泌尿器科医・木村明の日記


ポジティブな期待



これがシドニーのポスターの結論部分です。日本語にすると、

「拡張した静脈が観察された群の方が治療成績が良く、超音波検査は桂枝茯苓丸が効く症例を選び出すのに役立つ事が確認できました。

「ただし、拡張静脈が映っている超音波写真を患者さんに見せたことが、ポジティブな期待(positive expectation)というプラセボ効果を生んだ可能性もあります。 」

となります。

後半は揚げ足を取られないための、予防線です。

ランダム化比較試験ではありませんから、私の発表は「超音波検査で拡張静脈があれば桂枝茯苓丸が効く」というエビデンスにはなりません。

ある薬が効くというエビデンスを得るためには、偽薬(ぎやく、プラセボ)とのランダム化比較試験が必要です。

偽薬でも治療効果が出ることをプラセボ効果と言います。

医者にかかって薬をもらったのだから良くなる、と患者さんが期待しているので、偽薬でも治療効果が出るのです。

プラセボ効果と同じことを、でも治療法として評価するのに最近使われる言葉が、positive expectation(ポジティブな期待)。


私が超音波写真を患者さんに見せて、

「あなたはうっ血の所見があります。なので駆オ血剤が効くと思います。」

と説明して、桂枝茯苓丸を処方するので、薬理効果以上の効果が出ているかも知れないのです。

患者さんのポジティブな期待を引き出して、それで不定愁訴が取れるなら、それでもいいと思うのです。

なので、プラセボ効果という言葉(にせもの、だまし、というネガティブな感じ)ではなく、positive expectationという言葉で発表を締めくくります。

昨日はのちめ不動帰宅ルートで中川駅まで。東京都市大学経由で日吉元石川線に出て、新石川立体~あざみ野大正堂。

日吉元石川線は3車線すべてに車が連なっていて、排ガスいっぱい。この帰宅ルートは不採用となりました。
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