アメリカ版TENNIS 
1995年7月号
チップリターンを打つ方法
文:Pete Sampras、プレイング・エディター
  Alexander McNab


シンプルにやる事が、堅実さのカギである


1994年ウィンブルドン決勝における僕とゴラン・イワニセビッチの相違は、サーブのリターンであった。僕が勝つには、彼のすさまじいサーブを返さなければならなかった。

チップリターンを、特にバックハンド側で使う事によって、僕はボールをイン・プレーにし、しばしば低いポジションで彼にボレーをさせた。累積的な効果があった。彼はサービスをキープしていたが、僕は彼を働かせていると知っていたのだ。

僕は自分の試合のスタッツを調べないが、「TENNIS」誌が CompuTennis から知ったところによると、イワニセビッチがエースあるいはサービス・ウィナーを打たなかった時、僕はリターンの74パーセントをイン・プレーにした。一方、彼の方は53パーセントだった。

僕がそれらのリターンを返したために、彼はビッグサーブを狙いすぎるようになり、強く打ちすぎて、ミスするようになっていった。すでに充分ミスをしていて、第3セットでは、彼は有り金を全部すってしまったのだ。

上手く作用している時には、チップリターンはあらゆるレベルのプレーヤーにとって、素晴らしいショットである。上手く打っていれば、堅実にやるのは容易だ。余分な準備の少ない、とてもシンプルなストロークだからだ。

チップリターンは、サーブ&ボレーヤーだけでなく、ベースライン・プレーヤーに対しても同じように効果的である。ジム・クーリエのように、かなり強力なファーストサーブを持つ者と対戦する時、すべてのリターンを強打するのは意味がない。そこから何の利点も得られないからだ。

チップリターンはより安全なショットだ。それほど攻撃的ではないが、たいていの場合は返せると感じる。ステイバックする者と対戦する時に大切なのは、ボールを低く保つ事である。ひとたびボールが浮き始めると、彼らは最初にビッグ・フォアハンドを打ち、こちらはトラブルに陥る。

ティム・ガリクソンと僕は、大いにチップリターンに取り組んできた。これは試合をしている時、僕が念頭においているストロークだ。カギとなる要素を挙げてみよう。


1. 屈む

より低い姿勢で始める
イワニセビッチのようなビッグサーバーと対戦する時、僕はできる限り速くボールに反応しなければならない。それができる唯一の方法は、いつもより低い姿勢で始める事である。平均的なサーバーが相手なら、不用意な―――つまりまっすぐ立ったままのレディ・ポジションで始める事もできるが。

ウエストの位置でこころもち身を屈め、膝をよく曲げると、重心は前にかかる。僕が上手くリターンしていない時、リターンを浮かせている時は、初めからまっすぐ立ちすぎているのだ。

2. 跳ねる

3. 身体をひねる

短い動作にする
チップリターンは、基本的に反応のショットである。少なくとも僕のレベルで、イワニセビッチのような者と対戦する時には。僕の最初の動きは、相手がボールをインパクトする時に前方へ跳ねる事である。スイングに関しては、短いほど良い。ストロークの長さは、およそ2フィートだけである。ほとんどボレーに近い。ラケットをテイクバックする暇はあまりない。

僕はバックスイングを短くする意識的な努力をしてきた。腕を前方に突き出したまま、上半身をひねろう。ビッグサーバーに対しては、クロスステップを踏み出す時間がないかも知れない。だから、体幹と肩をひねれば、ここで僕がやっているようにオープンスタンスのままでも、理想的ではないが問題はない。


4. 握り締める

5. ブロックする

安定を保つ
ボールを捕らえる時には、僕はかなり強くラケット・ハンドルを握り締め、ボールにパンチを加えようと考えている。ショットには、ほんの少しアンダースピンがかかる。ヘビーなスライスではなく、ブロックである。できるだけサーバーのペースを利用しよう。

僕が失敗する時は、コンタクトが後ろすぎて、ボールに下らない事が起こりすぎたからだ。それはクラブプレーヤーに多く見られる―――変な事やスライスをかけすぎてしまう。手の動きが多すぎて、安定性が足りないのだ。もしケン・ローズウォールのスライス・バックハンドを見た事があるなら、史上最高のバックハンド・スライスを見たわけだが、それはしっかりしたショットである。

サーブ&ボレーヤーに対する狙い所についてだが、僕はイワニセビッチと対戦する時には、ただボールを返そうとしている。もしステファン・エドバーグが相手で、もう少し時間があれば、彼がより苦手とするフォアハンド・ボレーの側に返そうとする。チップリターンは、フォアハンドでも、低く保てるなら問題はない。


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