アメリカ版TENNIS
1995年9月号
サンプラスの破壊的なオーバーヘッド
文:ティム・ガリクソン、指導記者&アレクサンダー・マクナブ
写真:ステファン Szurlej / TENNIS


ピート・サンプラスと一緒に3年以上やってきたが、彼がオーバーヘッドをミスするのはほとんど見た事がない。それは非常にしたたかなショットである。彼は日常的にするだけではなく、通常それを決めてしまう。相手選手がコートのどこにいるかよく知覚していて、打ちすぎるという事がない。めったにマッハ1のパワーで狙ったりしない。その代わりに、彼はただボールをコーナーにプレースメントするだろう。

同じく、ロブがサンプラスの頭上を抜くのも、あまり見た事がない。彼はオーバーヘッドへの下がり方が本当にうまい。腕が長いし、優秀なジャンパーでもある。おそらく読者は、必要に迫られた時だけジャンプすべきだろう。さもなければ、むしろそのショットを少しばかり面倒なものにしてしまう。我々みんながピート・サンプラスではないのだ。

これらの写真はウォームアップの間に撮られたものだが、とても参考になる。







最初の2つの写真で、サンプラスのラケット準備とボールへの集中を見てみよう。

ラケットは早い段階で上げられている。彼の前
肩も上がっている。身体を横向きにしている。

そして下がりつつ、両足の幅は適当な広さを保っている。





同じく、打ち終わるまでずっと、サンプラスが頭を上げている事に注目しよう。

クラブプレーヤーはしばしば頭を下げてしまい、その結果ボールを見失って、エラーをする。

サンプラスは余裕をもって準備するので、慌ててスイングしたりしない。ラケットが背中の陰に隠れている時、彼は打つタイミングを計っているのだ。

ボールに向かってスイングを始める時に、ラケットが下まで落ち、手首を充分に後ろへ引いている事に注目しよう:ラケット・ヘッドの加速を生み出す、大きな源である。



彼の頭はインパクトの間じゅう上を向いている。ボールがストリングスから離れる時、ラケット・ヘッドは加速している。そしてボールになお直角をなしている。彼はオーバーヘッドをかなりフラットに打つが、良い事である。スピンをかけて打つよりもフラットに打った方が、オーバーヘッドをコントロールするのは易しいのだ。

サンプラスはインパクト時に身体がよく伸びている。ここでのキーポイントは、ラケット・ヘッドがほんの少し手首より前にある事だ。

サーブの時のように、前方でボールを捕らえたい。ラケット・ヘッドが手首の前に出ていないと、多くの場合ボールは長く飛んでしまう。

サンプラスは肘と前腕で途方もないスナップを利かせ、オーバーヘッドとサーブに爆発力を加える。彼が肘を上げてスイングを止めるやり方は、おそらく教えられるものではなく、自然な彼特有のものである。

着地する時、彼は重心を前方へ移している。読者はオーバーヘッドを打ったら、バランスをとり、それから再びネットへと前進して、良いボレー・ポジションにつこう。もしこれが試合の状況だったら、サンプラスはもう少し速く移動しているかも知れない。しかし彼はそうする必要のない場合が多い。通常はオーバーヘッドで決めてしまうからだ。


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