上達のヒント 03/10/31更新
<基本編>
ピアノは耳で弾きましょう
ピアノは頭で弾きましょう
ピアノは楽に弾きましょう
鍵盤から指を離さずに弾いてみましょう
ゆっくり練習しましょう
暗譜について
注意点
<ピアノを再開なさる方へ>
以前は弾けたのに・・・
注意点
何を弾けばよいか
私の経験から
易しい曲はつまらない曲?
<趣味で始めた大人の方へ>
私からのメッセージ
ハノンは万能?
CDの利用法
<背伸びの功罪 >
その1
その2
<ベートーベンのソナタを弾くようになったら>
楽譜を用意しましょう
楽曲の分析をしましょう
CDを聞いてみましょう
録音してみましょう
発表会でうまく弾くコツは?
<基本編>
- ピアノは耳で弾きましょう
片手で弾き始めたときから、また両手を自在に操って演奏できるようになってからでも、ピアノは指(だけ)で弾くものではありません。耳で弾くものです。
自分が出している音をよく聴きましょう。左右の音量のバランスはどうですか? 思い通りの強弱が出せていますか。柔らかい音・硬い音、ペダルは濁らずに踏みかえているでしょうか。
自分ではきちんとやっているつもりなのに、先生に何度も同じことを指摘されたりしませんか?そんな時は、是非自分の演奏を録音してみましょう。ラジカセなどでいいのです。答えはすぐに出るはずです。
「あれ?」と思ったら、今度は気づいたことを修正してまた聞き比べてみて下さい。きっと、先生のおっしゃった意味がよく分かると思います。
また、自分で音色を工夫してそれをチェックするためにも一度聴いてみるといいですね。
- ピアノは頭で弾きましょう
ピアノは感性(だけ)で弾くものですか?
いいえ、違います。
自分が弾く曲の構成(形式・主題など)をまずきちんと理解してから練習に入りましょう。これもごく初歩から習慣づけることが必要です。
(初めはA-B-Aの形式 がほとんどですが。)
バッハなどバロック期の作品では対位法(2声なら二人の人が,3声なら三人の人が代わる代わる同じ「歌」を歌うような形式)について、古典派の作品ではソナタ形式について、きちんと勉強しておきましょう。
これは絶対に必要なことです。
演奏会レベルでは、楽譜の版による違いはもちろん、作曲家の作風から時代背景まで、楽曲の分析以外にも調べることは山ほどあります。
作曲家も「ひらめき」だけで作曲した訳ではありません。作った人も沢山考えているのですから、弾く人も音を出す前に(又は同時に)いろいろ調べてその上で、さらに「自分はどう弾きたいか」を考えましょう。
- ピアノは楽に弾きましょう
クラシックの奏法についてのみのお話ですが、初心者とプロを比べてみると、体の使い方が全然違うことにまず気づくと思います。
音量も、強弱の幅も全く違いますが、簡単に言うと、初心者は「コチコチ」、プロは「しなやか」です。
背中を丸め、肩を怒らせ、手首にも腕にも力がこもって、いかにも「一生懸命」を絵に描いたよう・・・、これが典型的な初心者の姿です。何だか腱鞘炎になりそう!な姿でもあります。
実はピアノニストは腱鞘炎にはなりません。なるはずがないのです。
だって、手首にも腕にも、全く無駄な力は入っていないのですから。逆に言えば、手首・腕の力をいかに抜くかが重大なポイントなのです。
これをマスターしないと全く先に進めなくなります。
手のひらにも全然力は入っていないのですよ。
冬の寒い日に、字も書けない、ボタンもはずせない位にかじかんだ手(指)には全く力が入りませんが、この状態でもピアノは弾けます。
これに近い状態でピアノを弾くのです。
指の第1・第3関節がしっかりしていればいいのす。
まず、椅子に座り、腕を伸ばして鍵盤に指を置きます。
このとき、ひじが 自分の体にぶつからないようにします。(椅子を前後にずらして調節。)
次に、ひじと手首の高さが、同じか,ひじの方がやや高いような位置になるように、座面の高さを調節します。
背筋をピンと伸ばし、一度肩を上げてから、ストンと落とします。腹筋・背筋を意識します。
腕・手首・手のひらを楽にします。これが一番「楽」に弾ける、疲れない姿勢です。
- 鍵盤から指を離さずに弾いてみましょう
常にそうしなさいということではありませんが、音が出るのは指先が鍵盤に触れてから、底まで押し切るまでの間の何ミリかの間です。
この間をすばやく打鍵すればフォルテ(強い音)に、ゆっくりそっと押せばピアノ(弱い音)になるのです。すべてはこのスピード次第です。(体重をかける場合もありますが。)
上からたたきつける必要はありません。
このスピードをコントロールし易くするために、フォルテでは指の形は鍵盤と垂直に(いわゆる 卵をつかむような形に)、ピアノでは指を伸ばして指の平らな面(指紋を押し付けるような感じ)で弾けばよいのです。無駄な動きがないか、チェックしてみましょう。
- ゆっくり練習しましょう
速く上手に弾けるようになるためには、ゆっくりゆっくり練習しましょう。
速く弾くと、細かいところが雑になっても気付きにくいのですがゆっくり弾くと大変目立ちます。そこを重点的に練習すると効果的です。
特に初心者の場合は、新しい曲なら最初の日は片手ずつ別々に練習し、次の2日間もゆっくり別々に練習します。
4日目に両手を合わせる時には片手で弾ける速さより、さらにゆっくり弾いて下さい。
楽譜をよく読んで指示を守って弾ける速さ、となるとかなりゆっくりのはずです。
あとの2日でほんの少しだけ速く弾けるようになればOKです。
1回目のレッスンまでに指定通りの速さで弾くのは上級者でもなかなか難しいのですから。逆説的ですが、「速く弾けるようになる」には、「できるだけゆっくり練習すること」が一番の近道です。
- 暗譜について
暗譜とは楽譜を見ないで弾くことです。
これが得意な人と苦手な人に分かれてしまいます。得手不得手とうまさには相関関係はないらしいので安心して下さい。
しかし、最初から暗譜の練習を取り入れるのがよいでしょう。
普通は短い曲なら、2〜3週間練習しているうちに自然に音だけは覚えてしまうでしょう。
その段階で今度は楽譜に書いてあるすべての指示(強弱、速度、曲想、繰り返しなど)を意識的に覚えます。
もし、身近に楽譜の読める人がいれば、暗譜の練習の時に楽譜を渡してチェックしてもらいます。又は、カセットテープなどに録音してあとからチェックしましょう。
暗譜の意味は何でしょうか。見ないで弾くのが格好いいから?
・・・よく物事を「体で覚える」と言いますが、指や腕の動きに関しては確かに体で覚えないと、反射的に指が動きません。
ただし、それだけが目的ではありません。頭と体を車の両輪として使うためです。
頭は作曲者の指示だけを思い出すために使うのではなく、自分の解釈・やりたいことを実行するために使うのです。
反射的に動く体と指の上に、さらに司令塔が載っている、といったイメージです。
なお、究極の暗譜は、(人によっても違うでしょうが)頭の中に、元の譜面がそのまま写ります。簡略化してイメージするのではありません。目の前に楽譜があって、あたかもそれを見ながら弾くような感覚です。
そして、そのページごとに、自分の意図(ここはこんな感じで、ここはもっと硬質は音で、etc.)が書き込んであるのです。
この1歩手前の段階だと、ちょっと他の考え事(今日の夕飯は何にしようかな・・など。)をしていても体は勝手に動いて演奏を続け、頭と体が連動していない瞬間が混じります。
2歩手前?だと必死に「次はこうだったっけ?」と考えながら弾いています。
- 注意点
1.弾いている時の手と指の様子を確認しましょう。小指や親指がピーンと突っ張っていませんか?これはよくない弾き方を示しています。手に不要な力が入っているから指が立ってしまうのです。特に小さい生徒さんの場合は、お母さんがよくチェックしてください。
指が小さくて細いと打鍵が大変ですが、特に小指は自然に丸くしないで伸ばしたまま、指先ではなく関節のあたりで押さえていることもよくあります。これも小指で弾く時に手のひらが返ってしまい、手首がふらふらする原因になります。
どちらの場合も、小指は細くて弱いので、訓練で少し強くなるまでは、絶対に無理して他の指と同じような強い音を出そうとせず、手のひらと手首の力を抜いて、指が自然に丸くなるような形になっていることを確認して、(弱くていいので)打鍵するようにします。
感覚としては、小指と親指の付け根の(手のひらの)筋肉を緩める(やわらかくする)意識を持ってください。
2.音を出すたびに体が細かく上下しませんか?これも体の使い方が間違っています。直立不動とは申しませんが、特に初歩のうちは、背筋をピンとして、よい姿勢にしたら、肩の力を抜いて、腕から先は力を抜きます。弾いている時には身体を揺らさないことが大切です。腕は、(腹筋・背筋を使い、姿勢を保ったら)肩を支点にして、腕から先が自由に動く感覚を身に付けてください。
<ピアノを再開なさる方へ>
掲示板でもよくご相談を受けるので、ここで回答させていただきます。
- 以前は弾けたのに・・・
ピアノを10年以上続けてベートーベンやショパンまで弾けた方でも、非常に残念ですが、ブランクがあると元に戻ってしまいます。そのブランクが5年・10年となれば、再開するというよりは、改めて最初からやり直すのだとお考え下さい。
勿論、楽譜は読めますし、以前に弾いた曲ですから頭の中には「完成図」があります。でも悲しいかな、その完成図のようには今すぐには弾けないのです。
- 注意点
ピアノは筋肉を使うので、練習をしなければ、その筋肉は元に戻ってしまいます。ですから、再開する方は指のリハビリをするつもりで、是非易しい曲から始めてください。特に、以前習っていた時に、手首・肩がよく痛くなったり、凝ったりした方は、必ずよい先生を探して正しい弾き方の指導を受けて下さい。そうでないと、大人の方は熱心な余り、誤った弾き方を続けて腱鞘炎になる危険さえあります。
- 何を弾けばいいか
易しい曲といっても以前と同じようにバイエルなどから始めなくてもいいのです。今は特に現代曲で楽しい曲が沢山あります。このHPの初心者向けの教材のページも参考になさって下さいね。CDのついた楽譜も沢山出版されています。
是非ご自身で楽譜を探しに行ってみてください。またネットでも購入できますよ。
- 私の経験から
前はあんなに弾けたのに、という気持ちは私にもよく分かります。というのは、私も大学(一般大学)の1年の時に、1年間家にピアノの無い生活を送ったからです。事情があって、寄り道を余儀なくされ、実家は静岡、下宿先は東京で、ピアノを置けなかったのです。
それまで毎日練習を続けてきた訳ですから、私もピアノを借りて弾けるところを探しました。音楽教室のアップライトやヤマハの教室のグランドを週に2,3日1,2時間借りて練習し、大学の夏休みなどには実家へ帰って練習しました。
4月からのこの生活で、8月の夏休みには、もう涙が出るほど指が動きませんでした。2年生になったところでようやく家族も東京に戻り、また毎日弾けるようになったのです。全然弾かなかったわけではなく、たった1年間、練習時間が数分の1に減っただけですが、それを取り戻すのには2、3年かかりました。
30年以上続けてきた今でも、もし半年以上ピアノに触れなかったら、私も全く弾けなくなってしまうのです。ピアノとはそういうものなのです。
勿論、続けてきた年数や、ブランクの長短によって「復帰」にかかる時間は大きく異なりますが。
せっかく再開しようとして、弾けない自分に悲しくなって諦めてしまう人が沢山いると思います。だからこそ、やめずに続けることを別のぺージでもお勧めしています。どうぞ、今はリハビリと思って、あせらず・たゆまずもう一度初歩から練習を再開してください。以前弾けたのですから、全く初めての方よりも早く上達します。
- 易しい曲はつまらない曲?
また、子供の頃には”つまらない”と思った曲も、再度練習してみると実はとてもいい曲だなあと思ったりします。楽譜を探しに行けば、最近は洒落た曲も沢山あるのね、と気付きます。
そんな発見をしながら、またピアノを好きになって長く続けられるようにと願っています。
<趣味で始めた大人の方へ>
- 私からのメッセージ
ピアノは大人になってから始めても、ちゃんと上達できます。ご安心ください。(また、再開なさる方へ:「20年前にはソナタアルバムまで弾けた」といっても、もしその間全くピアノに触れていなかったらゼロからのやり直しです。楽譜が読める以外はまた1から始めてください。)
楽譜が読めなくても大丈夫です。全く初めての方には「バイエル」よりも「バーナム・ピアノ教本」の第1巻を使うことをお奨めします。(「入門書あれこれ」のページをご参照ください。)
注意していただきたい点は、必ず先生につくことです。時間には限りがあります。先生に師事することで、無駄な時間と手間を省けるだけでなく、無理な練習で指や手首を痛める危険がなくなります。
大人の方は熱心さの余り、腱鞘炎になる危険が大です。無駄な力を抜き、正しいフォームで弾けるようになるまでは、先生につきましょう。
- ハノンは万能?<
よくご相談を受けるのが「ハノンはやった方がいいでしょうか。」というものです。「ハノン」は初級から上級までの技術の習得を目的とした教本で、練習曲の代名詞のように使われるほどポピュラーです。
運動で言えば筋力トレーニングに当たると言えそうです。勿論これを先生の指導の元でしっかり練習すればそれは技術的には向上するでしょう。特に小さい生徒さん達にはある意味で必須の教本かもしれません。
しかし、私は大人には殆どの場合不要と考えます。
1つは、練習時間の問題です。もし毎日90分程度練習時間が取れる初級の方でしたら、使用なさるのも有効でしょう。しかし、それ以下の練習時間しか確保出来ない方には不向きでしょう。勿論使えば無駄にはなりませんが。
練習は必要ですが、練習の目的はなんでしょうか。ある曲をうまく弾けるようになるためですね。それならば、その曲の、うまく弾けない箇所を取り出して集中的に練習すればいいのです。
実は殆どの場合、特別な練習メニューは不要です。とにかくそこだけゆっくり練習すればよいのです。両手で弾けなければ片手で、両手で弾けるなら、絶対に止まらず弾き直さずに弾ける速さで何度もさらいます。
練習するうちに、だんだん正確に弾けるようになり、その速度も上がってきます。それで必要十分です。
ハノンだけ一生懸命に練習して、弾きたい曲の練習時間が大いに減ってしまっては本末転倒です。
ただ、最近は従来のように同一音型を3オクターブにわたって繰り返すのではなく、1オクターブに書き直した版が出ています。
1〜20番までのものや、20番ずつ別冊になっているものもあります。(楽譜の選択のページをご参照下さい。)
このくらいの分量なら時間的にも負担にならず、基礎訓練として取り入れることは効果的だと思います。
- CDの利用法
聞いていて楽しい曲を練習するようになると、大抵の曲はその演奏をCDで聞くことができます。とくに憧れの曲ならば、是非聴いてみましょう。
その演奏を真似する必要はありませんし、その通りに弾こうとするのもナンセンスです。しかし、自分が弾ける曲を他人の(特に上手な人の)演奏で聞くと、今までとは聞き方(聞こえ方)が全く違うことに気づくと思います。
その演奏で大いに共感する箇所、いいなあと思う箇所は真似してもいいですし、あれ?と思う箇所はその原因を考えると大変勉強になります。
また、練習を始める前に聞けば、その曲のイメージを描くことが出来ます。譜読みの労力がかなり減るでしょう。それは邪道でも何でもありません。便利なものは大いに利用してください。
- 背伸びの功罪
<その1>
背伸びして弾くのは楽しいものです。でも、程度によるかもしれません。
私が生徒さんにさせる「背伸び」は無制限ではありません。例えば、原曲のまま弾くにはどうしても無理なレベルなら、簡略版を用意するか、「さわり」だけやみる、とか。
(実際にちょっと大きな生徒さんに「憧れの曲は?頑張って弾いてみたい?」と聞くと、「とても無理だと思うのですが・・・」と言いながら挙げた曲は、十分手を伸ばせば届くレベルのものばかりでした。その意味では、弾いてみたい曲があれば、恥ずかしがらずに一度先生に話してみるとよいと思います。)
たとえば、普段の練習時間の2倍程度までで弾けるようになりそうなら、適正?「背伸び」レベルだと思います。ピアノの目的は、特に趣味の方にとっては様々です。価値観の相違もあるでしょう。私が自分の考えを押し付けるつもりもありません。
が、もし私の生徒さんだった、という仮定で述べてみます。
ある曲を、本来指定された速さ(Allegroとか。)の3/4以上で弾けるようになるのに3ヶ月以上もかかるのであれば、得るものより失うものの方が多いと考えます。要求されるテクニックの面で数段上の曲だからです。
そのような曲を半年,1年とかけて練習しても要求水準には達しないでしょう。もし速度の面で仮に達したとしても、残念ながら形をなぞっただけ、指が回っただけで終わってしまう可能性が大です。
自分の技術的なレベルより少し楽な曲を弾いてみると良く分かりますが、ゆとりがあるので、タッチ(音色)も弾きわけられますし、聴く人にもそれがよく分かります。自分で弾いてみて「お、上手になったなあ!」と感じられるはずです。
ピアノの本来の目的は、正確に、速く弾けることではありません。それなら機械が弾けばいいのですから。
少しゆとりのある曲の中でなら、自分はここをこう弾きたい、こう思う、と演奏の中で十分主張できるでしょう。例えば、人に聞いてもらって相手に感じるものがある、という完成度と言えるかもしれません。
あまりに背伸びをすると、そういう中身が全部切り捨てられてしまう危険があります。難曲を「弾けた!」という達成感はあるかもしれませんが、ピアノが本当にうまくなったと言えるかどうか。
よく聞く話ですが、「日本一の高さの富士山に登った」から「国内のどの山でももう登れる」と考える人、「百名山を完登した」ために「もう山を登る意欲が無くなった」人がいます。が、よく考えてみればすべて分かることです。
以上が、私が「自分に合ったレベルの曲の完成度を高めるような練習が一番」と言う根拠です。
<その2>
先日掲示板でも回答したことなのですが、いつも背伸びの曲ばかりだと弊害も出てきます。
趣味として習う場合は、好きな曲を弾くのはとても良いことですが、実力と比べて非常に高い曲ばかりをやっていると上達できません。
というのは、ピアノは「間違えずに一通り弾ける」レベルと「楽曲として一応仕上がった」というレベルでは天と地ほどの開きがあるのです。機械が弾くのと人間が弾くのとの違いもここから生まれます。
「背伸び」の曲では一通り弾けるまでに相当の時間がかかるでしょう。3ヶ月〜6ヶ月かかるかもしれません。目安として、1ヶ月で一通り弾けない曲は、あなたにとって「背伸び」です。
3ヶ月で指定の速度で弾ける場合は、まだ先に進んでもいいのですが、それ以上かかった場合は一旦棚上げした方がいいと思います。(練習を続ける限りいつかまた弾ける日がきますし、その時に今までの練習が無駄になることはありませんから。)
このような曲ばかりを取り上げると1年に2,3曲しか練習できませんね。これも非効率的です。
「一通り弾ける」ではタッチの違いによる音色の変化(曲想など)をつける段階に進めないうちに何ヶ月も経ってしまい、テクニック的にもレベルから見てそれを求めるのは不可能でしょう。
となると、先生としては”無駄な努力と時間”をこれ以上生徒にかけさせたくない、と考えます。そして、大体弾けたら「この辺にしておきましょう。」となる訳です。これではピアノという楽器の本当の音を知らない、出せないで終わってしまいます。こんなつまらないことはありませんね。
ある程度の時間で一通り弾ける曲(つまり、易しいかなと思う曲)で細かい音色の変化やタッチの違いを教えてもらうようにしたいものです。
ここはもっと「優しく」といわれたら、「優しく弾くって、どうすればその様な音になりますか。」と聞きましょう。できるようになるまで説明を受け、指導してもらいましょう。
先生が何も言わない時は?・・・曲には作者の指示(テンポ・曲想・fやpだってそうです。)が書いてあります。それをまず楽語事典で調べましょう。(調べたら楽譜に鉛筆で書き込みましょう。)
次に、指示が分かったら、そのとおりに弾く練習をして、それをちょっと大げさに演奏すれば先生も気付いてくれますし、あなたの意欲を大いに感じて、一層細かくレッスンしてくれると思います。
今までより大変になるし、練習もそれなりに必要になるでしょう。しかし、きっと弾くことが今まで以上に楽しくなり、自分から練習しよう!上手になりたい!と思うようになると思います。
ピアノの本当の醍醐味を知らずにピアノを語ることなかれ!です。
大変だけど、ずっと楽しいし、面白いし、練習の楽しみが生まれると思います。
<ベートーベンのソナタを弾くようになったら>
- 楽譜を用意しましょう
まずはヘンレ版かペータース版を用意しましょう。(出来れば両方を。またはさらに他の版(ベーレンライター版)等も。)
ちょっと散財ですが、気分も改まります。もしあなたが「背伸びしてみました。」という場合はペータース版がいいかもしれません。指示がより詳しいですから。
- 楽曲の分析をしましょう
もう受身で練習するだけでは通用しません。ベートーベンの作曲の意図を理解することが絶対に必要です。(ソナタ形式とは何か、が説明できないようでは門前払いですよ!・・・でもここで勉強しておきましょう。)
ベートーベンのソナタに関しては沢山の本が出版されています。必ず買って読みましょう。鉛筆片手に楽曲の分析をします。第一主題はこれ、副主題はこれ、ここから展開部、というように楽譜に直接書き込みます。その上で頭の中にも全体像と、自分の演奏の”設計図”(ここでこう弾きたい)を描いていきます。
- CDを聞いてみましょう
もう持っているかもしれませんね。実に様々な演奏家が録音しています。CDの帯の文言や、ネット上のショップのそれぞれのCDの解説を参考にするといいかもしれません。
まずは、「これぞ正統派・お手本」といわれるものと、自分のフィーリングでもう1〜2枚買ってみましょう。比較するととても興味深いと思います。
大切なことは、まずは自分で楽譜を隅々までよく読んで、ベートーベンの意図を把握します。勿論楽語辞典は買いましょうね!指示を調べておくのは基本中の基本です。(時にはドイツ語の指示もあります。)
練習を重ねていく間にご自分なりの曲の姿が見えてきます。迷ったらまず第一に作曲者の意図・指示を考えます。このためには複数の楽譜を比較検討することが役立ちます。勿論本も読んでください。
そうするうちに、最初にCDを聞いたときの印象と、自分なりの解釈が出来た時に他の人の演奏を聞いて受ける印象が変わるかもしれません。いや、むしろ変わるはずです。それでいいのです。
- 録音してみましょう
自分がどういう音を出しているのか、必ず聞いてチェックしましょう。速さ1つとっても、自分がこんなテンポで弾いていたのかと思う時もあります。もっと間を空けた方がいいな、とか、ここはもっとたっぷり(ゆっくり)したいな、とか感じるはずです。
自分ではかなりrit.しているつもりなのに、まだ足らないとか、意図した通りに聞こえているかも重要なチェック項目です。
また、録音すると緊張するかと思います。それもよい訓練になります。発表会で緊張する方、これでかなり慣れますよ。プレッシャーをかけた中での練習も必要です。
- 発表会でうまく弾くコツは?
何よりも練習時間をかけることが第一ですが、他に挙げれば、間違えても止まらずに弾きつづけることでしょうか。演奏会で常にノー・ミスで弾くのは無理です。問題はそこで止まってしまってはいけない、ということです。ミスに動じないことです。
そのためには、曲が仕上がってきたら、朝起きてすぐ弾いてみることです。間違えずに80点の演奏が出来るようになっていれば、発表会でも大丈夫です。
また、誰かに聞いてもらって弾いてみることです。これも緊張しますよね。この緊張に慣れ、負けないようにトレーニングしてください。
究極のコツは、何度も舞台で弾くことです。あらゆる機会をつかんで、人の前で弾くことです。自分の部屋の自分のピアノでだけ、いくら上手に弾けても全く意味がありません。
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