. 誤植について

例によって誤植を挙げます。

ページ備考
9フェブレス型企業の創業ファブレス型企業の創業122-6
30同プリペイカード同プリペイドカード
90能力や適正に合った薬局へ能力や適性に合った薬局へ
112承認されてはいものの承認されてはいないものの
164要請で行われれうことは要請で行われることは
226民間会社のウエ-ト民間会社のウエート
平成11年施策18ソフトウェアの実用化ためのソフトウェアの実用化のための
平成11年施策23インターネット活用交流事業インターネット活用情報交流事業
平成11年施策30その主旨の徹底を図つたその主旨の徹底を図った
平成12年施策9中小企業事業団中小企業総合事業団
平成12年施策9(...研究開発費補助金)を行った(...研究開発費補助金)を行う
平成12年施策16普及・加入促進運動を協力に推進する普及・加入促進運動を強力に推進する
平成12年施策22その主旨の徹底を図つたその主旨の徹底を図る
付注・付表73United Statets Postal ServiceUnited States Postal Service

3. まじめなまとめ

まじめにまとめると、こんな感じになった。多少語句を原典とは変えています。

  1. 情報技術革新と中小企業
    1. 情報技術革新が中小企業に与える衝撃
      • よい点として、新たな{経営への挑戦を後押しする|事業機会をつかむ}道具として使える。
      • 悪い点として、従来とは性格の異なる新たな競争に直面する可能性をもたらす。
    2. 情報技術の導入・活用にあたっての考え方
      1. 目的が明確でないままに情報技術を導入すると、経営成果が悪くなる。
      2. 情報技術の導入・活用を成功させるためには、目的をはっきりさせる。一例は
        1. 業務の改善・再構築といった経営の合理化のための情報技術の導入
        2. 新たな事業に挑戦するなどの経営革新のための情報技術の活用
      3. 投資の英断をするには、次の情報を活用する
        1. 機器製造業販売員からの情報
        2. 独立系のソフトウェア会社
        3. 中小企業の情報技術導入に詳しいコンサルタントなど(中立的な第三者の意見)
        4. 同業者や仲間などで実際に使っている人の経験談、評価。
    3. 情報技術を活用する中小企業
      1. インターネットを活用した相互理解(取引先との、消費者との)
      2. 企業内ネットワーク(社内情報の有効活用、携帯{電話|情報機器}の活用
      3. 事務業務の効率化、データの経営への活用
      4. CAD/CAM による設計・生産工程管理
    4. 情報技術分野で活躍する中小企業
    5. 流通・物流分野の情報技術革新
      1. 小売業における情報技術導入・活用の効果 顧客データベース作成、POS システム導入、集団を単位とした情報技術の活用の必要性
      2. 物流分野における情報技術の導入・活用の効果
  2. 金融システム改革…
  3. 変化する労働市場…
  4. 中小製造業の…
  5. 構造変化…
  6. 少子…
  7. 創業・経営革新の事業環境
  8. 集積の創業・経営革新
  9. 創業・経営革新の重要性
  10. 金融システム不安…
  11. 金融システム不安・信用が与えた…
  12. 信用保証…
  13. 中小企業の景況の…
  14. 中小企業の設備投資動向
  15. 中小企業の雇用動向
  16. コンピュータ西暦 2000 年問題
  17. 中小企業の海外事業展開
  18. 下請企業の動向
  19. 中小企業を…
  20. 中小企業に…
  21. 中小企業の…
  22. 定義変更後の我が国の中小企業

4. ヨタ話

p.13 営業担当者が日参しないと発注しない...ある業界の営業部長の話である。 某省庁へ受注伺いに毎日行っていたところ、その省庁の課長は、「うーん、この仕事はもう頼むところが決まって いたけど、おまえさんは毎日来ているからここの分をおまえさんに回すよ」といわれたそうだ。 ちなみに、この某省庁では、業者が日参する度に自分の名刺を担当課長に渡すのが常識だという。だから、 発注先を決める時は、その名刺の数で決める、という噂があるほどだ。

p.29 グラフについて...たかだか2種類のデータしかない統計を、わざわざ第111-35図のように棒グラフを使って書く価値があるだろうか。 他には、第111-37図、第115-11図がある。 せっかく統計をとったのだから、せめて1σの範囲をつけるのが礼儀というものだ。

p.39 商店街カードについて...近くの商店街で割引券サービスを実施していた。そのうちの某食堂に入って メシを食ったところ、割引券をくれた。ところが、同じ商店街に入っている八百屋でつれあいが買い物をしたが、 割引券をくれなかった。そんなことでこの商店街への信頼が落ちた。今ではその八百屋では買わず、 大きなスーパーで買い物をしている。

第115-14図、1km メッシュにおける従業者数と商店数の関係(小売業)は、散布図に傾向線が重ねて書かれている。 この傾向線はくせものだ。どのようにこの線を書いたのかがまったく書いていない。 この線を試みに消してみるといい。右肩上がりの傾向線は見えてこない。

まりんきょ学問所中小企業診断士(休止中)勉強中小企業白書を読む(総論) > 中小企業白書を読む(2000年)


MARUYAMA Satosi