アメリカ版TENNIS
1998年9月号
サウスポーを怖がらないようになろう
文:Pete Sampras



左利きのプレーヤーに対する辛い敗戦の後、彼らへのやり方を学んだ

アマチュアでもプロでも、右利きのプレーヤーがサウスポーに苦労するのは珍しくない。人によっては、左利きとの対戦をただ嫌う。左利きのアスリートには、ある種の謎めいた雰囲気があり、彼らはそれを賢く活用するのだ。

人口の13パーセントは左利きだそうだが、この20〜30年間に、左利きの選手がグランドスラム・トロフィーを手に入れた割合は、それより高いようだ。僕がいつも目標にしてきた偉大なオーストラリア人、ロッド・レーバーは左利きだ。僕がプロになった頃、最高のサウスポーの2人、ジミー・コナーズとジョン・マッケンローは、まだ現役だった。オープン化時代の2人の女性トップ・チャンピオン、マルチナ・ナブラチロワとモニカ・セレスも左利きだ。

僕のキャリア最高の経験の1つは、今年の7月、左利きのゴラン・イバニセビッチを下して、5回目のウィンブルドン・タイトルを獲得した事だ。そして最悪の経験の1つは、1991年デビスカップ決勝で、2人の左利きのフランス人に負けた事だった。僕はアンリ・ルコントとギー・フォルジェ双方に負けて、フランスは3-1でアメリカへの勝利を決めた。

多くの人は、僕がデビスカップのルーキーだった事を敗戦の原因としたが、後のコーチ、ティム・ガリクソンは、技術的な理由があったと感じていた。彼らのサービスをリターンする際、僕は正しいポジションをとっていなかったのだ。

技術面・精神面のカギとなる修正をすれば、アキレス腱は有利さへと転じる。1994年以来、左利きに対する僕の成績は56勝5敗だ。厄介な左利きのプレーヤーが君を負かさないようにする、いくつかのアドバイスを提供しよう。

リターンの位置:左へ移動しよう

テニスのスコアシステムは、左利きのプレーヤーにとって有利だ。左利きのスライスサービスは、アドコートでワイドに切れていく。それゆえ最も重要なゲームポイントで、左利きはスライスサービスを効果的に利用できる(30-40、40-30、デュース時のアドバンテージ・サーバー、アドバンテージ・レシーバーといった場面)。

さらに有利なのは、アドコートにおける左利きのスライスサービスは、右利きのバックハンド―――通常弱い側―――へ飛んでくる。それゆえ、何よりもそのポイントを取りたい時、サウスポーが右利きの弱点を突いてくるのは、ごく自然な事だ。

91年にルコントとフォルジェに負けた時、僕はリターン・ポジションを調整しそこなった。アドコートのポイントで、僕はいつもと同じく、
左足がシングルスのサイドラインにかかる辺りに立っていた。このポジションはフォア側を空けすぎずに、右利きのサーバーが僕のバックハンド―――あまり強くない側―――に向かって打つのを、より難しくさせる。

しかしフランスでは、それでは充分でなかった。ルコント、フォルジェがアドコートでワイドに打つサービスに対し、僕はラケットを突き出さなければならなかった。彼らは簡単に僕のバックへサービスを打ってきた。

当時、僕はティム・ガリクソンと組んだばかりだった。彼は僕に、
もう3フィートほど左で構えるよう勧めた。シンプルなアドバイスだったが、大きな助けとなった。(ティムの双子の兄弟、トムは左利きなので、彼はいつも左利きとプレーしていて、あらゆるコツを掴んでいたのだ。プロだった頃、ティムはマッケンローを下した事があるし、左利きのビッグサーバー、ロスコ・タナーとの対戦成績はとても良かった)

ベストのポジションを掴むため、左利きと練習する時には、いろいろ違ったリターンのポジションを試してみよう。厄介なワイドサービスの数を減らそうと、外側に構えすぎると、相手は空いているセンターにエースを打ち始める。
理想的なスポットは、ワイドサービスをカバーし、なおかつセンターへのショットにも届く地点だ。

リターンのストローク:水平に外側へ

かつて僕はバックのリターンを打つ時、フルスイングしていた。これはウィンブルドンの芝のコートでは、とりわけ手に負えなかった。振りかぶってから、振り抜く時間がないのだ。最初の3年間、僕は2回戦を突破した事がなかった。左利きにもやられた。

僕はバックのリターンをブロックし、バックスピンをかける事を学んだ。グラウンドストロークなら、下から上への長いスイング軌道を描くのも多分オーケーだろう。しかしハードなサービスに対するには、あまりにも危険だ。
バックスイングを短くし、ラケットヘッドを水平に保って振る事で、ボールに堅実に当てる可能性が高まる。

このアドバイスは、どんなプレーヤーに対するリターンにも役立つが、特に左利きの相手に対しては重要だ。デュースコートでもアドコートでも、
左利きのサービスは、自然と右利きのバックハンドから遠ざかっていくので、もし大きなスイングをすると、ボールに届くのがとても難しくなるのだ。同じくフォアハンドのリターンでも、バックスイングを小さくすると、より安定させられる。

リターンのステップ:角度を断ち切ろう

アドコートで左利きのワイドサービスをリターンする時、ごく自然に真横にステップする傾向がある。

しかしただ外側へ動くと、左利きのスライスサービスはどんどんコートから遠ざかっていく事を思い出す必要がある。たとえボールを返せたとしても、次のショットに対して遠く離れた地点にいる事になってしまう。

それよりも、左利きのスライスサービスの角度を断ち切ろう。
左利きの相手がワイドのサービスを打つ時は、45度の角度で踏み出し、ボールが遠ざかっていく前に捕らえよう。

前に踏み出して早くボールを打つ事で、相手がサーブ&ボレーを企てている時にも有効になる。回転のなすがままにさせず、身体の正面でリターンを捕らえ、ためらわず攻撃的にプレーしよう。

グラウンドストローク:バックを攻撃しよう

世界最高の左利きの2人、ペトル・コルダとマルセロ・リオスは、フォアよりバックの方がいいが、彼らは例外である。右利きも左利きも、たいていのプレーヤーは、フォアよりバックの方が弱い。

もし君が右利きなら、左利きのバックを攻めるのはより簡単だ。クロスのフォアはそちらへ向かうからだ。君にとっていい組み合わせになるだろう。

もちろんこれは、左利きの相手もより強いショット、フォアを君のバックへ打ってくる事を意味する。しかしこの事を気にしすぎてはいけない。多くの右利きのプレーヤーは、左利きの有利な点にばかり注意が向き、不利な点に目を向けない。

ポジティブに考えよう。たとえば、デュースコートでのサービスの有利さを考えてみよう。君のサービスは左利きのバックから遠ざかっていくのだ。

また一般的に、右利きのプレーヤーは左利きと対戦する時、悩みすぎるようだ。左利きに対してどこへ打つべきかに囚われすぎて、硬くなってしまう。確かに、おそらく左利きのバックを攻撃すべきだろう。しかしすべてのボールをそこへ打っていては、相手に読まれてしまう。

左利きと(右利きとでも)プレーする時にいちばんいいのは、いろいろ取り混ぜて、相手に読まれないようにする事だ。もし君が予想のつきやすいプレーをすると、餌食になってしまう。

準備:練習によって完璧を期そう

左利きと対戦する時、プレーのパターンは、ふだん右利きに対してやっている事の逆になる。それを常に念頭に置かなければならない。何事も、いつもの習慣通りにいかないからだ。

たとえば、フォアのアプローチをダウン・ザ・ラインに打つと、それは左利きのバックではなく、フォアに打っている事になる。
ロブは相手コートの右側へ上げる事も覚えておこう。そうすれば彼がオーバーヘッドを打つのを難しくさせる。

この違いに慣れるため、できるだけ多くの左利きプレーヤーと練習しよう。重要な試合で左利きと対戦する前に、
スピンのかかり方の違いを理解するのはとりわけ重要だ。左利きの実体を知るほどに、彼らと対戦する時にも心地よく感じるようになるだろう。

左利きと対戦すると分かったら、ポールは左利きのプロとヒッティングする機会をアレンジするようにしてくれる。ツアーでは、みんな左利きと練習するのを嫌がるが、次のラウンドで左利きと対戦するとなると、突然、彼らは引っ張りだこになるのだ。


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