アメリカ版TENNIS
1996年7月号
オーバーヘッドを「スラムダンク」する方法
文:Pete Sampras、プレイング・エディター
  Alexander McNab
写真:Dom Furore


垂直跳びの高さを測った事はないが、バスケットボールのコートでは、6フィート1インチしかない僕は、バスケットボール以外なら、どんなボールでも「スラムダンク」できる。

ビッグサーブを打ち、リターンが浮いてくるのを見た時、あるいは相手が短いロブを上げた時、僕は「離陸」し、できるだけ高くジャンプする。そしてドカーン!

ジャンピング・オーバーヘッドは、僕の特徴的なショットだ。観客を楽しませるショット。ある意味、対戦相手へのメッセージでもある―――ここでちょっと「お尻を蹴っ飛ばすぞ」という感じかな。それで相手がビビるかどうかは分からないが、もし事がうまく運んでいたら、ちょっとした楽しみにやってみよう。

ジャンピング・オーバーヘッドは、僕にとっては即興的なショットだ。ただ言えるのは、僕はだいたい前に行こうとしているから、跳び上がる時、身体の重心は前にかかっている。それからスナップを利かせてラケットを振り下ろすのだ。

僕たちプロにとっては、たいていのオーバーヘッドは簡単なショットだ。スイングは短いし、走っている最中ではないし、いつラケットを振り下ろすかというタイミングの問題と、目と手のコーディネーションだけだ。プロにとってはとても簡単なショットなので、ミスすると恥ずかしいくらいだ。

もちろん時にミスは起こるが、それはプロゴルファーが2フィートのパットをミスするようなもので、めったに見られるものではない。しかしクラブプレーヤーは、しょっちゅうオーバーヘッドをミスする。いい位置につけていないし、ボールを低く落としすぎてしまうのだ。

どんなレベルのプレーヤーにとっても、オーバーヘッドは緊張するショットになり得る。もし1回ミスすると、次にロブが上がった時「うわわ、1回ミスしちゃったし、これも緊張しそう〜」と考えてしまう。誰でも少なくとも1回は、そうなった事があるものだ。

僕がオーバーヘッドをミスするのは、相手を見てどちらに動くか知ろうとする時だ。もし彼がちょっと動いたりすると、僕の目はボールから逸れ、ショットをネットにかけたり、ワイドに外したりしてしまう。もしくはラケットヘッドを速く振り下ろしすぎたり、強く打ちすぎたりする時だ。

各人の技術レベルに関わらず、オーバーヘッドを打つのに必要な基本的事項がある。僕が実演してみよう。

強く足を押しやろう

良いフットワークでボールの下に入れば、たいていの場合、オーバーヘッドはとても簡単なショットだ。不器用な足取りで、ただボールを待っているのではダメだ。いい位置につけ、バランスを保っている必要がある。

ロブが上がるのを見たら、左足(右利きの場合)を強く押しやろう(左の写真)。

このプッシュ・オフがカギだ―――最初のステップがうまく行けば、充分ゆとりを持ってボールの下に入れる。そして次のステップで足を交差させる(右の写真)。

小刻みなステップをしてしまうと、下半身を正しく横向きにターンできず、バランスを失って、素速くコートをカバーできなくなるだろう。もし深いロブなら、追い続けなければならず、そのためのベストの方法は、クロスステップを用いるやり方だ。

シンプルな準備をしよう

スマッシュするためのラケットの準備は、ごくわずかな動きだ。ボールを追い始めたら上半身を横向きにターンし(右の写真)、ラケットを頭の後ろに持ち上げる(下の写真)だけ。非常に素速い動作だ。

クラブプレーヤーはオーバーヘッドを「サーブ」しようとして、タイミングを台無しにしてしまう。

僕は後ろに下がり始める時、リズムを取るためにラケットヘッドを少し下げるかもしれないが、サーブを打つ時のようなフルスイングはしない。

ロブを見たら、ただ上体をひねり、ラケットを持ち上げて、打つポジションにつく事に集中しよう。





スナップを利かせ、攻撃的にバシッと打とう

インパクトの時には、ボールから目を放してはならない。僕たちプロは、それをごく当たり前にやっている。どのショットに対しても、長い間そうやって繰り返してきたから、身にしみ込んでいるのだ。

打つ時にはボールに向かって伸び上がる(左の写真)。ボールを落としすぎてはいけない。できるだけ高いポイントでボールを捉えれば、最適な角度でコートに打ち込めるのだ。

(この写真では、僕がボールを見ているかどうか分かりにくいが、実際はインパクトの間じゅう見ている)

オーバーヘッドの時の手首の返しは、サーブの時よりさらにラケットを下に振り下ろす事以外は、同様である(下の写真)。

もしネットに充分近かったら、「スラムダンク」をやってみよう。そうすればボールはフェンスを越え、相手は絶対に取れない。

もしロブがとても高かったり、風が強かったり、あるいは太陽が目に入るような場合は、ボールをバウンドさせ、グラウンドスマッシュにしよう(しかしイレギュラーバウンドしやすい芝のコートでは、僕は絶対にボールをバウンドさせない)。それは瞬間的な判断だ。バウンドさせると、相手がコートに戻る時間を与える事になる。どうすべきか、ベストの感覚を身につけよう。

オーバーヘッドは楽しいショットだ。本当に。ボールをコートに叩きつける時………このショットを身につけたいと思うだろう。


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