アメリカ版TENNIS
1997年1月号
コート中央を支配する方法
文:Pete Sampras、プレイング・エディター
  Alexander McNab


それはビッグ・フォアハンドの時代に、
   勝つためのカギである


数年前のグランドスラム決勝の前、勝敗を決めるものは何かと訊かれた事がある。「コート中央を支配する者が勝つだろう」と僕は答えた。

その答えの意味はこうである。試合の勝者は、通常センターで支配的なポジションを取り、相手をサイドからサイドへ走り回らせる。

クラブプレーヤーなら、スローな深いショットを5回中央に打ち、それで勝つ事ができる。しかし技量が上がるにつれ、通用しなくなってくる。そしてプロの世界では、全く通用しない。なぜか? ビッグ・フォアハンドがあるからだ。

コート中央を支配するとは、相手をコート中央から遠ざける事である。ジム・クーリエ、アンドレ・アガシ、マイケル・チャンといったビッグ・フォアハンドを持つベースライナーは、構える余裕を与えた時に、最も危険な存在になる。

僕が単純にラリー・バックハンドを中央に打つと、彼らはインサイド・アウトのフォアを叩き、僕を走り回らせる事ができる。そして通常、走れば走るほど、僕はそれらのポイントを失う事になる。
インサイド・アウトのフォアハンドを使って、敵をコート中央から遠ざける とのコメントのあるイラスト


1996年USオープン決勝では、僕は決してチャンにセンターを支配させなかった。ラリーの中で、僕はクロスのバックを深くワイドに打ち続けた。彼のクロスのバックが短くなると、僕は踏み込んで堅実なバックをダウン・ザ・ラインに打った。

可能な時は回り込んでフォアを打ち、彼をコートの外に走らせた。そしてサーブやアプローチショットの後にネットで攻撃した。基本的に、僕はコート全体を使ってセンターを支配した。そのやり方の詳細をここで見てみよう。

フォアハンドを打てる態勢を作る

今日のベースライン・ラリーの目的は、フォアハンドでポイントの主導権を握る事である。
僕の狙いは、インサイド・アウトのフォアを相手のバックに打てる態勢に入る事だ

フォアを打てる態勢に入ったら、自分がコートを支配すべきだと感じる。1本目のフォアに対して相手がきちんと返してきたら、もう一度フォアを相手のバックに打つ事ができる。もし返球が短かったら、相手のフォアのコーナーへダウン・ザ・ラインを打つ事もできる。

相手をセンターから遠ざけ続けるため、バックハンドを打ち分ける

いつもフォアハンドを打つ態勢に入れるわけではないので、基本的なラリーのストロークは、ワイドへのバックのクロスになるだろう(下左の写真)。それをチャンに対して上手く打てた。バックの打ち合いでセンターを支配する事はできないかも知れないが、少なくとも相手もできない。

ニュートラルなパターンを破り、センターの支配権を得るカギとなるショットは、ダウン・ザ・ラインへのドライブ・バックハンドである。ここ数年かなり上達し、現在では、僕のベースライン・ゲームの主要な要素となっている。ダウン・ザ・ラインへのバック(下右の写真)で、オープンスペースを作り出す事ができるのだ。

たとえば、クーリエは回り込むためにバックのコーナー寄りに構えるが、僕はバックのダウン・ザ・ラインを打って、1カ所に留まってビッグ・フォアハンドを打ち続ける事はできないぞと知らしめなければならない。

その後もし彼がクロスに返球してきたら、僕はお気に入りのショットの1つであるランニング・フォアハンドを打つ。もし彼がダウン・ザ・ラインに打ってきたら、僕はオープンコートにバックのクロスを打つ事ができ、時には彼は追いつくのが困難になる。

短いボールを待ってバックのダウン・ザ・ラインを打とう。ベースライン付近にいたら、僕は強く打っていく。もし5〜6フィートも後ろにいたら、少々危険だ。

バックのダウン・ザ・ラインはクロスに打つより厳しいが、相手をセンターから遠ざける事ができるので、有効なプレーである。

いろいろ取り混ぜたい時には、スライスのバックをダウン・ザ・ラインに打つ事もできる(右の写真)。ネットに出たい時にも、スライスのダウン・ザ・ラインを打つ事ができる。

スライスを打つ時のカギは、しっかりとインパクトし、ボールが浮かないようにする事である。

相手に走りながらパスを打たせよう

サーブ&ボレーは、センターを支配する明確な手段である。型にはまったやり方は、たとえばサーブをワイドに打って(下左の写真)相手をセンターから遠ざけ、次にクロスのボレーを反対側のセンターから遠い所に打つ(下右の写真)。

僕はファーストサーブをセンターかワイドに打ち、エースかウィナーを狙う。しかし、もし相手がリターンを返してきても、通常はポイントを支配できる。ファーストボレーをコート中央から打つからだ。

ボレーで大切なのは、相手を走らせる事である。そのためには、クロスのボレーを打つ事。しかし時には、相手を惑わせために、あるいは、あまり方向転換が速くない相手の場合はそれを利用して、センターに戻ろうとする相手の背後にボレーする事も必要である。カギは相手を動かし続ける事、それが最もエラーを引き出しやすいからだ。

相手がパスを打つ時は、走りながら打たなければならない事になる。それで彼がウィナーを打ったら、できる事は何もない。ただ受け入れなければならない。しかしサーブ&ボレーを賢く使って、相手をセンターから遠ざけ続ければ、失うよりも獲得するポイントの方が多いだろう。


チェックリスト
コート中央を支配するためには:

1)相手のバックにインサイド・アウトのフォアを打つ。
2)ベースライン後方に釘づけにされた時は、深いクロスのバックを打つ。
3)短いボールが来たら、ダウン・ザ・ラインに打って相手を驚かせる。
4)ワイドにサーブを打って、ボレーの態勢に入る。
5)ワイドにボレーし、相手に走りながらパスを打たせる。


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