アメリカ版TENNIS
1997年11月号
土壇場を切り抜けよう
文:Pete Sampras、プレイング・エディター
  Alexander McNab


  世界1位のプレーヤーが、接戦に勝つ方法を伝授する


土壇場―――勝敗を決する第3もしくは第5セット、あるいはタイブレーク、あるいは第1か第2セットの4オールの場面でさえ―――は、トップの選手とそれ以外とを分ける時である。

土壇場では、すべてのポイントで頑張らなくてはならない。終わりは近いからだ。プレッシャーを乗り切るために、長年の練習・身体が覚えている事を信頼すべき時だ。

それでも時にはプレッシャーが大きすぎて、対処できず、硬くなってしまう事もあるが、それは誰でも経験している。プレッシャーに押し潰されないようにする方法をいくつか挙げてみよう。

経験を頼りにしよう

硬くなるのを避けるのが、土壇場でうまくやれる唯一の理由ではない。その一部は、単に場数を多く踏んでいるかどうかである。どうやって勝つかを学ぶには、たくさん試合をする必要がある。よい競い合いを数多くやる中で、自分を試そう。


1997年オーストラリアン・オープンでドミニク・ハバティに勝てたのは、おそらく経験によるところが大きかった。第5セットでブレークダウンというピンチで、僕はレベルを少し上げ、より堅実にプレーし始めたが、彼は何回もダブルフォールトを犯した。

実際、名声・評判で試合に勝つ事もあるのだ。ひとたび勝つようになると、自分に勝利を期待するし、重要なポイントで自分を信じる事ができるのだ。

決断力を身につけよう

プロになって1〜2年間は、ベテラン選手に対して、勝つチャンスもあった接戦に負けたのを覚えている。第3セット4オールといった場面で、彼らは切り抜けるのだが、僕はできなかった。自分がよく分かってなかったし、正しい事をやっているのかどうか自信がなかったのだ。どこへサーブを打つべきか? ネットに詰めるべきか、ステイバックすべきか? そんな風に優柔不断だと、たいていは勝つ事はないだろう。どんな結果になろうと、心を決めよう。

賢明なプレーをし、リラックスしよう

現在は、僕は充分な接戦の経験を積み、自分が何をしたいのか分かっている―――賢明で安全に、なおかつ攻撃的にプレーするという事だ。時には攻撃的になりすぎて、サーブやフォアハンドをミスする事もある。僕にとってのベストは、コントロールしつつ攻撃的になる事だ。

もしかしたら君は一生懸命にやりすぎるかも知れない。僕もそうなった事がある。完璧であろうとして、懸命にやりすぎてしまった。ただリラックスして成り行きに任せる事も必要だ。突然すべてがうまく行き、タイミングも合えば良いショットも打てる、という状態になるかも知れない。それはただ起こるのだ。

ポジティブでいよう

「やり続けるんだ」とか、自分を励ますために何か言う時もあるが、実際にポイントをプレーしている際のベストは、自分が頼みにしてきた事、自分をここまでにしてくれた事をやる事だ。僕が土壇場でベストのプレーをする時は、あまり考えすぎたり、物事に過剰反応したりしない時だ。多分この取り組み方は、君にもうまく行くだろう。

土壇場を切り抜けるのに役立つ、他のアイディアをいくつか挙げてみよう。

時間をとる

ベストのプレーをしている時は、ポイント間も一定のリズムでプレーする。しかし重大なポイントを迎えたような時は、ストリング・ツールでストリングスを整えたり、素速くタオルを使ったり、予備のボールを見てから投げ戻したりする。

もし君が僕のようなタイプだったら、事を急ぐとトラブルに陥る。
だからポイント間をほんの2〜3秒スローダウンし、深呼吸でもしよう。

カギは、重要なポイントを始める前に、自分が準備できているかどうかハッキリさせる事だ。

タイブレークの際のヒント

タイブレークではあらゆるポイントがとても重要なので、より保守的にプレーする時だ。少なくとも僕はそうしている。サーブのペースは変えないかも知れないが、それに続くショットは、少し控えめにする。

もしベースラインから6フィートも後ろにいたら、攻撃的なショットを打ったりはしない。攻撃できるまで忍耐強くやる。短い返球を待ち、それからいいストロークを打つ余裕を持とう。しかし安全にやりすぎると、トラブルに陥るかも知れない。適切なラインを見つけなければならない。

リターンに関しては、たとえばマイケル・チャンと対戦していて、タイブレークでセカンドサーブの場面だったとしよう。彼は硬くなって浅いサーブを打つかも知れない。そうしたら僕はフォアハンドを叩きつける事ができる。一方ゴラン・イワニセビッチと対戦するなら、とにかくリターンを返し、彼にプレーさせようとするだろう。

最後まで闘おう

土壇場を戦い抜く意志の力については、個人の選択だと思っている。30分以内にシャワーを浴びる事もできれば、あきらめずに戦い続ける事もできる。ひとたびそういう立場に立てば、自分がどういう選択をするか知る事になるが、その立場を経験するまでは分からないだろう。肉体的に疲れ果てるつらさ、精神的な苦しさ、あるいはその両方であろうとも、どこまで苦しみをくぐり抜けようとするかという、個人の選択なのである。

今年のオーストラリアン・オープンのハバティ戦は、暑さのため、テニスにはひどい日だった。2人とも暑さに苦しんだが、僕は最後まで頑張る事ができた。
自分はあきらめないぞと相手に知らしめる態度を当然だと思えれば、申し分ない。

得意のショットで主導権を握ろう

重要なポイントでは、僕はバックハンドよりフォアハンドを打ちたい。そのショットで何かできるからだ。重要なポイントでは、リターンよりサーブを打ちたい。ベースラインよりもネットにいたい。最終的に主導権を握る側でいたい。

土壇場では、試合の流れを決める者でありたい。つまり、得意のショットを活用できるようなタイプ、あるいはパターンのプレーをするべきだ。

僕は土壇場で自分の得意なショットを打っていると、事は自分の望むように運ぶだろうと感じる。


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