アメリカ版テニス
1995年7月号
自分の武器を生かす方法
文:ティム・ガリクソン/指導記者、アレクサンダー・マクナブ


強力なショットであれ足の速さであれ、対戦相手を威嚇し
圧倒するためには、自分の強みを利用すべきである


現代のテニスでは、先制攻撃できるビッグショットは不可欠と言える。次にベストなのは、とても速い足を持っており、それを攻撃的に使う事である。自分の武器を持つ事は、勝利するために有効である。

武器が作動していれば、あなたはプレーの主導権を握り、対戦相手にできる事はあまりない。彼あるいは彼女を守備的な思考様式へと追いやる。相手はあなたの得意なところに打たないよう、いつも必死にならざるを得ない。もし相手がそこに打ってきたら、すべき事はビッグショットでそのポイントの主導権を握るという事である。相手にとって最悪のシナリオは、あなたがウィナーを放つ事なのだ。

自分のビッグショットをどのように見極めるか? それはこうである:
* 相手にダメージを与えられるショット。

*ハードヒッターの場合は、コンスタントに打てるショット。荒々しいパワーだけでは充分でない。しかしながら、あなたのショットが必要なスピードはあっても安定性に欠けているなら、それを武器に変えられる可能性がある。地元プロの下でレッスンを受け、強烈だが安定しないストロークを信頼性の高い武器にしよう。

*プレッシャーの下でも自信を持って快適に打てるショット。

*能力と自信によって本能的に打てるショット。自分のしている事について考えなければならない場合、そのショットは正真正銘の武器とは言えない。

*楽しく感じるショット。要するに、打つ時にリラックスしているショット。

以下に、この5タイプの武器を用いる事への戦略上・心理上アプローチ、各々のストロークの鍵を概説する。

リターンで脅威を与えよう
リターンをアンドレ・アガシが打つようなビッグショットにするためには、精神的に注意怠りなくあらねばならない。サーバーのトスが手を離れた瞬間からボールを注視する事で、早いタイミングでボールを拾い上げよう。そして相手がボールを打つ直前に小さく跳んで爪先に重心をかけ、どちらの方向へも動ける準備を整えよう。

良いリターンとは、サーブ&ボレーヤーに対しては低く、そしてベースライン・プレーヤーに対してはコーナーに深く、である。どちらの場合も、あなたのリターンはサーバーに守備的な次のショットを打たせる事になり、あなたはそのポイントの主導権を握る事ができる。ボレーヤーに対してはパッシングショットで、ベースライン・プレーヤーに対しては厳しいグラウンドストロークで。

良いリターンを打つ事で、対戦相手にファーストサーブで無理を強いる事ができる。彼はハードに打ちすぎたり、ラインを狙いすぎたりして、ミスに繋がるのだ。今度はセカンドサーブに対してである。ベースラインの前方へ動き、フォアハンドを打てるポジションをとろう。サーバーには大いなる脅威となる。彼はダブルフォールトを犯すかも知れない。最悪の場合でも、あなたはボールを強打する態勢にある。

ボールが着地するまでに、ラケットをボールの後ろにセットしよう。テイクバックは小さく。ラケットを身体の後ろまで引いてはならない。

サーブで圧倒しよう
昨年のウィンブルドンで、ピート・サンプラスはあるゲームで対戦相手のリッチー・レネバーグに一度もボールを触らせなかった。エース、エース、エース、エース。ビッグサーバーなら、あなたは超攻撃的な態度でベースラインに立つべきである。エース、あるいは返球不能のサーブを打つのだと信じ、試みるべきである。それはサンプラスがしている事である。

対戦相手がいかに絶望的に感じか想像しよう:「たとえ私がボールを返すとしても、リターンは弱くなる、そして彼は次のショットで決めようとしている」決定的なファーストサーブを50パーセント以上の確率で打てれば、1ゲームで少なくとも2本のイージーポイントとなり、最高のリターナー以外に対しては大いなる効果があるのだ。

もちろん、事はそれほど単純ではない。多様性が必要である。大砲と同様にワイドへのスライスサーブに取り組もう。ペースの変化だけでなく方向にも変化をつけよう。それによってオープンコートを生み出す事ができる。コーナーへの時速95マイルのサーブは、センターへの時速115マイルのボールよりもダメージを与えられるのだ。同じく、スピンの利いた確実なセカンドサーブに取り組もう。クラブプレーヤーには、ファーストサーブは叩き込んでもセカンドサーブでは弱々しいボールしか打てない者が多すぎる。

サーブをより強烈にするためには、前方へトスを上げよう。自分の体重をショットに乗せるようにしよう。サーブ&ボレーをする場合には、前方へのより良い始動ともなる。

ボレーでプレッシャーをかけよう
常にネットへと詰めて切迫感を与える真に優れたボレーヤーは、対戦相手に息をつかせない事が可能である。ステファン・エドバーグの容赦ない攻撃性は、彼のボレー技能と同じくらい重要な武器の構成要素である。

容赦なくネットへと攻撃する事は、クラブプレーヤーにとっては無理な注文に思えるかも知れない。しかし私は、それも実行可能な選択肢であると考えている。力強い安定したボレーと堅実なオーバーヘッドでポイントを終えられる事は必要である。常にネットへと詰めていれば、試行錯誤を通じてコーナーをカバーする術を学ぶ。あなたが技術的・戦術的な側面を強化するにつれて、ネットへの攻撃を続けるだけで多くのポイントを勝ち取っていくのだ。

あなたがサーブの後にいつも前へ詰めてくる、どんなセカンドサーブでも、どんな短いグラウンドストロークでも攻撃してくるかも知れないと対戦相手が承知している場合、彼はパッシングショットのウィナーを打たなければならないというプレッシャーを感じるようになる。そのプレッシャーには累積的な効果がある。1-1、40-0の場面では、彼は簡単にあなたをパスで抜くかも知れない。しかし5-5、デュースの場面では、もっと難しくなる。精神面の闘いでは、あなたは優位に立っている;あなたが攻撃側で、彼は守備側なのだ。

しっかりしたボレーを打つには、ラケットを手首より上の位置に保ち、ボールにコンタクトする際にはハンドルをしっかりと握り締めよう。ボレーに最大の勢いをつけるためには、ラケットフェースをわずかに開いてボールをまっすぐに振り抜こう。

素速い脚力で攻撃しよう
この2年間、マイケル・チャンはさらに攻撃的なプレーヤーとなるために敏捷性を利用してきた。彼はミッドコートのボールに攻撃を仕掛け、前進してネットでポイントを決めている。

あなたのスピードを利用して、様々なやり方でそれを武器にしよう。第1に、あらゆるボールを追いかけて捕らえるのだと決意しよう。チャンがショットに追いつくのは、彼が素速いからだけでなく、すべてを捕らえようとしているからである。第2に、あらゆるストロークに対して完璧なポジションをとるために、自分の敏捷性を生かそう。素速いプレーヤーの中にはいい加減なフットワークの持ち主もいる。彼らは安定性を欠く傾向がある。それは彼らがラリーで劣勢に立ちうる事を意味しているのだ。第3に、オールコートプレーヤーになろう。

攻撃のできる素速くて堅実なプレーヤーは、素速くて堅実なだけの繋ぎ屋よりも厳しい相手なのである。あなたは対戦相手がただ返球するだけでなく、ショットに無理を強いる事になるのだ。もし彼が深いショットを打たなければ、あるいはパッシングショットを決められなければ、あなたは彼にその代償を支払わせる。素速くて堅実なベースライン・プレーヤーは、しばしば対戦相手に力んだショットを打たせる。堅実なベースライン・プレーヤーに自分を痛めつける事はできないと彼らが気づくまでは。スピードを利用して攻撃する事によって、あなたは彼らが調整するチャンスを奪い去るのだ。

あなたのスピードを利用してコートの中に踏み出し、短いテイクバックで素早くボールを捕らえよう。それから、ミッドコートのショットを攻撃してネットへと詰めよう。


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